シニアの生活の質を考えてきた私たちは、次に人生の質を考えた| MIKAWAYA21株式会社②

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電球交換、家具の移動、庭の草取り……高齢者の日常に隠れた小さな困りごとをお手伝いする。その取り組みを始めたのは街の新聞屋さんでした。
 
現在はMIKAWAYA21株式会社として取り組む、この、「まごころサポート」の概要と、サービスのはじまりについてお伺いした前回。今回は、サービスのより詳しい内容についてお話いただきます。
 
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街の新聞屋さんが!?高齢者が抱える「困りごと」をお手伝い|MIKAWAYA21株式会社①
 
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地域になくてはならない新聞屋さんに
 
ーー青木さんたちは、まごころサポートを始めたことによって、地域のなかで「なくてはならない新聞屋さん」になったように思いますが。
 
青木さん(以下、「青木」):そうですね。最後には市役所からも頼りにされるようになりました。
 
ーー市役所の方はどんな風に頼ってこられるんですか?
 
青木:市役所には日々、シニアからのいろんな困りごとが舞い込むんです。たとえば、買い物をしたあと荷物が重いから、スーパーから家に送ってくれるようなサービスはないか?とか。
 
それは市役所の職員ができる仕事ではないので、そこで「〇〇という新聞屋さんならやってくれますよ」と紹介されるわけです。それで、「ご利用されるなら、こちらで連絡を取ってあげますね」ということで、市役所の窓口から直接僕たちに電話がかかってきて、「△△さんという方のところに行ってあげてもらえますか?」となるんです。
 
ーーなるほど。ここから、まごころサポートは、どのように展開されていったのでしょう?
 
青木:販売促進費削減、従業員満足度向上などに加えて、ライバル会社には真似できないサービスで差別化もできました。全国から同業他社の方が見学にきてくれるようにもなりました。
 
そういったなかで、新聞を読まない若い人たちに何かできないか、ということも考えていました。
 
 
ーーそうですよね。新聞の購買層に若者がいなかったから、高齢者向けのまごころサポートがスタートしたんですもんね。
 
青木:はい。若い人たちは新聞を読まずに何をやっているかというと、スマホなんですね。当時ちょうどスマホが出てきた頃でした。
それじゃあスマホだ!ということで、SoftBankのショップを新聞屋さんとくっつける形態のお店を始めてみたんです。
 
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ーーくっつける、というのはどういうことですか?
 
青木:ひとつのビルのなかに、新聞屋さんとSoftBankショップが並んでいるということです。デジタルとアナログを両方扱うぞ、ということで、「ニュースタンドモバイル」と名付けて。
 
このお店は、奈良県生駒市に建てました。駅前でもなんでもない場所にあったんですが、オープンしてから全国iPhone販売台数月間1位を3回獲得したんです。
 
ーーそれはすごい!なぜ、そんなに売れたんでしょう?
 
青木:「家族まるごと乗り換え」というプランが全国平均の6倍くらい売れたのが理由だと思います。
 
なぜ売れたかというと、普段お付き合いのあるおじいちゃんやおばあちゃんが、「普段あそこの新聞屋さんにはお世話になっているから」ということで、お盆や年末年始に帰省してきた子どもたち家族を連れて機種変更に来てくださったからです。そうすると、5台6台が1度に売れるんです。
 
あとは、見守りケータイを、お孫さんに買ってあげたいということで入学式シーズンには大きい売り上げを記録しました。
 
ーーなるほど。高齢者を中心に、家族全体が顧客となったんですね
 
青木:おじいちゃんやおばあちゃんたちへのサポートをしているつもりが、実はそれは家族全体へのサポートでもあったんです。
 
新聞屋さんの看板を降ろし、新たなステージへ
 
青木:こういった活動を続けるなかで、SoftBankの孫社長の弟さんで、泰蔵さんという方と知り合いました。あるとき、泰蔵さんは僕に「こんなに良い活動をしているのに、なぜ日本全国に広げないの?」とおっしゃったんです。「それでは志が小さいよ。これから高齢化社会が深刻化していくのに……」と。
 
そういった後押しもあって、読売新聞を離れて起業することにしました。
 
ーー読売新聞のなかでは、できることが限られてきていたんですか?
 
