『まぁいいか』と思える社会を目指して|平井さんインタビュー②

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仕事をしていて、ちょっとしたミスをしてしまい、「やっちゃったな⋯⋯」と萎縮したり、落ち込んだりすることってありませんか?
反対に、誰かのミスがわかったら、ちょっと怒ってしまったり、イライラしてしまったことは、多くの人が経験することかもしれません。
 
今回インタビューさせていただいた平井万紀子さんは、そんな社会に「まぁいいやん」っと笑顔で返せるような社会ができれば、より生きやすい社会になるのでは?と認知症の方と一緒に活動するまぁいいかcafeを企画されています。
 
認知症の方とともに活動する京都・まぁいいかcafe(注文をまちがえるリストランテ)。このイベントでの特別な時間を通して、認知症の有無にかかわらず社会全体に「まぁいいか」っと思えるあたたかな時間が少しずつ増えたら⋯⋯と。
前回に引き続き、京都・まぁいいかcafe(注文をまちがえるリストランテ)を企画されている、平井万紀子さんに、企画側・参加者・キャストの方の想いを聞いていきます。
 

<京都・まぁいいかcafe(注文をまちがえるリストランテ)平井万紀子さんインタビュー>
①日々使うスーパーマーケットに隠れていたアイディア。認知症と共に
②『まぁいいか』と思える社会を目指して(当記事)
③企画するってどういうこと?色んな人からのアドバイスで成り立つ
 
インタビュアー(以下、「イ」):実際に動いてくださる認知症の方を「キャスト」と呼ばれていますが、キャストの皆さんは実際にどんなことをされるのですか?
 
平井:認知症のキャストの方が全部やりますね。お水を持って行くことから、注文聞きに行くこと、メニュー表がテーブルになければ持って行くこと、お水を足しに行くのもそうだし、お皿を下げるのもそうだし。
 
イ:キャストになられる方は認知度がどれくらいなど決まっているのですか?
 
平井:あんまり、決めていません。キャストの一応の条件は、診断があるないに関わらず認知症とされている方でしょうか。
MCI(Mild Cognitive Impairment=MCI:軽度認知障害)っていうのがあるんですけど、認知症予備軍みたいな。その方も含めています。
それに、心身がある程度、良好である。具体的には自立歩行ができるとか、トイレ、排泄が自分でできるとか。コミュニケーションが取れる。あとは、家族もしくは一番近くの介護者の方が同行してくださるということです。
 
当日は、メディアも入ったりすることもあるので、メディアに映りたくない方は、うつされないように印をつけてシールを貼っておくとか、その辺の配慮はしています。
 
 
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社会にある課題は「ある人」「ない人」ではなく、社会受容の問題である。まぁいいかっていいよね。
 
 
イ:コミュニケーションが取れるっていうのも色々あると思うんですけど、トラブルとかはありますか?
 
平井:ありがたいことに今まではトラブルは一度もなかったです。
社会でいろんな課題がありますよね。この活動を始める以前、私自身「課題がある人」と「課題のない人」って自分の中で分けていたような気がします。でも、この活動を通して、「社会課題」は「社会受容の問題」でもあるってことを聞いたんですね。
 
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それを聞いた時にすごい素敵だなぁって思ったんです。課題のある人がどうのこうのっていうわけではなくて、受容する側が「まぁいいか」ってなったら、問題にならないことが多いんじゃないかなぁって思ったんです。
 
日本の学校教育では「こうしなければならない」や「こうであるべき」とか、英語で言うと”must”とか”have to”とか、そういう教育でガッチリしていると思います。それはそれでいいんだけど、なんか⋯⋯「まぁいいやん」っていう雰囲気がないですよね。確かに、犯罪とかは絶対に許されないんですけど。
 
受容する側が「ちょっと遅くてもまぁいいやん」とか、「ちょっと間違えちゃうかもしれんけど、まぁいいや」という感覚が少しでももてれば、あたたかい社会が広まっていくんじゃないかぁって思ったんですね。
 
いくつになっても、どんな人でも間違えたくはない!
                  
イ:逆に間違えるのを期待されるとかないですか?
 
