知っておいて。誰かをサポートするとき、自分だけで解決しなくていい

誰かに助けを求められたら、

その人が大切であればあるほど「私が」助けてあげたくなる。

 

でも、時には自分に向けられたSOSの手を、他の人に譲り渡した方が良い場合もある。

 

 

私を頼ってくれたんだから!という責任感を持つことは尊い。本当は秘めておきたかったかもしれない苦しみや悩みを打ち明けてくれた信頼はしっかりと受け止めつつ、だからこそその人の未来にとって今なにが必要かを冷静に考える視座が大切なんだろう。

 

 

そんな、繋ぐ、という支援のあり方もあるのだと教えてくれたのは、京都で就労移行支援の仕事をしている田中さん。

 

 

第2回目の今回は、働くことに障害を持つ人を支援するLITALICOワークスでの経験を通して感じた、支援する立場になったときに考えておくべきことをお聞きしてきました。

 

 


 

 第1回 

 もし明日、自分や、自分の大切な人が働けなくなったら?どうする?

 

 第3回

 他者との関わり方がわからない。それでも人間は関係性に生きている

 


 

 

 

ーーお話を伺っていると、いろんな機関とのチームプレーが支援の要な気がしてきました。

 

 

田中:そういう関係を作っていきたいと思っています。ひとつの機関が全てをカバーできるわけではないので、それぞれの強みを活かせるようなチームが機能すれば良いですよね。

 

 

 

ーーそれはお寺にも必要なことかもしれません。問題を抱えている人に助けを求められた場合、僕らが全てを解決してあげることはできない。それぞれの専門分野を正しく把握して、適切に繋いでいくことは必要ですよね。まずは知っておくこと。

 

 

田中:本当にそうですね。今回LITALICOワークスという社会資源があることを知ってもらえたことも、大切な一歩かなと思います。

 

 

このような福祉機関は、役割の違いはあれど全国に展開しているので、最寄りの施設を知っているだけでも何かあったときにスムーズに適切な支援が受けられますよね。

 

 

 

ーー話を戻しますが、LITALICOワークスさんを利用する方が辿ってくるルートは主に4つあると。その内容をお聞きしてきました。LITALICOワークスさんを知った方は最初はお電話でコンタクトを取られる方が多いんですか?

 

 

田中:そうですね。お電話いただいて、見学もしていただいて、LITALICOワークスはこんなところだよというのを知っていただき、実際に体験をしてみていただいてから利用するかどうかを決めるという感じです。

 

 

あとはご本人が感じている困り感や不安感、お仕事の希望なんかをヒアリングします。

 

 

 

ーー具体的にはどんな?

 

 

田中:たとえば発達障害、ADHD(注意欠陥・多動性障害)って言われる方の場合、アルバイト経験はあるんだけれども、どうしても何か忘れてしまうであったりとか、どんなに気をつけていても毎回同じところで失敗してしまうってこととか。

 

 

精神障害の方で、過去にすごく上司にきつくあたられてしまって、それから自分の意見を話すことにとても抵抗感を持ってしまうようになったというご相談もあります。

 

 

その人その人によって違う、これまでの経験から感じている困り感をお聞きして、LITALICOワークスでそれが本当に良くなっていくのか、どうサポートすることができるのか、いろんなお話をしながら…っていうのがサポートの最初の接点になります。

 

 

 

ーーあの…細かいことなんですが、「困り感」なんですね。「困りごと」ではなく。

 

 

田中:どうなんでしょう…LITALICOの中ですごく浸透した言い方だったのであんまり意識していなかったんですが…

 

 

たぶん本人がわかっていない、言語化できていない感覚のことを指しているから「困りごと」ではなく「困り感」なのかもしれません。ご本人さんは「なんか不安だ、なんか働く自信がない…」という認識で相談に来られることが多くて、明確に自分が何に困っているかを言える方って少ないんです。

 

 

 

ーーなるほど。それで「困り感」なんですね。感覚的なことを言語化するのは時間がかかるけど大切なことですよね…言葉にできない感覚のこともきちんと向き合ってくださるのは心強いです。

 

ヒアリングでは金銭的なことも聞かれるんですか?

