かわいそうな子、かわいそうじゃない子。あなたはどこに線を引く?

 

 

こんなことを言われたことがある。

 

「あなたよりかわいそうな子はたくさんいるのよ、あなたは恵まれてるんだからね」

 

 

恵まれているってどういうことだろう。

 

家族がいること……

愛されていること……

お金があること……

帰る家があること……

健康でいること……

 

知っている。自分がじゅうぶん与えられていることは。

けれど、どこかで満たされない。

 

 

じゃあ、かわいそうな子ってどんなだろう。

 

家族を失った子?

愛情を受けられない子?

貧しい生活をしている子?

病気を抱える子?

自分をかわいそうだと思っている子?

 

なんだかしっくりこない。

 

 

恵まれていることと、かわいそうであることの間にはなにがあるんだろうか。

このふたつの一体何が違うというのだろうか。

 

恵まれているはずの私たちが口にする「かわいそう」はどこか虚しい響きがつきまとう。

 

何もしてあげられなくて辛い…

私はまだマシだな…

かわってあげたい…

見ていられない…

 

 

そうなのだ。

いつだって、私たちは少し離れた岸に立って、対岸の火事を見るように誰かを「かわいそう」と言う。そんな自分のあり方に気づいている人は、少し小さな声で、「かわいそう…」とつぶやく。

 

 

私とは違うあの子。

私よりも恵まれていないあの子。

申し訳ない。

 

「…かわいそう」

 

 

でも、同じ岸に立とうとする人の言葉は違う。

彼らは「かわいそう」とは言わない。

 

彼らは、そこにもきちんとしあわせがあることを知っているから。

誇りあるいのちが日々を生きていることを知っているから。

「かわいそう」だと言われる彼らの笑顔を知っているから。

 

 

遠くの世界からは見えないささやかな、しかし確かに今ここにあるしあわせを守り育てようとする彼らの言葉を、聞こう。きっと、そこには私たちにもできることが、小さくてもできることが必ずあるのだ。

 

「恵まれている」私たちが作り出す、「かわいそう」の向こう側。

 

教えてくれるのは、「世界平和の実現=すべての生命が安心して生活できる社会の実現」を設立目的として各国で活動を続ける認定NPO法人テラ・ルネッサンスの栗田さん。全4回にわたってお話をお聞きします。

 

 

テラ・ルネッサンスが目指す社会とは

 

 

ーー安心して「生活できる」社会の実現、なんですね。

 

栗田:はい。

 

私たちが目指すものは、支援する人々がただ生きている、という状態ではありません。安心して生活できるというということが私たちのゴールです。

 

 

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 テラ・ルネッサンス アウェアネスレイジングチームマネージャー 栗田佳典さん

 

 

ーーそして、そのためのミッションとして掲げているのがこちら。

 

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 テラ・ルネッサンスWebサイト「テラ・ルネッサンスとは」

 

 

栗田:そうですね。

国際協力や世界平和を標榜した団体は数多くありますが、そのなかでテラ・ルネッサンスはどんな役割を果たしていくのかというときに「啓発」がキーワードになると思っているんです。

 

支援の対象者だけに向けて何かをするのではなくて、そういった課題をみんなで解決していこうよという風に、輪を広げていくこと。あなたひとりの、小さな変化が、やがて社会を変えていくのだということを啓発していく。現場での国際協力だけでなく、それも私たちの使命です。

 

 

ーー目の前の問題を解決することも、もちろん大切ですが、もっと長期的な視点で課題に向き合っていかなければ根本的な解決にはなりませんもんね。

 

 

栗田:私たちの信念の部分になるのかな、どんな人にだって未来を作っていく力があるんだって思っているんです。

 

なので、私たちの役目は、人々を変えることではなく、その人たち自身が変わっていくための環境やきっかけを提供していくことなんだというスタンスはとても大事にしています。

 

 

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提供:認定NPO法人テラ・ルネッサンス

 

ーー私たち自身には人を変える力はない。その事実の上に立った大切なスタンスだと思います。

 

テラ・ルネッサンスさんの活動について、概要からまず伺っても良いですか?

