別れのゆたかさを教えてくれる絵本

図1


『わすれられないおくりもの』
作・絵 スーザン・バーレイ
訳   小川 仁央

出版社 評論社


年をとったアナグマは知っていました。自分がもうそんなに遠くない未来に、みんなを残して死んでいかねばならないことを。しかし、からだがなくなっても、心はみんなと一緒にいるのだということもまた、アナグマは知っていたのでした。
アナグマとの別れに、悲しみ、落ち込む森のみんなですが、やがてアナグマが残してくれた目に見えないたからものに気づきます。

幼いころに祖父を亡くしました。
保育園の入園式の日がお葬式でした。
いつも私を膝にのせ、その長い髭を引っ張って遊んでも怒ることのなかった優しい祖父。動かなくなってしまったその姿は現実感がなくて、いつまでも不思議な気分がしていたことを覚えています。ただ、もう膝にのせてもらうことも、一緒に遊んでもらうこともできないのだということだけ、うっすらと感じていたように思います。

死や別れというもののまだ分からない、幼い私のなかには、ただ、祖父が私を見つめてくれていた優しい眼差しの記憶だけが残りました。
年齢に関わらず、誰しもいつかは大切な人たちと別れていかねばなりません。しかし、別れとは断絶ではなく、つながりであること。多くの先立っていった人々の残してくれた形のない豊かさのなかに私たちは生きているのだということを、そっと教えてくれる絵本です。
今はわからなくてもいい。きっと幼いころ読んでもらった物語の記憶が、これから様々な困難に出会っていかねばならない子どもたちの、「わすれられないおくりもの」になるはずです。



小島杏子(浄土真宗本願寺派僧侶)

2017.8/28 更新