死の話はタブー?家族には決して言えないこと|デスカフェ「Café Mortel」インタビュー<前編>

傍から見れば幸せそうでも、誰にも言えない悲しみを抱えていることがあります。
 
栃木県宇都宮市の知る人ぞ知るデスカフェ「Café Mortel(カフェ モルテル)」。
そこは、身近な人を亡くした悲しみを安心して吐き出せる場所です。
家族には語りづらいことも、他人同士だからこそ気兼ねなくわかちあえることがあります。
自分の秘めた想いを語り、他の体験者の話を聞くことによって、一歩を踏み出せることがあるといいます。今回は、Café Mortel代表の小口千英(こぐち ちえ)さんにお話を伺いました。
 

 
――Café Mortelを立ち上げられたのは、どういったきっかけでしょうか?
 
小口千英さん(以下:小口):私は普段、メンタルクリニックで看護師をしています。数年前に母親が調子を崩したので、これまでの経験を総動員してケアにあたりましたが、亡くなってしまいました。死後、家族とも母についてうまく話すことができず、悲しみを素直に表現できなかったので、ずっともやもやした気持ちを抱えていました。
そんなときにデスカフェの記事を見かけて、他人同士が死を語り合う場があることを知りました。栃木県にはデスカフェがなかったので、自分で立ち上げることにしたのです。母の一周忌を終えたころ、2018年2月から月1回開催するようになりました。
私と同じく身近な方を亡くされた方が集まり、分かち合いの会をやっています。全く知らない他人だから話せる、というのが大きいと思います。私も家族と母の話をするのはつらかったですから。相手の気持ちがわかっているからこそつらいんです。
 
――Café Mortelで大切にされていることは何ですか?
 
小口:デスカフェ立ち上げにあたっては名前と場所にこだわりました。デスカフェ立ち上げを職場の精神科医に相談したところ、デスカフェの「デス(死)」のイメージがあまりよくないので、フランス語にしてはどうかということで、Café Mortelになりました。たしかにイメージはやわらいだのですが、意味がわかりづらくなってしまったかもしれません。リピーターさんの意見も取り入れながら、Café Mortelは団体名とし、「デスカフェ~哀しみの分かち合い~」として開催しています。
 
また、外に話がもれない、安心安全な場所を確保することを大事にしています。活動場所として気になっていたカフェのオーナーが、カフェの売りとしている食材に幸せホルモン・セロトニンが多いことをアピールされていたので、メンタルケアに理解があるのではないかと思い相談したところ、快く場所を提供していただきました。14時〜16時の隙間時間を貸し切りで貸していただいて開催してきました。
コーヒーを飲みながら気軽に話せる理想的な環境だったのですが、閉店してしまったのです。わかちあいやグリーフの話は他人に聞かれたくない内容で、貸切の会場が望ましく、いまも場所探しに苦労しています。ころころ会場が変わるのはよくないので、いつも安心して語れる開催場所を確保したいですね。
 
――会の内容を教えてください。
 
小口:主に木曜の13時〜15時、2時間の枠で開催しています。はじめての方にはルールを説明します。私が会を始めた理由や、自身が母を亡くした体験を話します。そうすることで、みなさんも話しやすくなるかと思いますので。そして、参加者の方に順番に話していただきます。
なるべくリピーターさんから先に話していただき、1周するころにはあっという間に1時間くらい経っています。その後、フリートークで他の方の話を聞いて、思い出したことや気づいたことがあれば、手をあげて吐き出してもらいます。
言いっぱなし、聞きっぱなしで、自分の思ったことを素直に言いあいます。最後の10分で、1人ずつ感想を述べて、最後にアンケートを記入して終了という流れです。
 
 

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掲載日: 2021.01.15

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