「お坊さんの悩み相談」をLINEでも。|お寺のLINE活用術ー広島県崇興寺<後編>
悩み相談で求められる工夫とは
ーー枝廣さんにとっての経験や学びはどういったものがありますか?
枝廣:自分の成長という意味では、定期的に精神的に苦しい思いをされている人と話す機会をいただけているのが大きいですね。うつ病や統合失調症を患っている方とも向き合う機会もいただき、実際にお寺にそういう方がお参りに来られても冷静に対応できるようになりました。
悩んでいる方の話も聞いておかないと自身の見識が全く広がらないんですよね。これは多くの人と接する住職として問題ではないかと思うんです。悩み相談の活動を通して、いろいろな悩みを知ることが出来るとともに、それらに対する対応策も研鑽出来ているのではないかと思います。
――ご活動において、どういった難しさがありますか?
枝廣:時折、メッセージを大量に送ってこられる方がいることでしょうか。「辛い」や「死にたい」といった趣旨のメッセージが連続で届くこともあります。ハードルが低くなる分、連絡がしやすくなるのかもしれませんね。
電話での相談が終わった直後にメッセージが大量に届くこともあります。もちろん、苦しんでおられる方がいらっしゃるので問題と捉えているわけではありませんが、一方で大量のメッセージに対応しきれないという難しさは確かにありますね。
解決策としては、相談者の方には予め「拝見はしますがすべてのメッセージに対して返信は出来ないと思ってください」と申し上げるようにしています。
ーー悩み相談を行う上で、気をつけておられることはありますか?
枝廣:気をつけていることは3つあります
(2)予約制にする
(3)開始後30分は聞くことに徹する
です。
(1)に関しては一番大事だと思っていて、最初に相談を終える時間を明確に伝えておくことです。私の場合は90分を限度としています。こうしておかないと、相談者さんは話の途中で切られてしまったと感じ、傷ついてしまうんですよね。
(2)については、予約制にすることで、相談者さんの過度な依存を防ぐほか、前もって心の準備をすることができるので、結果的に相手のためにもなると考えています。
(3)については、私の経験則ではありますが、最初から私の意見を述べると、その後話しにくくしまう方もいらっしゃるんです。まずは30分くらい聞いていると、だんだん住職がどう思うかという質問がくるようになります。そうなったときに、私なりの意見や所感を述べるようにしています。
他には、弱っている人に正論を投げない、といったところでしょうか……。相談事に関しては「何を言うか」よりも「何を言わないか」のほうが大切だと感じています。
ーーこうした活動は、他の寺院でも実践できるでしょうか?
枝廣:もちろんできると思います。というより、悩み相談の窓口はもっと増えていいと思うんですよね。対応を間違えたら問題になるとか、忙しすぎて対応できないといった懸念も聞きますが、友達に悩み相談を聞くのと本質的には変わりないと思うんです。自信がなければ宗門内の研修制度を活用するのも一案でしょう。元来、僧侶の方はごく自然な形で悩み相談をしてこられたと思います。それをオンラインでも展開することで、よりお寺が開かれたものになっていくのではないでしょうか。
ーーありがとうございました。
編集後記
今回は、お寺のLINEの活用についてお伺いしました。
電話に代わる門信徒との連絡手段から悩みの相談まで、その活用法は多岐にわたることが窺えます。そんな可能性に溢れたツールを、無料で始められるのも魅力ではないでしょうか。現役世代を中心に、多くの人が日常的に使用しているLINE、将来のお寺にとって心強いツールになるのかもしれません。枝廣さん、ありがとうございました。