見守り、看取りだけじゃない。見送りも求められる時代にできること|株式会社ファイング 川上明広さん・恵美子さんインタビュー<後編>

「あってよかったね」と思ってもらえる葬儀社を目指して

 
――恵美子さんがファイングのお仕事を始めたきっかけを教えてください。
 
川上 恵美子さん(以下:恵美子さん):私は元々、旅行会社で添乗員の仕事をしていました。葬儀の仕事を主人が立ち上げて間もない頃に私たちは結婚し、葬儀の仕事に携わるようになりました。葬儀は女性も深く関わるものなので、女性目線できめ細かいサポートをしたいと考えました。
 
昔の葬儀社は、町の葬儀社として、故人の家族関係や思い出も丁寧にお聴きしながら葬儀を行なっていたと思います。それをするかどうかで、お葬式の質が変わります。弊社は地域に密着し、必要とされる葬儀社でありたいですね。毛嫌いされる職業ではなく、あってよかったね、と思っていただけるように、地域に開かれた行事を行っています。
 
たとえば、お菓子の掴み取りなど、他愛のないイベントでも続けることで、地域のファミリー層とのなじみができたり、近所の方との挨拶が増えたりします。やはり地域の方の理解が不可欠ですね。
 

(写真提供:株式会社ファイング)

 
――地域に密着されていますね。ファイングの事業の特色は何でしょうか?
 
恵美子さん:弊社の葬儀の特徴は、家族葬専門で金額が安いことと、ホームページでの告知を早くから行っていたため、一定の認知度があります。ホームページをご覧になった生活保護の窓口の方から連絡をいただき、ケアマネージャーさんや福祉の事務所の方から相談を受けるようになりました。一般的に葬儀社への相談は高くつきそう、会員にされそう、と心配されることが多いようです。
 
弊社の場合は価格を明示していたので、本当にこの金額でできるんですか、という問い合わせを多数いただきました。弊社は金銭的に困った方や、身寄りのない方からの依頼もお引き受けしておりましたので、医療・介護、福祉関係者とのつながりが増えていきました。
 
当時、岡山では珍しい終活カウンセラーという立場で福祉関係の方からのご相談に乗っていましたが、どうしても会社の仕事のためにやっているんでしょう、という目で見られがちでした。そこで、フェアな立場で悩みをお聞きするためには、ソーシャルワーカーの国家資格である社会福祉士の立場があった方がよいと感じ、取得しました。現状の福祉業界には、見守り、看取りのプロフェッショナルはいらっしゃるけれど、見送りのプロフェッショナルは少ないと感じておりましたので、私が社会福祉士としてそこを担おうと思いました。
 
現在はエンディングに特化した専門家として、エンディング・ソーシャルワーカーを名乗って活動をさせていただいております。法人としては、ファイングとは別に、営利目的では無い一般社団法人岡山スマイルライフ協会も立ち上げて活動しています。葬儀社よりも一般社団法人の方が相談しやすいと思います。まれに、結局ファイングさんが儲かるんでしょ?という見方をされることがありますが、精一杯させていただくことで誠意が伝わり、ありがたいことにクチコミで評判が広がっています。これからも必要とされ、頼られる存在でありたいですね。
 
――恵美子さんが受けられた主な相談内容を教えてください。
 
恵美子さん:終活セミナーは他社でも始まっていましたが、何でも相談できるサロンは岡山では珍しかったため、生活面の困りごとや、葬儀の後のお骨の納め方、相続などさまざまな問題をご相談いただきました。葬儀だけでなく、その前後の問題も解決する必要がありました。
 
特に、身寄りのないおひとりさまは、入院のときに身元引受人がいない場合にどうすればよいか。亡くなったときに誰が自分を送ってくれるのだろう、というような不安を抱えておられました。そこで、ケースに応じて死後事務委任の専門家や、利用できる制度への橋渡しをしてきました。
 
お子さまがいるものの現在疎遠だという方に対しては「もしあなたが倒れて警察から連絡が来て子どもさんに驚かれるよりは、いまのうちから相談したり準備しておいた方がよいのではないですか」とご説明すると、たしかにそれは困るねと納得されます。手続きを進めるだけでなく、心の整理にもなります。
 

(写真提供:株式会社ファイング)

 

より良い葬儀のために、お寺や僧侶ができることとは

   

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掲載日: 2021.11.10

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