本当に葬儀を簡素化してよいのか?|全日本葬祭業協同組合連合会 専務理事 松本勇輝さんインタビュー<後編>

 

葬儀社の理想はワンストップサービス

 
――今後、葬儀はどのように変化していくとお考えですか?
 
松本:今後は、葬儀を丁寧に行う方はより丁寧に、簡素化を選択する方はより簡素に、二極化していくと思います。亡くなられた方の気持ちを汲む方もいれば、もういいんじゃないか、という方もいます。知人の外国人に直葬の話をしたら、なぜ日本人はそんなに心無いことをするのかと驚かれました。経済的に費用をかけられない方もいらっしゃるかもしれませんが、費用をかけなくても思いを汲んでいく方法はあるはずです。
 
また、地域に密着している葬儀社は事前相談に力を入れるようになりましたが、今後はそれだけではなく、ワンストップサービスが求められています。これからますます高齢の単身世帯が増えていきますが、ひとりひとりを丁寧に送っていくためにサービスの拡充が必要です。故人の葬儀のみならず、ペット葬や不動産の処分など、メニューを増やし様々なニーズに対して相談に乗れる体制をつくるのです。
 
そこで一番大切なのは異業種とのパートナーシップです。あまり質がよくないところを紹介してしまうと信頼を失ってしまうので、信頼できるネットワークづくりが必須です。
 

国際葬儀連盟の日本大会(写真提供:全葬連)

 
――宗教の役割はなんでしょうか?
 
松本:宗教は生きていく上での心の支えですから、これからもっと求められていくようになると思います。伝統を踏まえつつ、変えないこと、変えていくことを見極めながら発信していくことが必要ではないでしょうか。押し付けではなく、時代に応じた発信が求められています。
 
そして、地域のために何ができるのか、という視点も重要だと思います。葬儀社も地域に密着し、地域貢献に力を入れていますが、僧侶の方とはまだまだ距離があるように思います。葬儀社サイドから、本当はもっと僧侶の方々と率直な話をしたいのだけど、という声を聞くことがあります。葬儀社だけでは担えないことがあると思いますので、僧侶の方々との連携が深まることで、もっと地域に貢献できると思います。
 
――ご自身の死生観を教えてください。
 
松本:いま、毎日の生活を、より大切にしながら過ごしています。日常がいかに恵まれているかということを感じています。普通は普通じゃないし、当たり前は当たり前じゃないと思います。私たちは平和に暮らしていることを忘れてしまいがちです。
 
日々に感謝できれば、もっと人を大切にできるし、もっと思いやりをもてるはずです。私の葬儀が行われるときには、縁があった人たちをたくさん呼んであたたかく見送ってほしいと思います。一人では生きていけませんし、寂しいですから、大勢で見送ってほしいものです。
 
――今後の展望をお聞かせください。
 
松本:一人ひとりのご遺族に寄り添う、心が温まる葬儀を広げていきたいと思います。リモート葬儀等の技術的なものに取り組むというよりは、丁寧で気持ちが伝わるという基本を大切に、よりよい葬儀を提供していけるよう、努めたいと思います。
 
――本日はありがとうございました。
 

プロフィール

 

 

松本勇輝さん
 
<経歴>
1973年生まれ49歳
2000年11月 経済産業大臣認可 全日本葬祭業協同組合連合会 入職
2008年5月 経済産業大臣認可 全日本葬祭業協同組合連合会 理事・事務局長就任
2011年10月~2012年2月
経済産業省安心と信頼のある「ライフエンディング・ステージ」創出に
向けた普及に関する研究会委員 就任
2012年5月 経済産業大臣認可 全日本葬祭業協同組合連合会 専務理事就任
2022年9月 現在理事として8期16年をむかえる。
   

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掲載日: 2022.10.27

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