 

 

田中:そうなんです。僕らの事業は障害者総合支援法という福祉の法律に基づいて運営されています。だいたいの場合、利用負担額0円になるんですが、1割くらいの方には負担額が発生してしまうこともあります。

 

 

ご本人場合によっては、前年度の配偶者、保護者の年収に応じて、一定額を超えると負担額が発生します。これは行政の審査が入るので、僕らのほうで判断できることではないんですが、大切なことなのでご案内はします。

 

 

 

ーー他にヒアリングの段階で確認なさることはあるんですか?

 

 

田中:やはり相談者ご本人にとって、LITALICOワークスのサポートが必要なのは今の段階なのかどうかということは慎重に確認します。

 

 

 

ーーここまでのお話のなかでも、支援のタイミングについて非常に慎重に検討されている印象を受けています。

 

 

田中:というのも、就労移行支援の利用期間って最大2年間に限られているんです。利用開始してしまってからやっぱり違ったってなると、本人にとっても良くないですし、ヒアリングだけでなく体験にも必ず来ていただくようにしています。

 

 

 

ただ、来てみないとわからないケースもあるので、まずは来ていただければ、いつでも相談を受け付けさせていただいています。

 

 

ーーそうなんですね。それはご本人のためを思えば慎重にならざるをえませんね…。

 

 

では、ヒアリングや話し合いを経て、いざLITALICOワークスさんを利用することが決まったら座学や訓練を受けるということですね。それは毎日ですか?

 

 

田中:その方によって違います。

 

 

精神障害のある方にとって新しい環境というのは、抵抗感や不安感がものすごく強いと思います。LITALICOワークスは月曜から土曜まで開いてはいるんですけど、たとえば毎日はしんどいから週3日、午後だけ来るということからスタートして新しい環境に慣れていくという段階を踏んだりします。

 

 

「決めた日数をきちんと来られたんだ」という自分を承認できる機会をできるだけたくさん持ってほしいので、スローペースから始めることが多いです。

自己肯定感を高めるということ、自分自身の障害の棚卸し、自己分析を深めていくということを意識して、その方に合ったペースや内容の訓練・プログラムを組んでいきます。

 

 

 

ーーLITALICOワークスさんの提供するプログラムの内容を具体的に教えていただけますか?

 

 

田中:まずは本当に生活リズムを整えていくとか、シフトを自分で決めて組み立てることができるようにとかしながら、自己分析もしていきます。

 

 

ある程度、通うことに慣れてきたら、さらに実務的な段階に入ります。履歴書の作成などですね。あと、自分の障害ともう一度向き合って、何が得意で何が苦手なのかを見直したりもします。

 

 

また、最初にお話したように施設の外での実習にも入っていきます。企業様でのインターンをすることで実際の職場で自分の強みや弱みの発見をしていただいて、自分の就職活動の方向性を徐々に心に定めていく期間です。

 

 

 

ーーそれらの段階を経て実際の就職活動に入っていくんですね。就職活動はどのようにして進めていくんでしょうか?

 

 

田中:例えば、就職活動はご本人にハローワークとか求人サイトに登録していただいて、自分で求人を見つけて応募してっていうフローでされる方もいらっしゃいます。

 

 

ご本人が見つけてきた求人に対して、僕らが直接企業様にお電話をして、「こういう方がいらっしゃって、こういう背景をお持ちなのですが、事前にお話だけでもお伺いすることはできませんか?」というかたちで推薦させていただくこともあります。

 

 

 

ーー採用までのサポートはしっかりしていくということですね。

 

 

田中:はい。

LITALICOワークスを経て就職に至った方がいる企業様から「LITALICOワークスさんの方からまた何人か雇用に繋げたいんだけど」ってご相談をいただくこともあるんですけど、そういう場合でも京都では一度ハローワークに求人を出してもらってそこから応募して面接へという手順を踏みます。

 

 

 

ーー面接へは同行されたりするんですか?

 

 

田中:ご本人と企業様がオッケーしてくださったら一緒に行きます。

 

 

基本的にはご本人がお話するんですが、場合によっては僕たちが主導になることもあります。それはお相手の方の様子をみながら臨機応変に対応しているところです。

 

 

 

ーー就職先の業界や職種はどういったものが多いんですか?

 

 

田中:あまり特定の業界はないんです。ただ、職種は事務職が半数近くになりますね。

 

 

どの企業様も一般事務の業務を切り出してそこを割り当てるかたちで求人を出される所が多いので、業界は違えど実際の作業は似てきます。データ入力とか、封入作業とか。

 

でも、その他にもその会社ならではの業務や、システム関係の専門職やサービス業などへの就職もあります。

 

 

りたりこ2-1

 

りたりこ2-2

LITALICOワークスHPより引用

 

 

 

 

ーー就職が決まってからも、ご本人の体調や様子の変化を定期的に確認するなどのサポートが続いていくというお話はさきほども伺いましたが、他にはどういった支援が就職にあたって必要になってくるんですか?

