ありのままを認められる子育て−大下充億(おおしたあつお)さんのインタビュー−

第2回「ケニアでの出あいと「ありのまま」に育つ大切さ」
ケニアでの出あいと「ありのまま」に育つ大切さ山口県平生町で「こびとのおうちえん」という保育施設と、小学生を対象にした、子どもたちの主体性を尊重する場である「てらこや」を運営されている大下さんにインタビューさせていただきました。第二回目は大下さんがこの活動を始められたきっかけとなったケニアへの旅と、そこから見えてきた子どもにとって「ありのまま」に育つことの大切さを聞かせていただきました。

 図1
———この活動を始められたきっかけを教えてください。

 

29歳の時に、「自分はどうやって生きるべきか」ということに悩み、国際NGOのボランティアとしてケニアに行きました。そのときに戦争・飢餓・貧困・環境破壊、さまざまな世界の問題に実際に直面しました。

そんなとき、僕が手伝っていたところで仲良くなった少年が「自分の村が農繁期だから村に帰る」と言うので、その少年について行ったんです。そこは、お金も流通していなくて、昔ながらの自給自足をしている村でした。そこでは、みんなが自分のやりたいことをやっているのです。炭焼きが得意なおじいちゃんは炭を焼いていて、ケーキ作りが得意な女の子はケーキを作って、炭が必要な時はそのおじいちゃんのところへ、ケーキが食べたい時はその女の子にもらいに行く。そういった形で、コミュニティの中で誰かが必要なことを、他の誰かが得意なことをすることによってきちんと回っていました。


そこで一番驚いたことは、子どもだけではなくておじいちゃんおばあちゃんまで全ての人の目がキラキラ輝いたことでした。


そんな人たちの姿に直面して、「幸せってなんだろ?」そんな疑問が心の中から湧いてきました。
日本と比べて考えて、なんでこの村の人たちは歳を取ってもこんなに目がいきいきと輝いているのか?自分のやりたいことをやりながら、それがまた誰かの役に立って、誰かから自分を必要とされて、その関係の中で、きっと心が満たされているんだと思いました。そうやって心が満たされて日々を過ごしていると、こんなに人は幸せに生きられるのか、ということに気づかされました。それが僕にとってはすごくショッキングな出来事で、今まで日本で出会ったことのない人々でした。
そこで、考えさせられたのが、日本にいると「生きる」=「お金を稼ぐこと」のように錯覚してしまいがちだったけど、「生きる」ってこんなにシンプルなことだったんだ、人はこんな形で幸せに生きることができるんだ、自分のやりたいことをして、それが誰かの役に立って、そんな暮らし方ができるんだって知って、日本でもそういう暮らしを作っていきたいと思って、日本に帰ってきて、この場所(「こびとのおうちえん」のある場所)を見つけて、自給自足的な暮らしを始めました。

図2-2
———この場所はどういったご縁で見つけられたんですか?

 

もともと僕の住居でした。僕には子どもが4人いて、「おうちえん」を開く何年も前から、ここに子どもの友達が遊びに来ることが頻繁にありました。それを見てたら、こういう場で子どもが育ったら、いろんなものが理屈じゃなく体験的な形で育つことができるんじゃないかと思って、活動を始めました。

それともう一つ大きなきっかけは、日本に帰ってからいろんな環境運動や問題解決のための運動を始めたんですけど、結局価値観の違うもの同士の中で、対立が起こる。その原因は、みんな「自分自身」を生きてるんじゃなくて誰かの顔色を伺い、自分を偽って生きることで、今の社会が出来上がってしまっているからだと思うんです。そのストレスの中で本当にみんな苦しんでいる。運動する中でそんなことを痛感してきました。

だから、こういう問題を根っこから解決しようと思ったら、幼い時から、「自分は自分のままでいい」・「ありのままの自分でいい」ってことをきちんと認められる育ち方それができてはじめて、誰かのありのままをきちんと受け止めてあげることができるんですね。

図2-3 
もしそういう人間関係が幼い時から構築できてたら、大人になって、たとえ意見が違っても、相手を批判したり、対立したりするではなく、「相手の意見は受け入れるけど、意見が違うから話し合っていこう。」そんな関係になると思うんです。その関係であれば、いまの社会問題のほとんどがもっと違う良い形になっていっただろうな、とつくづく思います。そんな思いから、その関係性が幼い頃から構築できる「おうちえん」を作ろうと思いました。

 
全4回にわたりこびとのおうちえん大下さんのインタビューを掲載しています。

 

【大下さんのインタビィー連載(全4回)】

第1回「子どもの心を育てる」(http://tarikihongwan.net/?p=9881

第3回「ケニアの村でみつけた幸せのかたち」(http://tarikihongwan.net/?p=9903

第4回「体験が満たされた心を育てる」(http://tarikihongwan.net/?p=9910

 

 

2018/1/12 更新