「したいこと」と「すべきこと」の間で私たちが「できること」

夢を語ることは簡単だ。

 なにやってんだアイツはと人を批判することも簡単だ。

 

 

口では何とでも言えるし、人の粗を探すのなんて息を吐くようにできてしまう。

 

でも、決断し、目的に向かって自ら歩みを進めた者だけが見える世界があって、きっとそこでは「したいこと」だけ語る夢追い人や、出来ない理由ばかり挙げ連ねる批評家気取りでは何も為すことはできないのだろう。

 

「したいこと」と「すべきこと」

 

理想と現実の間で、いま自分たちに「できること」をひとつずつ積み上げている若者たちの姿を紹介します。華やかとは言い難い、でも泥臭いかっこよさがそこにはあるのではないでしょうか。

 

100サル1スポーツを通じて新しい価値との出会いを提供する「スポーツコミュニティ 100サル」代表の大野さんにお話を伺っています。インタビュー連載第3回(最終回) の今回は、実際に抱える運営上の課題や100サルが描く未来についてお聞きしました。

 

【大野さんのインタビュー連載(全3回)】
第1回「普段のコミュニティから飛び出すことで見えてくるもの」
第2回「仕事に不満はないのにモヤモヤする…29歳の決断とその後」

 

僕たちの言葉の限界と、スポーツが持つ力

 

ーー100サルではいくつかスポーツコミュニティを運営されているとのことでしたが、どのようなコミュニティを展開しているのか、詳しく教えていただけませんか?

 

大野さん:100サルの他には、

 

・女性だけのフットサルコミュニティ・ガル100
・サッカー経験者たちのコミュニティ・ガチ100
・海外の人とのコミュニティ・ワル100
・知的障害を持つ人とのコミュニティ・インクル100
・バスケのコミュニティ

などがあります。定期的な開催にまで至っていないものもあるのですが、100サル全体ではだいたい月3〜4回の活動回数になります。参加費はコミュニティによりますが、今のところ1000〜1500円でやっていて、参加者は各20〜25人くらい。1回2時間です。

 

1年半ほどでここまで活動の幅が広がったのですが、どのコミュニティも全て僕がやっている訳ではなくて、それぞれのコミュニティに代表者というか、責任を持ってやってくれている人がいるので、ここまで広げることができました。

 

ーーいろいろあるんですね!ガル100やガチ100の取り組みは、参加者同士の体力的な差異を埋めますね。安心して参加できる仕組みだと思います。ワル100というのは、どのような目的をもって展開されているのですか?

 

大野さん:ワル100はまだ本格始動には至ってないのですが、いまトルコやペルーの子が来てくれています。
第一回目は、地雷や少年兵といった課題に取り組むNPO法人テラ・ルネッサンス(詳細はこちら)のみなさんにご協力いただいたコラボ企画でした。

 

そこには京都大学に留学中のアフリカ人の方もいらっしゃったのですが、彼らが言うには、日本人はシャイ過ぎるそうなんです。彼らからしたら、肌が黒いことにも触れてほしいし、自分たちの国の音楽や食文化にももっと興味を持ってほしいって言っていました。そういう関わり方ができないから結局彼らの多くは、外国人コミュニティに集まってしまう…という現状もあります。

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ーーそれは、知らない現実でした。そこに、ワル100というのは一石を投じる取り組みになりそうですね。

 

大野さん:そうなればいいなと思います。特にサッカーが盛んな国からの留学生たちは、日本人との交流というよりも、ただサッカーがしたい。だけどどこに行けばできるのかわからない、という不満を抱えているんです。
イングランドに留学経験のある友人は、地域のサッカーの試合に参加したことで一気に馴染むことができたと言っていました。同じようなことが日本でもできるはずだし、していかないといけないと思っています。

 

そういう意味で、ワル100では日本人が英語や海外の文化に触れることが目的になりがちな国際交流とは差別化を図っていきたいんです。

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ーーこっち側(日本人)じゃなくて、向こう側(外国人)に立つ、ということですよね。

 

大野さん:はい。まだまだ始まったばかりで、集客などの課題も多いですが、そこを大事にしてやっていきたいと思っています。

 

外国の方ってスポーツするとき、本気なんですよ。ゆるゆるやっていたらめっちゃ怒られました。そこは延長戦だろ!とかって。笑

ここまで真剣にやるんだ…って感心しました。僕らの今までやってきたコミュニティの雰囲気とは全然違うけど、それも面白いなと。

 

ーーこれまで、100サルの活動内容や課題意識、目的などについてお話いただきましたが、今後はどのような形でこの100サルを運営していくのか、考えていらっしゃることはありますか?

