子どもの心を育てる −大下充億(おおしたあつお)さんのインタビュー−

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大下充億(おおした あつお)山口県平生町

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こびとのおうちえん 代表 自然菓子工房「欧舌(おおした)」 代表

NTTを脱サラ後、国際NGOの手伝いで1年間滞在したケニアで、自給自足を中心とした身土不二の暮らしに触れ、帰国後、家業の菓子店を安全な食材を使った「自然菓子工房 欧舌」にリニューアル。「半農半菓」というライフスタイルを実践しながら暮らしている。2009年、里山の自然の中で思い思いに遊ぶ「こびとのおうちえん」を開設。2016年からはフリースクール「てらこや」を立ち上げ、共に育ちあうことのできる新たな居場所づくりを模索している。

 

「こびとのおうちえん」・「てらこや」での暮らしとその特徴

 

山口県平生町で「こびとのおうちえん」という保育施設と、小学生を対象にした、子どもたちの主体性を尊重する場である「てらこや」を運営されている大下さんにインタビューさせていただきました。初回は、両施設の概要と特徴を聞かせていただきました。この施設では子どもたちはどのように暮らし、その暮らしからどんなことを学ぶのか。一般的な幼稚園や小学校のイメージとは少し違ったユニークな施設を紹介いたします。

 

 ———「こびとのおうちえん」とはどういった施設なんですか?

 

2009年に立ち上げました。毎日9:30−15:00まで開けていて、3−5歳児を対象に19名の子どもがいます。1日の流れとしては、まず朝のミーティングで、子どもたち自身がその日のやりたいことを決めて、それを発表して、みんなでその発表を聴きあって、その日1日がスタートします。その後、歌を歌ったり踊ったりして、その日決めた自分のやりたいことをして過ごします。そして昼食を食べて、その続きや、別のことをして、2時半からおやつを食べて、本を読んで、今日の振り返りをして1日が終わります。

自然の中にあるので山であったり、川や海、いろんなところに出かけます。だいたいスタッフが3名いるので、子どもたちの行きたいフィールドにスタッフが1名ついて行ってます。

 

———園児は具体的にどのように暮らしているのですか?

 

5分ほど歩いたら海なんです。だから夏は週2回くらい海に泳ぎに行くし、川にも行きます。それと、近くの用水路を堰き止めて、プールにしてるんです。だから夏場はほとんど毎日泳いで遊んでますね。秋になったら山に入って、季節のものを食べたりします。四季折々のいろんなものを食べて、自然を感じながら、思い思いに過ごすのが基本的なここでの暮らしです。

 

特徴としては、暮らしが一つセットになっています。調理場も、隔たれた部屋があるわけではなく、子ども達の暮らすスペースの中にあります。料理を作るところも見ることができて、手伝いたかったら一緒に手伝ってもらいます。家でお母さんが料理して、それを手伝ったり、見たりしているのと、同じ感覚ですね。

畑も作っているので、育てること、収穫すること、料理すること、食べること、そして片付けることも含めて一つのサイクルを子ども達と一緒に体験するんです。食べることイコール生きること、という一つの循環を頭で教えるとかじゃなくて、それが日々の暮らしの中にある。それを目にしながら、関わりながら、自然と自分たちは一体なんだ、ということが、心の中で奥深くに染み込んでいってくれたらいいな、と思っています。

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———「てらこや」についても教えてください。

 

2016年に開設した施設です。毎日9:00−15:30まで開けていて、小学生を対象に開いています。大まかな内容は「こびとのおうちえん」と同じですが、午前中に算数や国語といったような学校の勉強をする時間を取っています。その後で、今日やりたいことを自分たちで決めて、それを実現していくという流れです。小学生になると、その日1日では終わらず、何日もかけていろいろと調べて、それを模索して、自分たちで実現していく術を学んでいきます。

 

———フリースクールとして運営されているんですか?

 

そうですね。でも一般的なフリースクールのイメージのような、何かの理由で学校にいけなくなったという子どもを対象にしているわけではありません。親も子も、「こんな過ごし方、こんな環境の中で小学生としての日々を過ごしたい」という積極的な思いから来てもらっています。今の小学校ではない形で、もっと自由に、もっと自分主体に、自分の心の中に出てくるものを掴みながら、自然環境や他者と向き合い続ける中で自分の中で学びを作っていきます。

 
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———子どもたちの「やりたいこと」って例えばどんなことがありますか?

 

 この前の冬には、秘密基地作りを何ヶ月もかけて実現しました。その中で様々な人間ドラマもあって、完成したときには本当に感動しました。女の子たちはいま百人一首に燃えています。この間近くの小学校のかるたクラブまで道場破りに行きました(笑)。この冬にはかるた大会に出たんですけど、惨敗したので、来年に向けてすごく特訓しています。

 

 

全4回にわたりこびとのおうちえん大下さんのインタビューを掲載しています。

 

【大下さんのインタビィー連載(全4回)】

第2回「ありのままを認められる子育て」(http://tarikihongwan.net/?p=9896

第3回「ケニアの村でみつけた幸せのかたち」(http://tarikihongwan.net/?p=9903

第4回「体験が満たされた心を育てる」(http://tarikihongwan.net/?p=9910

 

インタビュアー(黒瀬英世)のプロフィール

1990年、山口県宇部市・西秀寺の後継として生まれる。

龍谷大学大学院実践真宗学研究科で、学生僧侶が中心となって、子ども対象に仏教の教えを伝えるヒーローショー、「Jissenjya Project」の活動をする。

(詳しくは「他力本願.net」http://tarikihongwan.net/soucial_network/5394.html)大学院修了後、実家に戻り、法務(お寺のお仕事)とともに「めぐみ保育園」で、学童指導員として子どもたちに振り回されながら日々奮闘中。子育て・教育について様々な意見を持つ人々にインタビューし、その意見を自らの教育論を探るヒントにしようとこの企画を立てた。


2018.1/10 更新