 

 

田中:まず就職前には、ご本人のことについて企業様と話し合いの場を持って、「この方は、こういうところが強みで、こんな場面ではしんどくなってしまう場合があるので、こういう配慮をお願いしたい」といったすり合わせを行います。

 

 

そして就職後も定期的に企業様へ訪問して、会社のなかでの様子やをヒアリングしたり、三者面談(ご本人、企業様、LITALICOワークス支援者)をしたりします。

 

 

 

ーー企業側からも相談があったりしますか?

 

 

 

田中:はい。たとえば、ご本人に対してどこまで言って良いのかわからないというご相談はありますね。この言葉を言ってしまったら明日から来られなくなってしまうのではないかと不安を感じてらっしゃるんです。

 

 

なので、この方の場合はこういう言葉がけだったらすんなり受け入れることができますよ、とか逆にこういう形になってしまうと敏感なので避けていただいた方が…とかお話します。

 

 

一方で、前向きなご相談なんかもいただくんですよ。

 

とても良く働いてくださるので、この方をキャリアアップさせたいんだけど…っていう相談や、今はパートで入ってもらってるけど正式に契約を結ぶのに電話対応も覚えてもらわなきゃいけないんですがどう指導すれば良いですか?とか。

 

 

 

ーーそうなんですね!企業側が障害者の方を雇用することで、ポジティブな意味での気づきって生まれたりするんですか?

 

 

田中:そうですね…社内の制度が整理されたっていう声を聞くことはあります。たとえば発達障害の方で、物事を複数指示されると混乱してしまうという方がいらっしゃったんです。

それで、この方が作業しやすいように可視化したマニュアルを社内で作ったら、それが中途採用や新入社員の教育にも応用できて、以前よりも効果的な教育システムが出来上がっていったんだそうです。

 

 

あとは、どうしても定期通院が必要な方を採用したことで、気軽にお休みがとれるようフレックスで働けるようにならないかと社内の制度から検討してくださる会社もありました。

 

 

 

ーー多様なものを受け入れるなかでノウハウもしっかり蓄積されていくのは良い循環ですよね。では、ネガティブな相談はあるんですか?

 

 

田中:あります、あります。

 

先ほど申し上げたどう関わって良いかわからないというのもひとつですが、他にも、ご本人が働き始めてから一生懸命やってしまってその反動でお休みしがちになってしまうことがあるんです。そうなると他の方へ業務のしわ寄せがくるので困っていますというご相談はいただきますね。

 

 

こういう場合に僕らが仲介に入る場合ももちろんあるんですが、最終的には直接言えるような関係性を築いていくことが大事なので、そういう体制づくりのサポートという意識でやっています。

 

 

うまく伝えられたり、関係性を築けたらそれは企業様にとっても成功体験になります。いずれはLITALICOワークスがいなくてもうちは大丈夫だから、と言ってもらえたら嬉しいですよね。

 

 

 

ーーLITALICOのビジョンは、障害は社会の側にあるんだからその社会を変えていかなければってところにありますもんね。

 

 

田中:誰かが働くうえで障害に感じることに向き合い、解決していこうとすることが、また他の境遇の誰かの働きやすさに繋がっていく。

 

 

こんな営みが当たり前にある社会が実現すれば良いですよね。

 

 

りたりこ2-3

 LITALICO のHPより引用

 

 

 

ーーLITALICOワークスさんの支援の姿勢からは、学ぶべきことがたくさんあるように思います。

 

 

それぞれの機関がそれぞれの役割を全うするだけでなく、繋がりあっていくことで、支援をされる側にも支援する側にもより良い環境が整っていく。それは支援の現場ばかりではなく、いろんな現場で実現されていくべきあり方なのかもしれないですね。

 

 

次回は、これからの「働く」について、田中さんと一緒に考えていきたいと思います。

 

 

 

 

第1回 

もし明日、自分や、自分の大切な人が働けなくなったら?どうする?

 

第3回

他者との関わり方がわからない。それでも人間は関係性に生きている

 

 

 

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りたりこ1-2

 

 

 

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