平井:そうやって期待してくださる方もいらっしゃるかと思います。でも、こちらの姿勢としては、間違えることを前提にしていません。実はこれはすごい大事なんです。
キャストが間違えないように工夫をしています。というのも、私の母もですが、介護者のお友達も言ってるんですけど、本人は間違えたくないんですね。
「間違えることは恥ずかしいから、間違えたくない」その思いに寄り添いたいから、出しゃばりすぎずにスタッフがフォローするようにしてるんです。
 
いろんな方がご意見をくださいます。「失礼じゃないか!」や「見せびらかすのか?」とか。けど間違いを見せびらかすのではなく、参加側も一緒に受け入れていけるような雰囲気をつくりたいんです。
 
イ:毎回、たくさんの方がまぁいいかcafeに来ておられますが、どうしてここまで人気になったのでしょうか?
 
平井:実は私もわからなかったんですよ。
けど、先日あるイベントに参加してだんだんわかってきた気がします。
 
イ:まぁいいかcafeではない、イベントですか?
 
平井:この3月に、コミュニティデザインをされている山崎亮さんが総合ディレクターを務めた「生き方・介護・福祉のデザインを考える5日間『おい・おい・老い展』(外部リンク:https://korekara-pj.net/)」というのがありました。
 
いろんなプログラムがあったのですが、その1つに90歳くらいのおばあちゃんがインスタグラムに自分の面白い写真とかをアップされているのをご存知ですか?
 
イ:見たことあります!洗濯物に干されてるおばあさんとか。見たらつい笑っちゃうような面白いインスタのアカウントだったかと。
 
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平井:ゲストが90歳くらいのそのおばあさんと写真家の息子さんと山崎亮さんの3人で対談がありました。その時におばあさんのコメントとか聞いて、ものすごくあったかい気持ちになったんですよ。すごい可愛なぁとか、あったかいなぁ。ほっとするというか、そんな気持ちになったんですね。
 
だから、まぁいいかcafeに来てくださる方もきっとそんな感じなのかなぁと。今の世の中、失敗が許されなかったり、ちゃんとやらへんかったら怒られたりとか、一生懸命やってるのに評価されへんとか、多分みんな社会で色々一生懸命生きているのにも関わらず、しんどい思いしてる人が多いんじゃないかな。
 
それで、なんかわからへんけど、ここに来たらほっこりする。そんな空間に、なれてるのかぁって。それだったら本当に嬉しいなって、思いました。
 
介護者、支援者が本当にワクワク、楽しんでいける社会を
             
イ:キャストと介護者によって改めて思うことってありますか?
 
平井:介護者がめちゃめちゃ嬉しい企画ですね。働いている姿も嬉しいですし、横にも繋がりが生まれました。
母の姿、父の姿を見て、喜んでるだけじゃなくて、仲間もできました。
 
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当人は、すぐに忘れる方もいるんですけど、少し言えば思い出す方もいるんですね。「この間、働いたやーん、お母さん!」「お母さんどうやった?」って聞いてもらったら、「あーあれかーたのしかったわー。できへんおもてたけど、できたわ。またできるんかぁ」っていう会話ができる。
 
家での積極的な会話が増えているっていうのがとってもおっきいかなぁと思うんですね。その場だけで見て嬉しいって思うのは本当にその場限りなんですけど、これをきっかけにして、希望がちょっと見れたのと、家庭でそういう会話が増えたのはおっきいかなぁと思います。
 
イ:確かに、何にもなくて話しましょう!よりも、話題があると話しやすくなりますね。
 
平井:認知症とかの介護をする側って、自己犠牲とか、マイナスの面をとらえられることがまだまだ強いです。もちろん、大変なことはたくさんあります。
 
けど、そこが私のような介護者が発信することによって、介護者になったからこそ、こんな出会いがあって、こんなところに行かしてもらって、こんな人と出会ったよ!っていう。それがもし仕事化していければ介護者、支援者、寄り添ってる人が本当にワクワクできるようなことができたらいいなぁっと思ってるのが、目標なんですよ。
 
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注文をまちがえるリストランテ、平井さんご自身の経験から、お母様と一緒に働きたい、お母様の想いをくみとりたい!そんな一生懸命で真剣な思いが私たちにも響いてきました。
認知症になっても、間違えたくはない。そう言われた時に、企画する側の想い、参加する側の想い、キャストとして働かれる認知症の方の想いが、合わさったような気がしました。
次回は、企画を実施に至るやり方や経緯を聞いていきます!
 
 

<京都・まぁいいかcafe(注文をまちがえるリストランテ)平井万紀子さんインタビュー>
①日々使うスーパーマーケットに隠れていたアイディア。認知症と共に
②『まぁいいか』と思える社会を目指して(当記事)
③企画するってどういうこと?色んな人からのアドバイスで成り立つ

 

掲載日: 2020.01.16