元気なうちに親子で話し合うべきこと|お寺で知る終活講座第3回レポート

 

実例紹介/いざというとき困らないために

 
西木:これから、よくある実例をご紹介します。
 

【実例1】

一人暮らしのお父さんが交通事故で緊急搬送されたとき、家族への連絡先がわからないと、治療に必要な医療同意ができず困ることになります。連絡先のメモを財布などに入れておくことが大切です。
 

【実例2】

お母さんが認知症になったとしましょう。お母さんの老後資金がいくらあるのか知らないと、施設選びができません。お母さん名義の自宅を売却することも、認知症になるとできなくなります。それができるのは基本的には家庭裁判所が認めた成年後見人だけです。子どもに任せたいと思うなら、事前に任意後見契約公正証書を作成する必要があります。
 

【実例3】

父91歳が、要介護状態となりすでに8年が経過し、老後資金が尽きてきました。平均寿命ではなく、90歳以上生きることを想定してマネープランをつくる必要があります。老後のマネープランの秘訣は健康寿命を伸ばすことと、支出に余裕を持つことです。
 
子どもは親の貯金額を知らないため、親が旅行などに行っていると老後資金が不安になります。しかし無駄遣いしないでね、と言うと財産を狙っていると思われるのではないかと、なかなか言い出せません。親の方から、ちゃんと計画しているから心配ないよ、と子どもに伝えてあげることが大事です。
 

【実例4】

父が家で独りで死亡し、数日して発見されました。なぜもっと早く気付いてあげられなかったのか、悔やんでも悔やみきれません。高齢者の孤独死は、交通事故の死者数の10倍。なかなか減らないのは、まさか自分が今日亡くなるとは思っていないからです。
 
孤独死される方の年代で一番多いのは、60代。子どもがいても、近くに住んでいない場合は、警備会社の緊急通報システムを取り付けると安心です。
 

【実例5】

父が急逝した場合、葬儀の手配に困ります。誰にお知らせをしたらよいかわからない。納骨先もわからない。先祖に対する思いや、具体的な準備など、親子で死後の話を事前にしておいた方がよいのです。
 
多くの方がエンディングノートをお持ちですが、記入する方はほとんどいらっしゃいません。子どもと一緒に書くとよいと思います。親の老後について、子どもと意思疎通をはかることが大事です。頼れる子どもがいない場合は、専門家と死後事務委任契約を作成することが有効です。
 

【実例6】

父が死亡し、遺産分けについて、兄妹の意見が合わないことがあります。うちの子どもたちに限っては大丈夫、とみなさんおっしゃいますが、実際には違うことが大半です。親子間のトラブルの大半は財産分けに関するものです。
 
親が分け方を考え、あらかじめ遺言書を作成することが有効です。法律では、口頭ではなく文書に残すことで初めて本気であると判断されます。
 

 
以上の実例でお分かりのとおり、いざというとき困らないように、親子で終活に取り組むことが大切です。
病気になったら、認知症になったらどうするか。急病で搬送されて困らないか。亡くなった後の葬儀納骨等の手配はできているか。遺産分けで子どもがトラブルにならないように準備はできているか。親子でしっかり話し合いましょう。
人生100年時代、まだまだ人生は続きます。今、できることを悔いなくやって、自分らしい余生を過ごしましょう。
 

質疑応答の記録

   

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掲載日: 2022.01.06

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