大地震を経験した寺院が取り組んだこととは|北海道法城寺 舛田那由他さん×黒田真吾さんインタビュー<前編>

 

老若男女が集うお寺だからこそ

 
――他には、どういったご活動を行われたのでしょうか?
 
舛田:託児所は主に子どもたちを対象にした活動でしたが、もちろん大人の方も被災されています。そこで、子どもたちの母親向けに「法城寺ママカフェ会」、男性の被災者向けには「坊主バー」など、さまざまな活動を行いました。
 

法城寺ママカフェ会の様子(画像提供:舛田さん)

 

「法城寺ママカフェ会」

子どもたちだけでなく、母親たちも同じく余震に怯えていました。そこで、母親同士が怖かったね、と思いを共有できる催しです。お寺と学校が近く、授業を受ける子どもを待つ時間を活用して実施しました。防災風呂敷講座も実施し、ふろしきが防災頭巾や簡易の靴といった、いろんな防災グッズになることをお伝えしました。
 

坊主バーの様子(画像提供:舛田さん)

 

「坊主バー」

被災後に、避難所や自宅でお酒は飲みづらいみたいなんですよね。そこで、お酒を交えつつ、私達僧侶が被災者の声を聞く機会として開催しました。主に男性の被災者の方にご参加いただきました。
 

食器おすそ分けマーケットの様子(画像提供:舛田さん)

 

「食器おすそ分けマーケット」

道内各地から支援物資として集まったお皿を無料でおすそ分けする取り組みです。地震で食器が割れてしまった家庭も多く、助かった方も多かったようです。
 
黒田:先ほどから驚きの連続ですが、被災した本人からは言い出しにくい、または自分でも気付いていない潜在的な困りごとやニーズを汲み取って、半歩先くらいの身近な支援を具現化されていることが本当にすごいと思います。大地震のあと、緊急期〜復旧期〜復興期にかけて、職場では事業を継続するために通常以上の負担がかかります。
 
疲弊している中でも、つらいとは言いにくい状況に置かれ、避難所や地域での活動も行うとしたらとても大変ですよね。特に責任ある立場の中高年男性はストレスを溜め込みやすかったり、新たなコミュニティに馴染めず孤立したり、アルコール依存や孤立死につながるケースもあると報告されています。
 
また、復興期以降にDVや虐待が増えることも指摘されています。半歩先回りして温かい支援ができるのは、日頃からお互いの顔や気持ちが分かる関係だからこそなのかもしれませんね。(*3)
 

前編のまとめ

  
今回は、法城寺住職の舛田さんに北海道胆振東部地震でのご経験談をお話しいただきました。地震発生の翌日から支援活動を始めておられることや、被災された方々の潜在的なニーズを上手く汲み取っている姿が印象的です。しかし、なぜこれだけ多くのご活動を即座に展開することができたのでしょうか?後編記事では、舛田さんのご活動を紐解きつつ、お寺の防災について考えます。
 

 

参考資料

 
(*1):震度とマグニチュード(気象庁 仙台管区気象台)
https://www.jma-net.go.jp/sendai/knowledge/kyouiku/eqvol/a_i_m_ws.pdf
岩手・宮城内陸地震(2008)の墓石転倒率 分布とその地質学的考察(石渡 明・小栗尚樹・原田佳和)
http://www.cneas.tohoku.ac.jp/labs/geo/10oldpage/ishiwata/IwateMiyagi08/IwateMiyagi08.htm

(*2):熊本地震を経験した「育児中の女性」へのアンケート報告書(熊本市男女共同参画センターはあもにい)
https://www.gender.go.jp/policy/saigai/pdf/jishin_ikuji_report.pdf

(*3):災害時に女性(男性)が直面する困難と男女共同参画による対策(浅野幸子)
https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/h24_kentoukai/3/pdf/1_1.pdf

   

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掲載日: 2023.01.16

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