「『定年後』はお寺が居場所」? |星野 哲さんインタビュー①

現代においては、「無縁社会」という言葉が表すように、人と人のつながりが薄くなりつつあると言います。その中で寺院はどのような役割を果たすべきなのでしょうか?
 
立教大学21世紀社会デザイン研究科で墓や葬儀、そして寺院の役割について研究され、著書『「定年後」はお寺が居場所』でも話題の星野 哲(ほしの さとし)さんに、お寺の可能性について伺いました。

 
星野哲さん
 
ある取材がきっかけでできた、お寺や僧侶とのつながり
 
具体的な話を伺う前に、星野さんがお寺や僧侶の分野に興味を持ったきっかけについてお尋ねしました。
 
 
ーーまず最初に、お寺や僧侶といった分野に興味を持たれたきっかけをお聞かせください
 
星野:今から30年くらい前、まだバブルの余韻があって、東京は住宅の地価がどんどん上がっている時期でした。同じ頃、墓地も不足して、東京郊外の八王子では山を崩してどんどん墓地が拡大していました。私は当時、新聞記者でしたから、ありきたりの記事ですが、「死んでも住宅難」という記事を書く取材を始めたのがきっかけでした。
 
その取材の中で、当時はライターで、後に東洋大学教授、認定NPO法人エンディングセンター理事長となる井上治代さんに出会って、新潟に面白いお寺があるよという紹介を受けました。
 
それが安穏廟のある妙光寺でした。そこがとっても魅力のあるお寺だったんですね。そうした取材をしていく中で、色々なお坊さんたちとのつながりができて今に至るといった感じです。
きっかけは本当に偶然なんです。
 
今、こんなことしてるのは、あの出会いがあったからこそ。そういうことで、やっぱりご縁って不思議だなぁという風に思っています。
 
 
ーーはじめは取材という形とのことですが、どういった内容でしたか?
 
星野:お墓が取材の対象でした。当時は、家族が大きく変化しはじめた時期。現実の家族(形態)が核家族化などで姿を変え続けているのに、お墓をみるとイエ制度の名残があったわけです。
 お墓からは、そういう家族の変化であるとか、社会構造の変化といったものが透けて見えて、とっても面白くなっちゃったんです。
 
血縁でなくても、継承者がいなくても入れる安穏廟というのは、いまとなればわからないかもしれませんが、当時はとてもインパクトがあったんですね。
 
 
ーーお墓の取材を通して、寺院や僧侶と出会われたのですか?
 
星野:いや、そうではありません。お墓から直接、出会っていくというような、そんなに濃厚なものではなくて、お墓の取材の中でぼんやりと出会っていくという付き合いでした。
 
それが大きく意図的に変わってきたのは、大正大学さんの「地域寺院」という雑誌で2015年からライターをする事になったのが、大きかったかなぁ。
 
 
もちろんそれまでもお寺とはお付き合いはあったんですけど、改めて社会とお寺の関わりといったことを考えるきっかけを与えていただいたかなと思っています。それまで付き合ってたお寺さんのみならず、新たなお寺さんへ、次から次へと取材をする機会をいただきました。
 
 
ーーそれはコミュニティとしての寺院という分野でですか?
 
星野:おっしゃる通りです。私自身の関心領域にはもうそこ(お墓)にはとどまってません。今は、生前どうやって他者との「つながり」を作るかというところにあります。
 そう考えたときに、社会的リソースとしてのお寺は可能性があるなと思いました。
 
昔はコミュニティの核の一つとしてお寺は間違いなく機能していたわけですよね。それが人口減などといったいろんな要因がありましょうが、一度その機能は失われてきてた。
 明治以降、福祉、行政、教育といった、かつてはお寺が有していた機能を、国家がどんどん肩代わりしていくわけです。
 
戦後、コミュニティ自体が崩壊していく中で逆にもう一度、その地域にあってコミュニティを再定義する核になりうる可能性を持ってるという点で、私は今、お寺に注目しています。
 
 
星野さんは、取材の一環で紹介された寺院に魅了されたことがきっかけとなり、お墓からお寺を通したコミュニティへと関心の対象が広がったとのことです。そのきっかけも偶然のことだそうで、改めてご縁とは不思議なものだと感じさせられます。
 
取材を進めていく中で、崩壊しつつある地域コミュニティを再生する可能性を寺院に見出した星野さん。
続けては、寺院が地域コミュニティに対してどのような可能性を持つのか、より詳細なお話を伺いました。

 

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星野哲さんプロフィール

 

星野 哲(ほしの さとし):立教大学社会デザイン研究所研究員、立教大学21世紀社会デザイン研究科 兼任講師(看取りと弔いの社会デザイン)、東京墨田看護専門学校 非常勤講師(家族社会学)、集活ラボ所長、ライター。
1986年、朝日新聞社に記者として入社し、学芸部や社会部、CSR推進部などを経て2016年に独立。 記者時代から墓や葬儀の変化を通してみえる家族や社会の変化に興味を抱き、取材・研究を続ける。 終活関連分野全般、特に看取りを中心に人生のエンディング段階を社会でどう支えるかに関心がある。 社会的リソースとしての寺院の役割にも着目。寺もその一つになりうる「居場所」など、人と人とをむすぶ活動が大切と考え、「終活から集活へ」の考えを広げるため「集活ラボ(https://shukatsu-labo.amebaownd.com/)」を19年に立ち上げる。

 
 


 

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