青木:たとえば講演に行こうと思っても、読売新聞に籍を置いていたら、他社の新聞社とか地方紙にも行くことができないんです。それで、読売の看板をお返しして、MIKAWAYA21株式会社を作りました。
 
ーーそこから講演活動を本格化させていったんですね。
 
青木:はい。新聞社の方や、新聞販売店のオーナーさんや、そこで働いている方たち向けの講演会を、年間100日間くらい。日本全国あちこち行きました。
 
講演の内容は、まさに「地域になくてはならない新聞屋さんを目指しましょう」でした。新聞屋のビジネスモデルを変えていこう、地域に根を下ろしているからこそできることがある、という講演会です。
 
mikawayaimage06(MIKAWAYA21 ウェブサイトより)
 
「終活式」とは?「ありがとう」と「宣言」がキーワード!
 
ーーそうやって、高齢者の方の生活の質についてお考えになるなかで、また「終活」という新たな分野に目を向けていかれたんですね。
 
青木:はい。シニアの日々のちょっと困ったをお手伝いし、健康維持のお手伝いもするなかで、みなさん終活ということに興味はおありだし、終活に関連したお困りごとも抱えているものの、どこに頼ったら良いのかがわからない状態であることを知りました。エンディングノートも書いてはみるんだけれども、途中で書くのをやめてしまう方が多いようでした。
 
それなら、終活カウンセラー協会※さんと事業提携して、エンディングノートを最後まで書ききるところまでをきちんとサポートすることにしようと決めたのが始まりです。それには具体的な目標があった方が良いので、「終活式」というイベントを終活開始から3か月後くらいに設定することにしました。
 
それまでの間、期間限定でお家のお手伝い、生前整理、遺言をどうするか、お葬式をどうするか、お墓をどうするか……ついつい先延ばしにしてしまうことをまとめて終活のコーディネーターと一緒に相談しながら。定期的なご連絡や、自宅訪問なども挟みつつ、細々としたことまで一緒に取り組んでいきましょう、というサービスです。
 
※終活カウンセラー協会:「終活」に関してじっくり話を聴くスキルを持ったカウンセラー。終活に関する抽象的な「悩み」の中身が、どの分野の悩みであるのか、またどの専門家が必要であるかを見極める。 参考:https://www.shukatsu-csl.jp/about/
 
ーーいま、終活式という言葉が出ましたが、これはなんでしょうか?
 
青木:これから整備を進める部分もあるのですが、基本的に「みんなの終活式」と「わたしの終活式」という2種類を用意しています。
 
「みんなの終活式」は、地域で100人だとか200人の方に集まっていただいて行う、これからの人生のための節目になれば、という式です。成人式のようなかたちのものだと考えていただければわかりやすいと思います。
 
「わたしの終活式」は、個人的に自分のやりたいタイミングで、自分が「ありがとう」を伝えたい人たちを集めてやる式です。結婚式のようなものをイメージしていただければ良いかと思います。
 
ーーこの2種類の終活式と、それまでの終活を全面的にサポートしていくのが、まごころサポートのお手伝いということですね。「人生の節目の式」や「ありがとうと伝えたい人を集める」という言葉からは、終わりに向けての活動というよりも、はじまりのため、再スタートのための活動という印象を受けます。
 
青木:そうなんです。これはお別れ式ではなく、「ありがとう」を伝えたうえで、どんなチャレンジをしていくかということをみんなに宣言するような式です。
 
ーー「ありがとう」と「宣言」ですか。
 
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青木:はい。終活式のために最初に行うのは、「ありがとう」を伝えたい人をリストアップすることなんです。自力で生きてきたように思っていても、改めてリストを作ろうと人生を振り返ると「あ、10代のときのあの先生は恩師だったな」とか「20代のときはあの人に救われたな」とか一つずつ思い出していくんです。
 
そして、式の当日には、みなさんに向かってスピーチするのですが、そこでは、これからどんなチャレンジをしていくのかという宣言、次の10年や20年をどう生きるかという表明をしていただきたいと思っています。
 
ーーなるほど。終活に伴う一般的なイメージとは少し違って、これからのための明るい選択肢、という感じがします。次回は、さらに具体的なお話を聞かせていただきたいと思います。
 
地域になくてはならない新聞屋さんが、生活の困りごとをサポートし、健康維持のサポートをし、次に目指したのは終活のサポートでした。次回は、まごころサポートならではの終活について、お話を伺います。
 
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終活式とは?より良く生きるための再スタート!どんな内容?|MIKAWAYA21株式会社③
   

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掲載日: 2020.02.14

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