「分かり合える」世界に甘え過ぎてない?「いつものコミュニティ」から一歩外へ

みなさんが普段よく言葉を交わすのは、どんな人ですか?
家族、恋人、会社の同僚、仕事相手 … 世の中にはいろんな人がいるけれど、でも自分のまわりにいるのはだいたい自分と同じ感覚を持つ人ばかりになってしまいがち。

 

背景や経緯を説明せずとも簡単に物事が通じ合うことは、とても居心地が良いし、余計な手間も増えなくて楽。いつもの日常が慌ただしくもスムーズに流れていきます。

 

でも、ふと「いつもの日常」にあぐらをかいている、停滞した自分に気づくことがあります。気づけば自分で作り上げた殻のなかに閉じこもってしまい、なんとなく行き詰まった感じが拭えない日々…でも、そんな日常も小さく踏み出す一歩によって、大きく様子を変えるのかもしれません。

 

新たな一歩をより多くの人に踏み出してほしい、と活動する若者たちがいます。

 

今回は、スポーツを通じて新しい価値との出会いを提供する「スポーツコミュニティ 100サル」代表の大野丈さんにお話を伺いました。スポーツと聞いて、自分には関係のない話…とページを閉じるのは少し待ってください。100サルは、そんなあなたのためのコミュニティです。

 

なにかを知りたい、その気持ちがいつもの日常を少しだけ豊かにする

 

市民の手で町の課題を解決しようという京都市未来まちづくり100人委員会プロジェクト。その第5期メンバーのスポーツ好きたちで2015年に立ち上げられた100サルは、”スポーツに苦手意識のある人や経験の少ない人たち” が安心して参加できるスポーツイベントを多く開催しています。

 

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100人委員会の “100” と活動の中心であるフットサルの “サル” を合わせて名付けられた100サル。その活動内容は簡単。みんなで一緒にフットサルをする。一見単純なこの活動は一体社会にどのような問いを投げかけるのでしょうか。

 

ーー100サルの活動の目的をおしえていただけますか?

 

大野さん:普段スポーツをしない人たちにスポーツの喜びや楽しみを知ってもらおうという目的から100サルは始まりました。スポーツの経験が少ない人がいざスポーツを始めようと思ったときに、バリバリの経験者のなかに入っていくのってとてもおっくうだしハードルが高いですよね。そんな腰が引けてしまっているスポーツ未経験者が100サルの主役です。

 

そして、もうひとつ活動を続けるうえで出てきた目的があります。それは日常では出会えない人、新しい世界に触れてもらう機会をつくるということです。学生、社会人、主婦、海外の方、障がいをもった方 … 互いに普通に生活していたら出会うことのない人たちが接点を持てるような活動にするという点を、いまもっとも重要視しています。

 

ーー新しい世界に触れる機会、それは活動を続けるなかで見えてきた社会の課題ということにもなりますか?

 

大野さん:そうですね。いまの社会は、自分とは違う目線で物事を考えている人たちと触れ合う機会がとても少ないと感じています。それがどう問題なのかというと、いろんな人やいろんな物事が関わっていま自分がここにいるっていうことがなかなか見えにくいまま過ごしてしまいがちなことだと思うんです。

 

いろんな情報が簡単に手に入るようにはなったけど、でも自分の周りにある情報はどんなものだろうって携帯を開いてみると、自分の欲しい情報、心地よいと感じる情報だけが目に入るようになってしまっています。
でも、実際に海外の方や知的障がい者の方たちとフットサルをしてみると、今まで考えたこともなかったような世界を知ることができたり、また自分のなかにあった無意識の差別意識みたいなものにも気づかされました。

 

ーー差別意識ですか?具体的にはどのような?

