不登校・引きこもり・貧困・DV…お寺にあるNPO法人が続けてきた支援のかたち

自分の居場所がない。
家庭にも、学校にも、会社にも。
 
今の状況から抜け出したい。逃げ出したい。
でも、どこへ?
 
NPO法人 こころのはな は、そんな気持ちを抱えたときに駆け込む、心の一時避難所です。心華寺(しんげじ)というお寺の敷地内にある施設には、長年多くの人々が訪ねてきました。その取り組みについて、引きこもり支援を主に担当する山科達規(やましな たつのり)さんに伺います。
 

ある日の新聞一面を飾った数字。そしてNPO法人こころのはなは設立した
 
ーーまずは設立の経緯についてお話いただけますか?
 
山科達規さん(以下:山科):ここの理事をしていた斯波 最誠(しばさいじょう)は心華寺の和尚でした。比叡山で修行をしてからこちらに来られて、もう30年ほどでしょうか、人々のお悩みを聞いたり、非行に走る少年少女や不登校の子どもたち、引きこもりの方々などの支援を続けてこられました。まさに寝食をともにして。ここから3年間高校に通った子もいました。
 
心華寺の活動として、そういった関わりを続けるなか、7〜8年ほど前に新聞の一面に載ったある記事をきっかけにNPO法人設立へと舵を切ることになったんです。それは、日本国内には39歳以下の不登校・引きこもりの人口が約70万人いるという報道でした。それほどの数字を目の当たりにして、お寺に相談しに来てもらうという方法だけでは、なかなか訪れにくいかもしれない。もっと多くの人に来てもらえるようにしようということで平成25年11月6日に、NPO法人こころのはなを立ち上げました。
 
ーーなるほど。「お寺に相談に行く」というのは、少しためらいを感じる方もおられるかもしれませんね。こころのはなの事業は現在多岐にわたりますが、最初はどのような事業から始められたんですか?
 
山科:最初は不登校と引きこもり事業だけでした。少しずつ利用者さんが増えて、啓発活動も続けるなかで、不登校・引きこもり以外にも社会のセーフティネットでは間に合わない人たちの存在を知り、また行政からの助成金制度も利用できるよとアドバイスをいただいたりして、では他の事業もやってみようということになったんです。
 
引きこもり女子会、男性のDV被害者受け入れ、子ども食堂…つねに誰かの居場所をつくってきた
 
山科:たとえば引きこもり女子会という活動があるのですが、これが始まったのは、「やってみませんか?」とお誘いをいただいたからです。引きこもり女子会は最初に東京で開催されました。それまで引きこもりの方々の交流会などを開催しても、参加してくださるのは8〜9割が男性でした。女性が入りにくい環境だったんですね。女性特有の悩みもあれば、男性恐怖症の方もおられます。そこで、女子会と銘打った交流会をしたら、100名近い参加者が集まったそうです。
 
そういった経緯で、私たちにも関西での開催の打診があり、今まで続いてきています。最初に参加者として引きこもり女子会に来られていた方で、今は運営側として手伝ってくださる方もおられます。引きこもり女子会だけではなく、子ども食堂や子どもの居場所のスタッフになってくださる方も。
 
ーーそれは素晴らしいですね。引きこもり女子会以外の交流会は開催されているんですか?
 
山科:はい。引きこもり茶話会や、家族会なども年に1回くらいですが開催しています。また、他団体ですが市民の会エスポワール京都さんとコラボして親の交流会をやらせてだいたり。
 
ーーなるほど。では、こころのはなに来られる方はどんな体験ができるのか、教えていただけますか?
 
山科:こころのはなでは、通所、寄宿、相談、訪問といった形態の関わり方を用意しています。施設内では、基本的にお好きに過ごしていただく感じになるのですが、希望があれば農業体験や蕎麦打ち、カラーヨーガ教室などのプログラムを受けることもできます。こちらでもメニューは用意するけれど、ここで何をして過ごすかは相談して決めます。嫌なことはしない、というのが基本です。
 
ーー寄宿というのは、とても特徴的な関わり方だと思うのですが、みなさんどのような過ごし方をされるんでしょうか?
 
山科:不登校や引きこもりの方々ですと、寄宿することで生活リズムを整えるという目的が第一にあります。できる限り午前中に起きて、昼間は好きなことをしたり、庭掃除を手伝ってもらったりしながら体力を使って、夜には疲れて寝てしまうというかたちに持っていくんです。
 
ーーまさに「生活をともにする」ということですね。
 
山科:日本では、子どもの約7人に1人が生活困窮者であると言われています。また、核家族で共働きとなると、ご両親が帰ってくるまで子どもは一人。遅くまでスマホを触ったり、孤食になってしまったりします。そういった問題が取り上げられはじめた頃、私たちも子ども食堂をスタートしました。まだ補助金もなにもなかった頃です。
 
最初は参加者0人です。それが口コミで広がって、10人20人と増えていきました。現在は月に2回開催しています。食堂のメニューは理事長の奥さまが中心に考えてくださって、近所の方がお手伝いに来てくださいます。会社が終わってから片付けだけでもと来てくださる方もいます。
 
運営資金に関しては、最初に京都府さんが補助金を出してくださって、つづいてオムロンさんやオリックスさんも補助金を出してくださるようになりました。最初は参加者0人だった取り組みが、そういう支援やボランティアの方々の協力によってどんどん参加者人数は増えていきました。最高だと90人くらい、現在は平均して40人くらいの方が毎月参加してくださいます。
 

ーーほかにはどういった取り組みを?
 
山科:3年ほど前に京都府さんからの打診で、1人親家庭の子どもを主な対象とした「子どもの居場所」という取り組みをはじめました。もちろん、1人親過程の子どもだけということではありません。子どもたちがふらっと立ち寄っては、宿題をしたり、悩み相談をしたり、料理をして食べたり、お風呂に入ったりと自由に過ごせる場所を提供するものです。これは年50日やっています。夏休みには宿泊体験ということで1泊2日を2回ほど。
 
また、不登校・引きこもりに対する取り組みを続けるなかで、DVの方の存在も浮かび上がってきました。そこでDV被害者の民間シェルターをやってみようという話になったんです。行政の認証を得て、京都府さんと契約を結んだ委託事業というかたちで進めています。明日からもお母さんと小学生・中学生のお子さんが来られる予定です。
 
DVシェルターをはじめてみて意外だったのは、男性被害者が想像以上に多いことでした。これまでの民間シェルターは、女性限定で、男性お断りのところが多かったんです。そういったシェルターに断られた男性被害者の方々が、うちに問い合わせをしてくださって「こころのはなさんは男性も受け入れてくれますか?」ということで「いいですよー」とお答えしてお越しになる。
 
ーーそうなんですね。受け皿がきちんと用意されているなら、男性もDV被害の声をあげることができるようになりますね。
 
ーーー
 
人には居場所が必要。そんな単純なことが、どうしても叶えられないときがある。自力で居場所を見つけることもできず、ただ苦しみのなかにいるひとのための一時避難所、それがNPO法人こころのはな。次回は、支援のあり方についてお話をうかがいます。
 
<インタビューのつづきはこちら>
第2回 「回復への道のり。引きこもりから抜け出すための生活とは?」
 
掲載日: 2020.08.06