体験が満たされた心を育てる−大下充億(おおしたあつお)さんのインタビュー−

第4回「心を満たすための子どもと大人の対等な関係づくり」
 
山口県平生町で「こびとのおうちえん」という保育施設と、小学生を対象にした、子どもたちの主体性を尊重する場である「てらこや」を運営されている大下さんにインタビューさせていただきました。「心が満たされた子ども」と「心が満たされていない子ども」との違いはどんなところに現れるのか。子どもの心を満たすためには大人はどのような態度で子どもと接するべきなのか。実践的な方法も踏まえて大下さん流の「心を満たすための子どもとの接し方」について教えていただきました。子育てに悩む親御さん必読です。
 
図4-2
———「おうちえん」や「てらこや」を実際されてみて、いかがですか?
 
ここを卒園していった子どもたちを見ると「やっぱりこういう形の場を作っといてよかったな」ってはっきり実感します。子どもを通して大人が変わっていく。「子育て」ということを通して、お母さん・お父さんたちと話し合いながら、親自身が変わっていく。大人がありのままに生きられるようになったら、子どもは自然にありのままになります。子どもは大人の背中を見て育つもんですからね。そんなかたちでも社会は変わっていくと思います。
 
———心が満たされて育った子と、そうじゃない子との違いってどんなところに現れますか?
 
ここを卒園して小学校へ行っても、ここでやりたいことばかりしていたからわがままに育つかといったら、まったく逆です。やりたいことをやっても心が満たされている子は、その場にすごく適応できるんです。相手に合わせることもできます。自分が満たされてるから、相手に自分をむりやり押し付ける必要が無いんです。あとは自分と友達が違っても自分の意見をしっかりと言えます。
 
もちろん子どもによってそれぞれ個性も違うし環境も違うので、一概にみんながこうだとは言えないんですけど、総じてそう言えますね。家でも親が支配的な関係ではなく、対等な関係で、言葉がけから気をつけているような親御さんの家庭で、家と「おうちえん」とがきちんとマッチングしたら、子どもは全然違います。だから「おうちえん」だけでもダメです。でも家だけでもダメなんですね。「おうちえん」と家とが合って初めて子どもにとってプラスにはたらくのだと思います。
 
図4-3
———どのようなことに気をつけて教育・保育をされていますか?
 
出す言葉であったり、態度などが支配的な関係にならないようにすることです。いわゆる指示・禁止・評価などの言葉にならないように、あくまでも対等に自分の気持ちを伝えるようにしています。例えば、「やめなさい!」とか「それは禁止でしょ!」とか言うのではなくて、「それをやられると怪我をしてしまって、私(大人)がとても悲しいからやめてほしい」、という様に自分の気持ちを伝える。それで相手の気持ちも聴く。行動は止めるけど、気持ちはきちんと受け止めるように努力しています。気持ちと気持ちをただ伝え合う、ということを心がけています。
 
 そうすると子どもたちの会話も相手への批判ではなくて、自分の気持ちを伝え合うような会話内容にもなっていきます。それはすごく相手に届く言葉なんですね。相手の価値観や感情を否定するのではなくて、ただ自分の気持ちを伝える。そういう中で人間関係ができて、大人になって話し合いになれば、対立にはならないんです。でも相手を批判して評価するから対立関係になるんですね。仕事の関係でも夫婦関係でも同じです。批判ではなく、対等に気持ちを伝え合う関係が小さい時から身についていけばいいなと思っています。
 
全4回にわたりこびとのおうちえん大下さんのインタビューを掲載しています。

【大下さんのインタビィー連載(全4回)】
第1回「子どもの心を育てる」
第2回「ありのままを認められる子育て」
第3回「ケニアの村でみつけた幸せのカタチ」
 
 
【インタビュアー黒瀬さんのその他のインタビュー記事】
 
◎かえるのがっこう-堀内健さんへのインタビュー全4回-

   

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掲載日: 2018.01.17

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