 

大野さん:「してあげなあかん」と思っていたことですかね。
フットサルにしても、そのあとご飯を食べるときでも、「彼らのそばにいてあげなあかん」、「喋っとかなあかん」、「笑顔を振りまいとかなあかん」って最初は思っていたのですが、実際はそうではありませんでした。彼らはそんなこと望んでいなかった。喋りたかったら自分から喋るし、ご飯の席でも移動したかったら自分で勝手に席移動します。そのへんを過剰に思っている自分に気づかされました。
ーー確かに、彼らは「困ってるだろう」って無意識に思い込んでしまうことはありますよね。いつもいつもそうではない。
たとえば障がいっていう名前がついているだけで、いわゆる健常者でも障がい者でも、困っているときもあれば困ってないときもあるっていうのは同じですもんね。

 

大野さん:そうですね。
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ーー100サルでは、そういった多様な価値観との出会いを提供していきたいということですね。いま”多様性”ってとても大きく扱われているテーマですが、具体的に多様な人との出会いがどう人生を豊かにしてくれるのか … 大野さんはどのようにお考えですか?

 

大野さん:僕の個人的な考えなのですが、人の好奇心と幸せの度合いって比例していると思うんです。こんなこと知りたい!これが好き!みたいな強くひとつの方向に惹きつけられているときって時間が経つのが早いし、とても能動的になっていきます。
会社員時代、そういう好奇心を刺激されるようなことのない、単調な… 生活のためだけに働くという状態が僕にはすごくしんどかった。同じような価値観の人たちと一緒にいるのは、似たような情報を同じくらいの量インプットしているから話も通じやすいし楽だけど、自分の知らない世界に気づくきっかけは、きっと異なる価値観に触れるなかから生まれてくることが多いのかなって思っています。

 

 ーー異なる価値観の方たちとの接点の持ち方はどのようにされているんですか?なにか工夫とかありますか?

 

大野さん:そのへんは僕あまり細かくオペレーションしているわけじゃなくて。自己紹介してチームを組んでゲームをして…本当に実際の内容は普通です。
でもそれが僕がスポーツっていいなと思っている点なんです。みんな異なる背景、異なる価値観で、全然違う所属だけど、ここでやっていることはただボールを追いかけて、ゴールを目指すということ。ただ一つの目標にみんながコミットして時間を過ごしている。そこではいきなりダイレクトに共通項を持つことができます。ボールがうまく蹴れた!とか、今の場面は難しいんだよね… とか、どんどん共通項が増えていく。だからこそスポーツって誰でもデザインできるんじゃないかなって思っています。

 

ーーそれはすごく大切なことのような気がします。みんなで同じものを目指すなかだからこそ、それぞれの違いが明らかになっていきますよね、走るのが早い遅いとかって技術面も含めて。でも、そういう異質なものを受け入れた集まりの方が、同質なものの集まりよりも強固な感じがします。能力が強い、というよりは包容力があって強いというイメージ。
 
他者に対して自分の思い通りにならなくてカチンとくるときって、きっと自分のなかにも同じものがあって、だからこそ他者を許すことで自分もまた許されたような気持ちになれることがあります。そうすることによって、生き方にゆとりのようなものが出てくる気がします。
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大野さん:そうですね。実際に活動を通して、僕が心から思うようになったのは、人間誰しも一人ひとり必ず魅力があるということです。自分の興味がない分野の方であろうと、そこには尊敬の気持ちがあるし、素晴らしいなって感じることができるようになったのは、本当にいろんな方々に出会ったからだと思います。

 

異なる価値観に触れる、知らなかった世界を知ろうとする。未知へと手を伸ばすことは、決して簡単な営みではないけれど、その先には想像もしなかったような豊かな大地が広がっているのだと、とても楽しそうに話してくださる大野さんの表情が印象的でした。
第2回の記事では、大野さんご自身が現在の活動に至るまでの道のり、考えてきたことをお話くださいます。
全3回にわたり100サル大野さんのインタビューを掲載しています。

【大野さんのインタビュー連載(全3回)】
第2回 仕事に不満はないのにモヤモヤする…29歳の決断とその後
第3回「したいこと」と「すべきこと」の間で私たちが「できること」

2017.12/27 更新