重要なのは価値観の転換!新入社員に説く、「役に立つ立たない」ではないモノの見方│藤岡教顕さんインタビュー<前編>

 

仏教的モノの見方?

 

(写真提供:藤岡さん)

 
――藤岡さんはお寺以外でもご講演もされていると伺いました。
 
藤岡:最近は学校や会社での講演も増えてきましたね。
そうやってお寺の外に出る活動を始めたきっかけは、私と那須弘紹さん(那須さんの記事はこちら)でやっている漫才法話かもしれません。
 

(写真提供:藤岡さん)

 
藤岡:例えば、学校で宗教者が講演するのを敬遠する方もいらっしゃいます。しかし、漫才法話は笑いが宗教というセンシティブな部分を緩和して、親しみやすくしてくれているのではないかと思います。
そんな風に漫才法話を見てくださった方から、教員や保護者、あるいは企業に向けても講演してほしいと依頼が来ます。講演の機会をいただく中で、積極的にお寺の外に出ていく意味があると実感しますね。
 
――企業の方々にはどのようなテーマでお話しされるのでしょうか?
 
藤岡:仏教のモノの見方や考え方を話すことが多いです。
現代は、「役に立つか、立たないか」という両極の見方が主流になっていて、商品や人までもが「役に立つ、立たない」の価値観で見られる世の中です。その価値観を変えていくしかない、と新人研修や学校での講演の際は話すようにしていますね。
 
すべてのモノにはその背景に等しくご恩やご縁があることを仏教は説いています。背景や意味を深く知ることよって、ありがたさにつながっていく。そこに目を向けていくことこそが大事なんですよね。それに、背景や意味に気づけたら少しずつ生き方も変わっていくし、そのことに気づかせてくださった仏さまに対してよろこびも生まれてくる。
ちなみに、ご高齢の方々に講演をさせていただくときは、モノの見方の話はしません。皆さんもう重々承知のことなので、人生の先輩には価値観を変えていこうというより、生きて来られた今までのご恩やご縁を限りあるいのちの中で大事にしていきましょうとお伝えしています。
 
――モノや人を「役に立つ、立たない」で見てしまうのは、効率化社会の代償のように感じます。そういった社会だからこそ物事の背景を知り、そのありがたさに気づいていくという価値観の転換を行っていきたいですね。
他に講演の際に伝えられていることはありますか?

 
藤岡:マニュアルから脱却することです。アルバイトなど初めて仕事をする環境ではよくマニュアルが活用されますが、行動や言葉遣いが刷り込まれすぎる傾向があります。マニュアル通りにしておけば大丈夫だろうという意識、これも効率化の一つですよね。
 
でもそうじゃなくて、しっかりと状況を見て、考えて、自分の判断で行動することが大事だと思うんです。マニュアル通りに動くのではなく、自分の思いを込めて働くと、言葉に説得力が生まれるし、相手に対して自然に寄り添うことができると思うんですよ。マニュアル通りにやっているだけで本当に相手のことを考えていない行動を続けていると、人間関係の希薄化に繋がることもあります。
だからこそ、もし自分の意思で仏教的なモノの見方に納得し、変わろうとされる方がいるなら、講演にも意味があると思えます。
 
――確かに効率化やマニュアル化だけでは、お金以外の働くモチベーションが減り、顧客や一緒に働く人たちとの関係が発展しづらい部分があります。その中で企業や人が成長していくためには、もう一度人と人との繋がりに注目するときなのかもしれません。
それでは、これからの僧侶に必要なものは何だと思われますか?

 
藤岡:法話においても講演においても仏教の専門用語だけでは通用しないので、誰にでもわかるように話すのが大切ですね。そのためには「全て」が必要だと思っています。あらゆる情報をキャッチするアンテナを張りつつ、仏教をその時代や人に即した言葉で伝えていく。大変なことですが、これからより一層大切になっていくと思います。
 
――ありがとうございました。
 
 

 
 

   

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掲載日: 2023.01.18

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