アマでアマと自分を見つめ直す。|尼僧酒場 兵庫県尼崎市でスタート

etsuko
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2020年1月14日、お正月や成人式が終わり、世間は日常へと戻りつつある中、兵庫県尼崎市の杭瀬商店街の一角にある飲食店「好吃食堂(はおちーしょくどう)」(尼崎市杭瀬本町1丁目)で、「尼僧酒場」(にそうさかば)と題したイベントが行われました。
イベントの企画者は浄土真宗本願寺派僧侶の唐溪悦子(からたにえつこ)さん(27)。島根県出身の女性僧侶で、現在は尼崎を拠点にイベンターとしても活躍しておられます。
尼僧酒場とは、「女性僧侶(尼僧)」と「尼崎」をかけた名前で、女性僧侶である唐溪さんを中心に、集まった人で交流を深めるイベントです。
イベントが盛んに行われている尼崎での、女性僧侶による新たな取り組み。今回は、そんな尼僧酒場の様子をレポートします。
 
イベントは19時より始まり、最初の1時間は西正寺さんで行われたイベント「カリー寺」がきっかけで開発されたレトルトカレー「カリー寺@尼崎」とドリンクを囲みながらアイスブレイク。その後20時より唐溪さんのトークセッションが始まりました。
 
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お寺の一人娘として
 
島根県美郷町の寺院で、一人娘として生まれた唐溪さん。大学在学中、2011年に発生した東日本大震災のボランティアを行う中で、人との関わりの中で生まれるものが救いになると学んだそう。その経験を受け、当初卒業後は自然環境に関する仕事に進もうかと考えられていましたが、将来は寺院に戻ることを決意。ですが、すぐには実家へ戻らなかったそうです。
その理由は、社会経験を積まないと仏教を伝えられないのではないかという想いがあったからでした。
 
そして、唐溪さんは広島の葬儀社へと入社。僧侶が葬儀の仕事に携わることで、新しい繋がりや遺族が前をむいていける葬儀、多様化する葬儀の形を考えられるのではないかとの想いからでした。しかし、いち民間企業として利潤を追求する葬儀社と考えが一致せず、半年で退社されたそうです。
その後地域に密着し、フリーマガジンの発行やイベントの企画を行う印刷会社へと転職。
その後4年間勤め、そろそろ実家の寺院へ戻ろうかと考えていたときに転機が訪れます。
 
「イベントにたくさん人が来たら”成功”なのか?」
 
お寺でイベントなどを開催していこうと考え、過疎地域という場所の集客に悩んでいた唐溪さん。そんな中、とある方に指摘されたこの言葉は、彼女にとって大きな気づきであったといいます。
 
人口減少著しい地方の寺院にとっても、イベントや法要の集客は非常に難しいものでした。しかし、寺院本来の役割は「地域の拠点、その地域に住まう人のよりあいの場」と改めて問い直し、そもそも核家族化や仏教離れといった状況のもとではイベントを行っても、その先の関係構築に繋がらなければ意味がないと気づかれたそうです。
 
島根の実家の寺院では、すでに人間関係が構築されていたこともあり、急いでイベントを実施する必要はないのではないか。実家へ戻ることを取りやめ、現在はご縁あって尼崎を拠点に活動されています。
 
最近の取り組みとしては、「レトルトカリー寺」と題するイベントを企画。
昨年は成道会(お釈迦様がおさとりを開いた日)である12月8日に開催。このイベントは全国の寺院で同時に開催され、南は沖縄から北は北海道まで、多くの寺院がこの企画に協力されました。
他にも、「サイバー南無南無」という、浄土真宗のお経をテクノポップにアレンジした法要に関わっているそうです。
 
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尼僧としての悩み
 
その後、唐溪さんは今回のイベントである尼僧酒場についての想いを語られました。
 
「私を苦しめる原因は実は私だったという事を最近ひしひしと感じている」と語られる唐溪さん。固定概念やイメージにとらわれている自分がいるゆえに、自分がくるしんでいる、実は自分の思い込みが苦しみの原因であったと気づかれたそう。
「この苦しみを和らげるには、自分の状態に気づくこと」と唐溪さん。続けて、イベントを企画した背景として、女性僧侶としてのある悩みを話されました。
 
お寺の活動は様々で、その中でも葬儀や法要、住職同士の集まりといった「外の仕事」は主に男性が行い、寺院の掃除や接待、料理、事務といった「中の仕事」は主に女性という役割分担があったと振り返る唐溪さん。門徒さんにもこのイメージがついており、お寺の一人娘であった彼女は、周囲から「男の子だったらよかったのに」とか(母親に対して)「男の子は産まないのですか?」といったことを言われることも度々あったそう。
 
そう言われるなら、外の仕事も中の仕事も、両方できるようになったら「私」という存在が認められるようになるのではないかと思った彼女は、これまで出来なかったことにも挑戦したといいます。
 
様々なことに挑戦する中で、だんだん完璧主義へと走ってしまったそう。「うまくいかないときには、なんでできないのか、必要とされていないのかとひどく落ち込んだこともあります。」と唐溪さん。その後、自分を見つめ直すなかで、一つのサイクルを見つけたそうです。
 
A過去 心ない言葉をかけられて悲しい(背景)
B理由 できないと必要とされない(承認要求)
C回避 できるように努力する(完璧主義)
D現在 できないことがあると落ち込む

 
唐溪さんの場合は、B(理由)とC(回避)を繰り返し続けた結果、D(現在)へと陥ってしまったといいます。しかし、そもそもの原因を考えたことはなかったと振り返る彼女。改めて原因を振り返ってみると、自身にかけられた言葉は他人が無責任に発した一言で、必ずしも全てを完璧にこなす必要はないと気づいたそうです。
過去や背景を振り返ることで、自分を冷静に見つめ直すことが出来るのではないだろうか?それが尼僧酒場を開こうとしたきっかけです。
 
我が身を見つめ直して
 
最後に、今後の尼僧酒場の方針についても話されました。尼僧酒場は以下の4つを大切にしているといいます。
 
①自分を見つめ直す
②見つめ直すことで、いらないものを捨てる
③いろんな方たちの多様な価値観に触れる
④今思っていること、自分の考えや言葉を表現できる場

 
集まった参加者へ「この4つを意識しながら、残りの時間を過ごしてほしい」と投げかけました。
 
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唐溪さんのトークセッションが終わり、参加者同士での交流時間に入ります。決まったテーマで話し合いをするようなものではなく、それぞれわいわいと交流を楽しんでおられました。この日の参加者は13人で、それぞれ生い立ちや職業も様々。唐溪さんのほかにも女性僧侶の方や新聞記者の方、中には台湾から留学で来られた方もおりました。
 
お話の様子を伺ってみると、それぞれの職業の話や地域の話、中にはお葬式や仏教の話をされている方もいらっしゃいました。普段はあまりしない会話も、自然とうまれます。外は非常に寒い日でしたが、お店の中はとても暖かな空気に包まれていました。
 
女性僧侶特有とも言える、自身の経験から立ち上がった「尼僧酒場」。一度立ち止まり冷静に振り返ることで、またたくさんの人と関わることで少しでも自分の苦しみを和らげてほしいという想いが詰まったイベントではないでしょうか。今後は毎月1度のペースで定期的に開催する予定で、ゲストを呼んで対談をするといったことも検討されているそう。今後の展開が非常に楽しみです。
尼僧酒場の情報についてはこちらをご覧ください
 
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