モノを大切にする気持ちについて考える絵本

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題:『ルリユールおじさん』

作・絵:いせひでこ

出版社:講談社

 

あなたは生まれて初めて自分の意志で買った(買ってもらった)ものを覚えていますか?

わたしの場合は小学生になってすぐ買ってもらった自転車でした。緑色や黄緑色のポップなカラーの自転車。まわりの友達は決まってマウンテンバイクを乗っていたのに、なぜか明るい色の自転車を選んだのでした。友達の家、近所の公園、お小遣いを握りしめて向かった駄菓子屋さん。どこへ行くのも一緒でした。

 

 

ある日、落ちていたガビョウを踏んでパンクしたため、自転車屋さんへ行きました。自転車屋のおじちゃんは「どうしたんやー?パンクか。大丈夫、すぐ直るで」と優しく出迎えてくれたのです。パンクを直すだけでなく、タイヤやブレーキ、サドルの手入れをしてくれたおかげで、だんぜん乗りやすくなった自転車。「自転車屋のおじちゃんは魔法の手を持っているんや!」とわかった瞬間でした。

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今回紹介する「ルリユールおじさん」の主人公は、小さな女の子ソフィー。彼女の宝物は大好きな植物がたくさん載っている図鑑。この図鑑が壊れてしまうところから物語はスタートします。宝物をなんとか元に戻したいソフィーは、ルリユールの工房へたどり着き、もう一人の主人公であるルリユールおじさんと出会います。

 

ルリユールとは、本の製本・装幀をする手仕事を意味するフランス語です。ルリユールの歴史は古く、16世紀末ごろから誕生したとされています。長い期間フランスでは、出版業と製本業の兼業が法的に禁止されていたこともあり発展したルリユールでしたが、IT化・機会化が一般的になった現代では、パリでも製本のすべての工程を手仕事でできる職人はとても少なくなっているそうです。

 

 

ソフィーの壊れてしまった植物図鑑を受け取ったルリユールおじさんは、一つひとつの工程をソフィーに説明しながら手際よく本を直していきます。工房の中にある色とりどりの材料やゴツゴツした機械、雑多に積まれた道具を目にしたソフィーは、いてもたってもいられない状態に。そんなソフィーを優しくたしなめながら、さまざまな話をしてくれるルリユールおじさんはとても魅力的に映る反面、彼は自身への悩みも抱えているのです。

一晩明けて完成した宝物の図鑑を手にしたソフィーの様子と将来の姿はぜひ絵本を手にとって確かめてみてください。

 

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自転車や本、または服など、一昔前と比べると壊れても直しながら使うことは減ってきているのではないでしょうか? これは、物質的に豊かになった世の中からの恩恵であり、もちろん新しいものをどんどん買うことが悪いわけではありません。しかし、子供の頃に自分が思い入れを持てるモノを長く使いながら、壊れたときには魔法のように直してくれる大人との出会いは、なにか子供にいい影響を与えるでしょう。「うちの息子・娘の記憶に残るモノはどれなのか?」と「ルリユールおじさん」を読みながら考えてみるとおもしろいかもしれません。

 

 

わたしはいまでも毎日、自転車に乗っています。その自転車は高校入学のときに買ってもらったもので、かなり傷んできましたが愛着があるし、まだまだ乗り続けるつもりです。だから、いまでもどこかが故障すると、あのおじちゃんがいる自転車屋へ行きます。

先日久しぶりに行ってみると、「おぉ、どうした?故障か?」「お兄ちゃんもう学生じゃないんやな〜?時間が流れるのは早いなー。」と言って笑っていました。わたしと同じだけの時間を生きた自転車屋のおじちゃんは、昔よりも動きが少ししんどそうに見えましたが、いつでも油まみれの大きな魔法の手と優しい笑顔で出迎えてくれるのでした。今日も自転車屋のおじちゃんの自転車でいってきます。

 

(個別指導塾Study Room副教室長 東海林 大樹)

 

 

個別指導塾Study Room

京都市左京区に位置する、中高生向けの1対1の個別指導塾Study Room。カフェのような木質化した内装には、リラックス効果があり生徒の集中を助けます。一般的な塾では紙で行っている業務報告などを、IT化することによって生まれた時間で生徒と対話することが特徴です。また、教室にはまちライブラリーと呼ばれる私設図書館があり、生徒の読書習慣のサポートも行えます。

住所:京都府京都市左京区石原町280-2 グランタック東山二条202

HP:http://studyroom.asia/

 

2017.5/24 更新