 

 

 

栗田:はい。本部を京都に持つテラ・ルネッサンスは、現在アフリカとアジアの6カ国で活動をしています。その6カ国とは、

 

・ウガンダ

・コンゴ

・ブルンジ

・カンボジア

・ラオス

・日本

 

になります。

そして、これらの国に活動拠点を置いて、主に取り組んでいる課題は3つ。

 

・地雷の問題

・小型武器の問題

・子ども兵の問題

 

どの問題も密接に関係しあっているものです。現地でこれらの課題の解決を目指して活動している、いわゆる国際協力の活動だけでなく、多くの方に現状を知っていただくための啓発活動を日本国内では大きく展開しています。

 

また、社会の仕組みを変えていくために、政策提言も今後はさらに力を入れていけたらと考えています。

 

まとめると、「国際協力」「啓発活動」「政策提言」の3本柱で活動しているというのが私たちの団体の特徴ですね。現場での国際協力だけでは大きく現状を変えることは難しいし、啓発活動や政策提言だけしていても現場を知らなければ説得力がない。

 

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ーーそれぞれの柱が、互いを強化する存在なんですね。栗田さんは現在、啓発活動に関わっていらっしゃるんですよね?

 

地雷とか武器とか子ども兵とか、非常に深刻な問題なんだということは頭ではわかるんですが、実際の私たちの生活とはかなり距離があるように感じてしまって……。どういう風にお話をされるんですか?

 

 

 

栗田:そうなんですよね、本当に遠いんですよね。海外で起きてることってすごく遠い。それをいかに近くに感じてもらうかっていうのは常に考えていることです。

 

海外の誰かではなく、同じ地球に住む地球人としての意識を持ってもらう、地球市民教育も大事なのだと思います。

 

 

知的な消費とは?私の手の中のスマホと世界

 

 

ーー地球市民……かなり成熟した考え方ですよね。あまりに立派過ぎるというか。

 

 

 

栗田:そうですよね、本当に。

でも、問題が起きている地域と、自分の生活を切り離して考えるんじゃなくて、それらは地続きだってことを知るのがまずは大切かなと思います。

 

たとえば、私たちが関わっているコンゴでは、レアメタルという希少な金属がよく取れるんです。一部のコンゴの地域では、スマートフォンやパソコンには欠かせないこの金属を活動の資金源とする武装勢力が存在しています。そして、その武装勢力に子どもも含まれている可能性があります。

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Photo by Jordan McQueen on Unsplash

 

 

レアメタルの恩恵を受けながら私たちは生活しているけれど、その向こうには戦いに巻き込まれて被害を受ける子どもたちがいるかもしれないんです。

 

 

ーー自分の手のなかにあるスマートフォン。その向こう側を想像する機会はあまりないかもしれないです。

 

そういった自分の消費が、いかに誰かの人生とつながっているかを自覚的に物を買うことをエシカル消費って言ったりしますよね。少しは日本でも浸透してきている気もしますが、どうなんでしょう?

 

※エシカル消費とは

人と社会、地球環境のことを考慮して作られたモノを購入あるいは消費する

(一般社団法人エシカル協会Webサイト←リンク貼り付けより)

 

 

栗田:まだ欧米ほど浸透はしていないのが現状ですが、少しずつは、はい。

消費者が社会を変える、っていう動きは以前よりもよく目にするようになってきましたよね。

 

企業の方でも、自分たちの商品の原材料がどのような流れを辿っているかということに責任を持って取り組むケースが増えてきています。Webサイト上で、「この商品にはレアメタルが含まれていますが、武装勢力の資金源にはなっていません」といった表示をしておられるんです。かなり上流から関わろうとしている。

 

そういった企業の商品を率先して選ぶということも、私たちができることのひとつなんですよ。

〈 一般企業での記載例 〉

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Apple社Webサイト「サプライヤー責任」

 テラルネ1−7Apple社Webサイト「サプライヤー責任」

 

 

ーー消費のあり方が変われば、企業も変わり、やがて社会も変わっていく、という流れはとても健全ですよね。

 

ただ、現実問題として、目の前に値段は安いけどどんなルートを辿ったのか不明なサッカーボールと、強制労働や武装勢力との関わりがないことが確認されているけど値段の高いサッカーボールがあったとしたら、まだ多くの人は安いサッカーボールを買うんじゃないですか?

 

 

栗田:そうですね。どうしても私たちのなかで安いっていうのは重要になっちゃいますね。フェアトレードの商品は高かったりもしますし。

 

この問題を今すぐ全面解決っていうのはもちろん難しいけれども、未来の消費を変えていくための種まきはできるんじゃないかって思っています。それが、子どもたちへの教育です。倫理的な消費、エシカル消費についての授業を取り入れている学校は少しずつ増えてきてるんですよ。なので、安さだけではない基準、選択肢というのものあるんだよってことは伝えていけるんじゃないかなと思っています。

 

 

 

ーーそういった教育が盛んな地域ってあるんですか?

