私とあなたは違うってこと。それは喜びの種

 

前回は、テラ・ルネッサンスという組織の誕生について、また栗田さんご自身の活動の原動力についてお聞きしました。今回、最後の記事では、あなたと私、異なる生を生きる者同士がどうやってともに歩んでいくのか、話を深めます。

 

 

第1回 かわいそうな子、かわいそうじゃない子。あなたはどこに線を引く?

第2回 その子に必要だったのは「教わる」ことではなく「考える」ことだった

第3回 「なぜこの仕事を続けるのか?」

 

 

 

対話ってなんだ!? 日本人は対話下手?

 

 

 

——年間多くの講演をなさっているとのことですが、特に学校で日本の子どもたちと接してみて、感じることはありますか?

 

 

 

栗田:アフリカでも感じることですが、違いをいかに認め合うかということは、どこにいても大切だなと感じています。

 

日本の子どもたちってみんなと一緒じゃなきゃいけないみたいな風潮ありませんか?でも、本当は違いが大事なんですよね。あなたと私が違うっていうことは、争いの種ではなくて、喜びの種なんだよってことは講演でもよく話します。

 

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——それは大切なことですよね、子どもたちにとっても大人にとっても。でも、価値観が決定的に合わない人というのも、生きていれば出会ってしまいますよね。どちらかが悪いとかじゃなくて、お互い正しいけれどちょっと主義が違うというか。そういう人と関わらなければいけないときって、どうしたら良いんでしょう。

 

 

 

栗田:私の個人的な意見ですけど、平和で一番重要なのは対話だと思っています。

 

 

 

——対話ですか。日本人は対話が苦手な民族ですよね。

 

 

 

栗田:そうですね。得意とは言えないかもしれないです。

 

 

 

——日本って察する文化みたいなのがあって、できるだけ波風を立てないというか。それが悪く作用することももちろんあるんだけど、でも本音を言わないことの何が悪いのか?って聞かれたら…。別に何の軋轢もなければ、問題ないんじゃないかって気もします。

 

かと言って、普段から対話というか、自分の内面を言語化することを怠っていると、いざ問題が起きたときに「じゃあ今から対話しよう!」とか言われてもできないとは思いますし。

 

 

 

栗田:日本人がうまく対話をしようと思うと、場の設定とか、ファシリテーションを担う第三者とかが必要かもしれませんね。

 

場の話で言えばお寺の本堂というのも日本人が対話をしやすい場な気がします。靴をぬいであがるというのは、オンからオフへスイッチを切り替える動作ですし、本堂の中というのも日常とは違う空間で、本音が出やすいんではないでしょうか。

 

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——日本ってよくイエスとノーだけではない中空構造があるって思うんですけど、グレーな部分を許容する文化というか。お寺っていうのはそういう立ち位置ですよね。何者をも受け入れる。

 

対話といっても、日本人みんな欧米化しろ!主張しろ!ってことじゃなくて、日本人には日本人なりの対話の方法があるのかもしれないですね。

 

それこそご紹介いただいた、アフリカの民族の伝統的な問題解決の儀式のように、必ずしもそれが直接的な言葉である必要はないかもしれないし。絵文字文化とかスタンプ文化とか日本人好きですしね。

 

栗田さんはアジアやアフリカの国と関わるなかで、価値観の違いや、解決のための対話に直面した経験などはおありですか?

 

 

 

栗田:経験した、というのとは違うかもしれませんが…私たちが関わった国でブルンジとルワンダという国があるんです。ご存知ですか?

 

 

 

——ルワンダは聞いたことがあります。映画にもなりましたよね。

 

 

 

栗田:はい。ルワンダはある程度知名度があるんですけど、ブルンジという国はルワンダと双子の国と呼ばれていて、民族構成とかも似てるんですよ。このブルンジにもルワンダと同じように虐殺の歴史があるんです。

 

その火種になったのは「作られた違い」です。

かつてフツ族は農耕、ツチ族は牧畜を営むといった生活の違いや身長など、多少の違いは見られたものの、両者がお互いの違いを明確に認識していたわけではなかったそうです。しかし、彼らはベルギーの植民地支配によって、ツチ族とフツ族が明確に分けられ、ツチ族の方が優れているという風に、違いが作られました。

 

 

 

——それが「作られた違い」ですか。

 

 

 

栗田:はい。

それによって植民地支配が終わったのちに多くの人が苦しめられたんですが、今2つの国ではそれぞれのやり方でその「作られた違い」と向き合っているんです。

 

 

 

ーー違いの受け入れ方にしても、それぞれの歩み方があるんですね。これからルワンダにしてもブルンジにしても、やはりその都度、多様性とはなにか、互いの違いをどう捉えるかという問題を対話によって深めていく必要があるんでしょうね。そこには日本人が学ぶべきものもあるように思います。

 

このようなアフリカの国々の現状や、子ども兵のこと、小型武器のこと、地雷のこと、同じ地球上で起きていることなのに私たちがなかなか目を向けられないテーマについて栗田さんは講演の際にはどのようなメッセージを伝えておられるんですか?

