釈徹宗さんに聞く、日本仏教のこれから|釈徹宗さんインタビュー<後編>

釈 徹宗さん(写真提供:釈さん)

 

いま、「宗教の道具化」が進んでいる

 
――今と昔で、宗教の役割にはどういった変化がありますか?
 
釈 徹宗さん(以下:釈):時代や地域によって異なるので一概には言えませんが、昔は地域共同体タイプの宗教が強かったんです。その地域共同体がだんだん解体されてきて、個人で物事を決めることが多くなり、昔に比べて今は「個」というものが強くなったと思います。その結果、「宗教の道具化」が進んでいるように感じます。
 
――「宗教の道具化」とはどういう意味でしょうか?
 
:宗教は昔、習慣と共にあるものでした。ですが今は、抱えている苦しみや悩みを癒せるものを宗教の中に探したり、生きづらさを感じたときに宗教に解決を求めます。問題解決の道具なんですね。そういう意味で「宗教の道具化」と言いました。でもそのように宗教をとらえれば、問題が解決したり目的を達成した時点で離れていきますよね。その宗教への帰属意識はない。そういう人が増えている気がします。
 
――宗教を道具化することの弊害として、どんなことが挙げられるでしょうか?
 
:宗教はどこかで自分がポッキリ折れないと見えない世界ですよね。宗教が道具化するということは、自我を温存させたまま宗教を利用するということになる。そういう意味では、宗教のコアの部分に気付きにくいとは思いますね。
でも、きっかけはそうであっても、真剣に求めている人であればそこから新しい展開が生まれる可能性もあると思います。それは、実は今も昔も変わらなくて、昔からその場しのぎの安心を求めるために宗教を道具のように利用する人はいたんです。宗教を取り巻く環境に変化はありますが、宗教を真剣に求める可能性は誰しもある。そのことについてはあまり変わりないと思いますね。
 
 

「個」の時代で浄土真宗を伝えるには

   

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掲載日: 2021.12.10

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