 

 

栗田:やはり海外は、宗教的な背景が影響しているのか、日本よりはかなり盛んだと思います。チャリティっていうのが小さい頃から身近ですし。

 

 

 

ーー海外の方は人

のためにってこともそうだけれども、宗教的な背景ということだったら功徳を積むため、天国に行くためっていう側面もあるかもしれませんね。

 

 

 

栗田:そうですね、自分のためにっていうのはあるかもしれません。

 

 

ーー自分のためにっていう動機で寄付やチャリティをしていくっていう土壌をつくるのはかなり精神的にハイレベルな気がします。浸透していくのはなかなか難しいですよね。

 

高い商品を買うとき、その価値に見合った効果を受け取れるかっていうのは大切だと思うんです。高いタオルを買ったら肌触りや吸水性がめちゃめちゃ良くなったとかね。でも、高いお金を出しても商品レベルは安価な商品とあまり変わらないぞ、ってなると…

 

 

栗田:難しいですよね。

 

 

ーーこういうエシカル消費のような価値観を持つっていうのは、成長というより成熟のイメージが強いです。成熟っていう方向性で教育をしていくことの難しさはありますよね。

 

平和への距離感と、お金の壁みたいなところは本当に難しい。戦争はいろんな意味で経済と関係していますよね。経済的なところをクリアしないといけない。

 

 

 

栗田:消費の問題も、単なる不買運動、つまり「この商品は背景に不当な経緯があるから買ってはいけない」という発信をするのではなく、この商品が買えるようになるにはどうしたら良いかを対話していくことが大切だと思っています。

 

 

 

ーー経済全体が健全な方向へ進んでいくための姿勢ですね。そういう事例ができていけば、もっと良いですよね。

 

 

 

栗田:インターネットで企業名と「紛争鉱物」っていう言葉でアンド検索してみると「責任ある調達」とかって書いてあるページがヒットすると思います。

 

自社の商品の原材料などの調達に際して責任を持って関わっていますよ、というページです。

 

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ーー先日、SDGsというものについて講演を聞きました。

 

 

 

栗田:まさにSDGsは今、企業さんのなかで認知度が非常に高いものですね。

 

SDGsの前にMDGsというものがありまして。これは途上国を対象とした目標なんです。貧困を何%削減するとか。でも、SDGsでは途上国だけではなくて、先進国も含めた世界みんなで達成する目標という風に位置付けられています。

 

企業さんもSDGsの達成に向けて様々に取り組んでおられます。

 

 

 

ーー日本では広がりにくいんですかね。経済的な価値観というのもまた国によって違っていそうです。

 

以前読んだ本のなかに、アフリカの文化では、お金っていうのはそれほど重要なものではなくて、そこ以外のところで本当に豊かに暮らしていくための伝統や仕組みがあるという話がありました。そういった、お金とは別の新しい判断基準が生まれたらいいな、と感じました。

 

 

 

栗田:そうですね。SDGsでも「一日1.25ドル以下の貧困※」っていう定義がありまして。でも、1.25ドル以下で一日生活している人が暗く苦しく生活しているかといったら、現地に行くと一概にそうは言えないんです。数字では見えないその人たちの生活があり、豊かさがある。

 

僕らは彼らに対して、かわいそうだから貧困から救ってやるとかそういう上から目線で関わるのではなく、現地の方たちの生活に寄り添ってより生活の質が向上するような支援をしたいと思っています。

 

アフリカの人たちは貧しくて衣服も食べ物もなくかわいそう……というイメージは一刻も早く取り除きたいです。紛争地域には確かに厳しい生活があるけれど、そこには家族の笑い声もあるし、子どもたちの遊ぶ姿もある。しあわせの価値観ていうのを、すごく考えさせられます。

 

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私たちの消費意識が、遠く離れた国の誰かのいのちや人生とつながっている。頭では理解できても、実感を持ちにくいその事実を、栗田さんに現地の情景を交えながらお話いただくと、知らないと思っていた世界が少し近くなったような気がします。

 

 

次回は、テラ・ルネッサンスが取り組む、子ども兵問題についてお話いただきます。

 

 

 

※SDGsが定められた時点では、貧困は1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されていましたが、世界銀行は世界の物価上昇を受け、2015年10月に貧困の定義を1日1.9ドル未満に変更しました。

 

 

 

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