 

 

 

栗田:まずは「平和じゃない状況」ってどんなだろう?って想像してもらうことから始めます。

 

 

 

 

平和は大切。でも、「平和じゃない」ってどういうこと?

 

 

 

 

——確かに、平和が大切!とストレートに言われてもピンとこないかもしれないです。

 

 

 

栗田:はい。そして、話の内容は基本的には同じなんですが、切り口がいろいろあるんですよ。

 

先生方のニーズに合わせて、人権教育、平和教育、キャリア教育、多文化共生教育…など様々な方向からお話をしています。なので、同じ学校に2年連続で講演に行ったとしても、前年度とは違う切り口で話します。

 

 

 

——これだけは毎回伝えるようにしている、など、よくされるお話ってあるんですか?

 

 

 

栗田:私は、特に教育機関でよくするのは3つの関心が大切だという話です。

 

まずは「観心」です。物事をまずは知る、見るということが大事で、世界で起こっている課題であろうと自分の周囲の課題であろうと、まずはそれに対してよく知ろうとする姿勢を持とうという話です。

 

つぎに「感心」です。そこに関わっている人たちの気持ちを考え、感じること。なぜその人はそんな発言をするんだろうか、なぜこんな状況にいるのだろうかと考えることが大事です。

 

さいごに、そのままの漢字で「関心」です。実際に課題に対して自分ごととして関わってみよう、という話です。

 

当て字も混ざっていますけど、こういう3つの関心が大切なんだって話を講演ではよくします。

 

 

 

——そういうプロセスを知っているだけで、ずいぶん興味の持ち方が変わってきますね。

 

 

 

栗田:関わってみる、という話も自分ができる範囲のことから始めれば良いんです。

 

以前講演をした小学校の児童が漫画を描いてくれたんですよ。小学校6年生の女の子です。講演で知った内容を、漫画という自分にできる手段を使って、周りの人に広めようとしてくれたんです。

 

自分が得意なことを掛け合わせれば、たとえ小学生にだって出来ることはあるんです。大人になるまで待たなくてもいい。

 

 

 

——伝える、という営みにはいろんな手段がありますもんね。しかも、インプットした内容を、アウトプットに結びつけることで、彼女にとってより立体的な知識や感情として心に残りそうです。

 

 

 

栗田:本当にいろんな方法があるんです。

 

小学生、中学生に一体何ができるんですか?とよく聞かれるんですが、すぐに答えを欲しがらずにまずは自分で考えてみてほしい。例えば吹奏楽部でチャリティーコンサートを開いても良いし、親を巻き込んで何かイベントなんかもできるかもしれない。

 

そういった大きなことじゃなくても、テラ・ルネッサンスでは古本や古着、書き損じはがきを集めてお金に替えるという取り組みをしているので、学校単位で協力していただくこともできます。でも、これをしなさいって私たちが言うのだとあんまり意味がないんですよね。やらされたことだと意味がない。もちろん、こういった入り口の提供はいくらでもしますが、ぜひ子どもたち自身に考えて工夫してほしいという思いはあります。

 

話を聞いたって記憶は薄れても、行動したって記憶は残りますしね。

 

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——テラ・ルネッサンスさんのWebサイトにも様々な支援の方法が掲載されていて、こんな支援の仕組みもあるのか!と驚いたのですが、こういう古着などを回収する拠点は多いんですか?

 

 

 

栗田:いまは個別での協力が多いですが、拠点を増やしたいと思っているところです。お寺さんにも協力していただけるところがあったら心強いです。

 

 

 

——それはぜひ取り組みたい活動ですね。そのほかにもテラ・ルネッサンスさんでは様々な支援の方法が用意されています。まずは知ろうとすること、小さなことでも何か始めてみることが大切だと教えていただいた今回のインタビューでした。

 

栗田さん、ありがとうございました。

 

 

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テラ・ルネッサンスWebサイト「わたしにできること」 

 

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テラ・ルネッサンスWebサイト「わたしにできること」

 

 

 

最後まで記事を読んでくださってありがとうございます。

 

知らないことは恥ではありません。知らない世界は私たちにとって存在しない世界のようなもの。でも、自分の日常の延長線上には、一体どんな世界が広がっているのかを今回の栗田さんのインタビューでは少し覗くことができたと思います。

 

そして、「知ってしまった」世界のために私たちができることはたくさんあるのだ、ということもまた教えていただきました。たとえば、物を買う前に、少しその来し方に思いを馳せてみることもそのひとつ。

 

 

私の小さな変化が、未来の世界を変えるかもしれない。そう思うと、いつもの日常がいつもと少し違う意味を持ち始めるのではないでしょうか。

 

 

 

 

■テラ・ルネッサンスについてもっと知りたい方へ

 

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✔ さまざまな支援の方法(古本を集める、英会話を勉強、web制作、コーヒー購入…)

✔ テラ・ルネッサンスの活動を支援する方法

✔ 支援している各国の活動内容

✔ テラ・ルネッサンスの講演を聞くには?

✔ 創設者のメッセージ

 

などなど……