いま話題の「宿坊」って何だ?|宿坊研究会 堀内克彦さんにインタビュー①

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みなさまは「宿坊」(しゅくぼう)と呼ばれる施設をご存じでしょうか?宿坊とは、主に寺院や神社に併設されている、僧侶や参拝者のために用意された施設のことです。寺院の衰退に伴って、宿坊も衰退の傾向にありましたが、近年はこの宿坊が再び注目されています。
そして、その宿坊について研究をされている方がいらっしゃいます。「人生を変える寺社巡り」がテーマの寺社旅研究家、堀内克彦さん(通称:ほーりーさん)。学生時代に宿泊した宿坊に魅力を感じ、以来宿坊についての研究を現在も続けておられます。
今回はそんな堀内さんに、宿坊についての魅力や寺院の持つ魅力、課題についてインタビューしました。全3回にわたって、宿坊や仏教、僧侶についてあれこれとお尋ねします。第1回では、「宿坊とは何か」についてお尋ねしました。

 
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きっかけはサークルでのお寺巡り
 
ーー宿坊について興味を持ったきっかけや宿坊研究会を立ち上げられた経緯をお聞かせください
 
堀内さん(以下:堀内):きっかけは、大学の時に古都愛好会という旅行サークルに入ったことでした。そのサークルは京都や飛騨高山、金沢、鎌倉といった古い街並みを歩くのが主な活動で、最初はお寺や神社の建築に興味がありました。そのうちに、京都市にある妙心寺の大心院宿坊にサークル仲間と宿泊しまして、それがすごく面白かったんです。
 
image4大学時代の堀内さん(写真提供:堀内さん)
 
ーー泊まる体験がきっかけだったのですね
 
堀内:私はお寺で生まれ育ったわけではないので、お寺に泊まったことはとても新鮮な体験でした。そのあと宿坊に興味を持ち、家に帰ってから調べたのですが、宿坊の情報が当時はありませんでした。いや、情報は一応あったのですが、断片的でぐちゃぐちゃといった感じでした。なので、個人的なメモの代わりとしてwebサイトを立ち上げたら、色々な人に見ていただいて、宿坊に関する情報ももらいました。そこから、座禅や精進料理の情報も掲載してほしいというリクエストがあったので、お寺での体験情報全般も掲載して、今は宿坊やお寺での体験のポータルサイトといった位置付けになっています。
 
その後は単に情報発信だけじゃ面白くないので、寺社巡りのサークルを作り、宿坊の人が集まるサミット開催、そうしていると本の執筆依頼や、婚活イベントを開くご縁も頂きました。お寺の方との仕事が増え、思ってもない方向に発展した感じです。(笑)
 
大学時代に所属されていたサークル活動がきっかけで宿坊に興味を持たれた堀内さん。webサイトの設立は2000年だそうで、20年にわたって宿坊を研究し続けておられます。続けて、宿坊とはどのような施設なのかをお尋ねしました。
 
多種多様な宿坊のあり方
 
ーー宿坊とはどのような施設なのでしょうか?
 
堀内:ざっくりと、宿坊はお寺と神社の宿泊施設と定義しています。体験できることは座禅、写経、精進料理とさまざまですね。その中でも朝のお勤めは良い機会です。座禅や写経はどちらかというと宿泊者のために用意されているものですが、お勤めは日常的なお寺の生活ですよね。そういうものに触れる意味では良い体験ではと思っています。掃除はあまり用意されているところは少ないですね。修行体験の一環で作務(お寺の維持管理のこと)がセットに入っているところもありますが。
食事は、素泊まりも食事付きもあります。ですが、基本的には宿泊がメインです。そこからは食事や体験などと、各寺院の特徴が加えられていく感じでしょうか。
 
他にも、変わったメニューとして、念珠づくり、山岳修行、滝行などを行っているところもありますね。四国ではお遍路さんが有名ですが、私はそのために用意されている「遍路宿(へんろやど)」に泊まったこともあります。浄土真宗だと親鸞聖人の教えの講座などもありました。
 
image2座禅体験の様子(写真提供:堀内さん)
 
ーーどういう方が宿坊に行かれるのでしょうか?
 
