私たちはここにいます。社会の支援から溢れ落ちる人のための居場所を用意して

不登校・引きこもり支援、引きこもり女子会、子ども食堂、子どもの居場所、DVシェルター……抜け出せない苦しみを抱えながらも、社会のセーフティーネットから漏れ落ちてしまうような人々の一時避難所、NPO法人こころのはな。活動の内容や、職員の山科さん自身の引きこもり経験についてお話をうかがってきたインタビュー。最終回は、今後の展望についてお聞きしました。
 
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第1回 「不登校・引きこもり・貧困・DV…お寺にあるNPO法人が続けてきた支援のかたち」
 

NPO法人こころのはな、今後の展望は「継続すること」
 
ーーNPO法人の運営で、一番大変なことはなんですか?
 
山科:それはもう、資金繰りと人材不足ですね。支出は常時あるのですが、収入の要である補助金は年に2回とかに限られているんです。事業によっては先払いの補助金もあるにはあるのですが。組織がここまで大きくなると、運転資金が必要だなと強く実感しています。
 
ーー山科さんのお給料も補助金から支払われるんですか? また、山科さん以外にもお給料をもらっている職員の方はおられるんですか?
 
山科:私のお給料は補助金からいただいています。お給料をもらっている職員は私だけです。
 
持ち出しになってしまうときは、理事長が短期借入金として入れてくださるんですけど、黒字のときはそれも自力でお返しできるのですが、赤字のときは寄付していただくこともあります。
 
ーーお寺でNPO法人をしているということで、なにかメリットはありますか?
 
山科:お寺の敷地内にあるとはいえ、もちろんNPO法人で宗教活動はしていません。和尚のお話を聞くくらいのことはありますが。メリットといえば、やはり場所にかかる費用が抑えられることだと思います。特に子ども食堂は、開設費もほとんどかかっていません。
 
ーー今後の運営についてはどうお考えですか?展望があれば教えてください。
 
山科:やはり資金不足と人材不足がありますので、これ以上の事業拡大は現時点では難しいです。ただ、やはりうちを必要としてくださるために、今ある事業をきちんと継続していくことが重要だと思っています。
 
社会にはセーフティーネットと言われるような制度や施設があります。公的なものも民間のものも。けれど、そのセーフティネットからも漏れ落ちてしまう人というのはいます。そういう方々を支えたいと思っているんです。
 
それにはやはり、きちんとした資金が必要です。そのためにも現在、認定NPOの申請に取り掛かろうとしています。
 
ーー認定になると、なにか違うのですか?
 
山科:大きく変わるということはありませんが、うちに寄付してくださった方の所得控除や、相続したお金を寄付いただいた場合は非課税になったりします。認定NPOになったからといって、寄付が増えるとは思っていませんが、寄付してくださる方のメリットが少しでも大きいようにと思って、決めました。
 

知っていてほしい。あなたたちを支援する方法は必ずあることを
 
ーー難しいお願いかもしれないのですが、不登校や引きこもりの方や、そのご家族に向けてメッセージや伝えたいことがあれば教えてください。
 
山科:みなさん置かれた状況が違うので、難しいですね。ただ、今の世の中、少しずつ支援団体も増えてきています。行政の相談窓口であまり良い対応をされなかったという話も聞くのですが、あきらめずに必要な支援を受けてほしいと思います。
 
親御さんは、ご自身が不登校や引きこもりの経験がない場合、子どもさんの状況に対して「なんで?」「どうしたら良いか全くわからない……」と戸惑ってしまうでしょう。そういうときは抱え込まずに、さまざまな支援制度を有効に活用してください。
 
そして、お子さんが不登校や引きこもりになったとき、学校が正しい、学校に行くことが正しい、とは思う必要ありません。今の教育にはかなり問題がありますし。学校以外にも居場所はあると知っておいてください。
 
ーー親子間でどう関わりあえば良いか、という問題はありますね。
 
山科:実家に引きこもっている方で、親子間の距離が狭すぎるというケースは多いです。たとえ自分の部屋にこもっていて、親と会話もそんなにないという場合でも、子どもは決してひとりになれていないんです。
 
親子のちょうど良い距離感を探ることが大事
 
ーーひとりになれた方が良いんですか?
 
山科:少なくとも私はそうでした。親が自分のことを気にしてくれていて、でも自分ではどうしようもできなくて、親に申し訳ないという気持ちでいっぱいでした。プレッシャーというか。
 
それが、あるとき両親が趣味で登山をはじめたんですよ。すると、「今日はこんなところに行ってきた」「今度はこんな山に登る予定だ」とか言って趣味を楽しむ親を見ていて、「あ、親は親で楽しんでるんや」と思ったら気が楽になりました。
 
親が親自身の人生を楽しんでいると、それを子どもはちゃんと見ていますよ。親には親の人生があって、子どもの人生は子どものもの。それを意識すると、ちょうど良い距離ができあがっていくのではないでしょうか。
 
私自身のこの体験は、親の交流会などでもお話しすることがあります。ある親御さんは私の話を参考に、引きこもっていてお風呂に入らない娘をひとり置いて、夫婦で旅行に出ることにしたそうなんです。すると、どんなに説得してもお風呂に入らなかった娘が、旅行中に入浴していたそうです。また旅行に行くとそのあいだにお風呂に入っている。これで全てが良くなるというわけではありませんが、大きな一歩ですよね。
 
ーーちなみに、現在山科さんは、寄宿の利用者さんがおられる期間は生活を共にされているとのことですが、そこにストレスを感じたりはしないんですか?
 
山科:第三者なので大丈夫です。利用者の方も、親や家族以外の第三者とコミュニケーションが取れるようになると好転の第一歩です。第三者とは、私であったり、同じような境遇の他者であったり。
 
それぞれの心にある華に気づいて
 

ーー事務とカラーヨーガ教室を担当されている泉玲子さんにもお話をうかがいました。
 
泉玲子さん(以下:泉):ここは心華寺というお寺です。心に華を持つお寺です。人にはそれぞれ心に華があります。その華をいかに咲かせていくのかということです。
 
ここに来る方々は一人ひとり違います。違っていて当たり前なのだということに気づき、自分自身の心のうちにある華に気づいてもらえる場所であればと思っています。知識や技術、能力ではなく、自分のいのちがあることに感謝したり、今日一日の食事があることに感謝すること、ありがとうとごめんなさいをきちんと言うことの方がここでは大切です。簡単なようで難しいことですが。
 
ーー基本的なことが、いちばん大切なんですね。
 
:そうですね。社会のなかでも、もっと大切にされていくべきことだと思います。
 
ーーー
 
社会のセーフティネットからこぼれ落ちてしまったとき、それでも自分を迎えてくれる居場所がある。とても優しく、力強い言葉です。
 
誰かの生きやすさは、他の誰かの生きやすさにもつながっていく。だからこそ、いま苦しんでいる人のための居場所をつくり、維持しつづけることが一番大事なのだと教えていただいた今回のインタビューでした。(終)
掲載日: 2020.08.12