 

大野さん:今後は法人にしたいなっという思いがあります。

 

NPOなのか一般社団なのか…まだわからないのですが、その前にまずハード面の課題を解決しないといけません。

 

たとえば施設。フットサル場にしても、他のフットサルサークルに先に押さえられたりして、毎回思うように確保できるわけではないのが現状です。会場を押さえるための抽選会にも参加したりして。

 

その辺のハード面を安定的にコントロールできないと結局続かない気がしています。

 

ーーどうしても場所は必要ですしね。お金に関してはどうでしょう。さきほど参加費は1000〜1500円というお話がありましたが、ある程度は利益が出ないと運営も難しいのでは?

 

大野さん:そうですね。今まで1000円でやっていたコミュニティを1500円に値上げしたりもしましたが、それでも安い方だとは思います。
今の運営にしても今後法人にするにしても利益は出していきたいです。利益が出れば開催頻度も上げていけますし。

 

ーー対応策として考えていることはありますか?

 

大野さん:企業さんと連携したいという構想は持っています。企業研修などで100サルを使っていただいて、そこから利益が出れば…と。

 

健康やコミュニケーションという視点で研修にフットサルを取り入れてもらって、さらにそれを3社や4社合同でやればオープンイノベーション、交流の場として活用することもできます。

 

あとは採用マッチング。中小企業と学生の間のマッチングで、企業さんからお金を出していただいて、学生は無料で参加するといった形で。運動習慣にも繋がるし、学生にとっては普段触れ合う機会のない経営者の方々と知り合うチャンスにもなります。

 

ーーそこで出た利益をまた普段の活動の参加者たちにも還元していけますね。

 

大野さん:はい。まだ100サル自体に企業の中に入っていけるほどのブランド力がなかったり、さきほど挙げたハード面での問題があったりと、実現までには多くの課題がありますが…

 

ーー目の前の現実的な課題に向き合いつつも、こうなりたい!という理想を掲げ続ける、大野さんの活動の原動力になっているものはなんなのでしょう?

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大野さん:スポーツを楽しんでくれている人の顔を見ると嬉しくなるっていうのはありますね。

 

また、スポーツに限らなくても僕は「これはとても素敵だ」というものをみんなに知ってもらいたいという思いがあって。でも、ただ口で説明しても伝わらない。そこでどうやって接点をつくるかと言ったら僕の場合はやっぱりスポーツなんです。飲み会を開くよりも自然な接点になるんですよ。

 

先ほどお話したテラ・ルネッサンスさんとのコラボもそうですし、あといま立命館大学の学生が始めた「きっかけ食堂(別窓リンク貼る)」という素晴らしい取り組みがあって。東日本大震災の記憶を風化させない、ということをテーマに毎月11日、震災の月命日に東北の食べ物やお酒を楽しみながら語り合う食堂を開いてるんです。

 

彼らとコラボしたチャリティ企画を3月11日に開催しました。そうしたら、100サルに参加しようと思って来てくれた子たちが、そこできっかけ食堂を知って、なんと翌月のきっかけ食堂にも参加してくれたらしいんです。

 

ーースポーツとの出会いだけではなく、間接的に様々な出会いを広げていくことができてるんですね。

 

大野さん:社会問題に取り組もう!とか言ってしまうと拒絶というか、ちょっと固い話すぎて自分ごととして見られない人もいると思うんです。そして、興味がないって一度思ってしまったら、なかなか知ろうという気にもならない。

 

でも、そこにスポーツが入ることによって、一緒に汗を流したりとか、直接肌で感じることで受け入れていけることってあると思うんです。それは、スポーツの大きな価値だと僕は思っています。

 

ーー言葉では伝えきれないという大野さんのスタンスがとても素敵だし誠実だなと思います。言葉で説明されると「ふ〜ん、そんな感じなのね」ってわかったつもりになってしまうけど、「言葉では上手く言えないけど本当にいいものだからとにかく一緒にやろう!」という大野さんご自身が楽しそうな様子はとても魅力的に映ります。

 

大野さん:ありがとうございます。でも、それは同時に難しさでもあって、いろんな人をどうやって巻き込むかという課題は感じています。リピーターを増やしていくということもまだまだ出来ていない点ですし。

 

 

課題、理想、現実、どれも大切でどれも難しい。でも、その難しさをも面白がりながら抱えていこうとする大野さんの姿に、新しい時代の働き方を見せてもらった気がする今回の取材でした。

 

誰もが課題意識や大きな目標を持たねばならないということはではない。でも、いつもと違う日常を覗いてみたいならば、いつもの日常のなかに新しい何かを見つけたいならば、小さくてもいい、一歩前に踏み出してみる。そこになにがあるかは、あなたしか見つけられないのだから。

 

2018.1/6 更新