堀内:元々は、「講」*1などの信仰団体や参拝者が泊まることが多かったですね。それらが時代の流れで激減しており、今はどちらかというとお寺とのご縁の薄かった人が多いです。多くは興味や変わった体験をしてみたい、座禅をしたい、住職と話したいといったところでしょうか。
少数派ではありますが、悩みがあって(住職や僧侶に)人生相談にのって欲しい、そこまで深刻でもないけど、人生の岐路で自分を見つめる体験に行きたいといったニーズもあります。そしてここ数年は海外の人が特に多くなっています。利用客は急に伸びてきており、訪日旅行者にも注目を浴び始めています。
その背景には日本文化に触れてみたい、奥地まで分け入っていく人がいます。国内からも海外からも基本は、観光や旅行の延長であることが多いですね。日本人客と外国人客の比率は、言語対応ができるかどうかでわかれています。外国語が話せるスタッフがいる宿坊に海外の人は多く集まっているようです。
 
*1 講・・・同一の信仰をもつ人々の集まりのこと
 
image5宿坊の一室の様子(写真提供:堀内さん)
 
ーー海外の人が宗教体験のニーズが強いのですか?
 
堀内:海外の人は、仏教に詳しい人はすごく細かく調べられていますね。特に禅の思想にものすごく精通しています。もちろん仏教全般を学んでいる人もいらっしゃいますね。なので、そのような方や知識欲のある方が宿坊に泊まっていかれるようです。
 
ーー宿坊はどれくらいの価格で泊まれるのでしょうか?
 
堀内:価格はもっとも多いのが1泊1万円前後ですね。安い宿坊ですと2~3千円のもあります。一方で高いのは10万円ぐらいでしょうか。ここ最近は価格上昇の傾向がありますね。
昔ながらの宿坊は人気があり、値段が上がっているようです。2~3万円程度の宿泊料がかかる宿坊も増えていますね。戦略によって値段は変わるので、海外向けと日本人向けで価格設定が異なってきています。
 
第1回では、「宿坊研究会」立ち上げの経緯と、宿坊の現状について取り上げました。もともとは宿坊情報の備忘録的な位置付けでwebサイトを立ち上げられていたのが興味深いです。また、寺社巡りのサークルや宿坊の経営者やスタッフを集めたサミットも非常に面白そうな内容です。
宿坊の現状についても、非常に詳細に教えていただきました。長い間研究をされていたことがインタビューからもうかがえます。
日本人客と外国人客ともに、宿坊に対して求めているものは「非日常」でしょうか。日本人にとってはなかなかご縁が薄くなってしまった今だからこそ、宿坊に魅力が見出されたのかもしれません。そして、外国人にとってはインバウンド施策が追い風となり、日本に訪れやすくなったことが、宿坊が注目される大きな理由でしょう。
次回は、宿坊の経営や立ち上げといった裏側について、堀内さんにお尋ねしました。(近日公開予定です)

 
Profile

 

宿坊研究会 堀内克彦(ほーりー)
「人生を変える寺社巡り」がテーマの寺社旅研究家。株式会社寺社旅・代表取締役社長。
宿坊研究会(https://shukuken.com/)を運営し、参加者1000人を越える寺社旅サークルの主宰や複数企業の顧問、仏前結婚式盛り上げ企画、お寺の漫画図書館、寺社好き男女の縁結び企画「寺社コン」などをプロデュース。
宿坊研究会はAll Aboutの「スーパーおすすめサイト大賞」で審査員特別賞を受賞。日蓮宗のお寺活用アイディアコンペでは、様々な寺社を活性化させた実績を買われて審査員を務める。また西本願寺・東本願寺・増上寺・池上本門寺などの各宗派本山、北海道から九州までのお寺や様々な企業、団体などでも講演を実施。寺院コンサルタントとしても活動中。
著書に『宿坊に泊まる(小学館)』『お寺に泊まろう(ブックマン社)』『こころ美しく京のお寺で修行体験(淡交社)』『恋に効く! えんむすびお守りと名所(山と溪谷社)』など。
掲載日: 2020.01.30