暖かな空間で音楽を。 お寺で音楽会の取り組み|一念寺(京都市)③

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lifesongs1一念寺本堂での音楽会の様子(LIFE SONGSイベント)
 
これまで、2回にわたって京都市の一念寺さんの取り組みを取りあげました。今回は、数あるイベントの中でも特に多く行われているという、本堂を活用した音楽イベントについて紹介します。お寺での音楽コンサートは、最近では多くのお寺で取り組まれています。しかし、騒音や準備が大変というイメージが先行し、始めたくても始められないというお寺もあるのでは無いでしょうか。主催者との調整は?告知の方法は?騒音の問題は? 一念寺の谷治暁雲住職にそのノウハウお尋ねしました。
 
一念寺で行われる音楽会
 
一念寺さんでは、多くの音楽会をされています。もともと音楽が好きで、自身も楽器を演奏した経験を持つ谷治住職。ニューヨークの有名な教会で聞いたゴスペルを通して、現地の音楽や芸術に対する真剣さを目の当たりにしたといいます。
そこで、お寺でも質の高い音楽会をできないかと検討していたところ、京都自死自殺相談センターSottoのご縁で、ドイツから平和活動の一環でこられた方による音楽会が実現したといいます。「すごくうまかった」と当時の様子を振り返る谷治住職。今後も、質の高い音楽会をしたいと意気込んでいます。
お寺で音楽会を行うにあたっては、どのような工夫が必要なのでしょうか。
 
taniji1(説明をする谷治住職)
 
お寺で音楽会を行うメリットとは?
 
一般のホールで行う音楽会と比べて、一番違う点は「ご本尊があること」ではないでしょうか。谷治住職は「仏様がいらっしゃることで、なんとなく空気が違ってくるんです。やっぱりお寺でやってるっていう事がホールでやるのとまた違ったぬくもりを生み出すのではないでしょうか」と話されました。また、主催者や演奏者の方もお寺で行うのは(良い意味で)空気感が違うとコメントされることが多いといいます。 先日、兵庫県尼崎市の西正寺さんをフィールドにして行われた研究(記事「お寺の研究をして、まちの見え方が変わったハナシ(前編)」)でも触れられていましたが、参加者や演奏者にとっては「なんとなく」違った空間であることが大きなポイントとなるようです。
 
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住職に聞く、工夫とは?
 
・打ち合わせはていねいに
「陰ながらサポートはしないといけないです」とおっしゃる谷治住職。音楽会を行う前の打ち合わせでは、なるべく主催者や演奏者の感性や意向を尊重して話し合うとのことです。ただ、全て主催者の意思に従うのではなく、楽器や座席の配置を助言をするようにしているそう。
また、コンセントや照明の位置、どのような設備があるのかを事前に打ち合わせることで、後々のトラブルが起こりにくくなります。
 
・告知の王道はビラ配り?
打ち合わせの中で、最近ではどのようにすれば参加者が多く集まるのかという相談を受けることも多いという谷治住職。これは音楽会以外のイベントにも当てはまりますが、その回答は「ビラまきです」と至ってシンプル。
最近では、webやSNSと様々な情報発信の手段がありますが、「やっぱりお寺の近所のポストにビラを入れるという地道な方法が一番効果が大きいです」と話されました。最近では、比較的安価でビラを用意できることもあり、時間と労力があれば最初に検討するべき方法かもしれません。
また、法要や法座の時に門徒の方々に告知を行うのも有効とのこと。ただ、告知するイベントがあまりに多いと相手にしつこい印象を与えることも。この点はイベントの内容や量によって決まってくるのではないでしょうか。
 
・お荘厳を綺麗に!
お寺で音楽会を行う上で大きなメリットとなるご本尊。だからこそ、お荘厳には特に気を使っているそうです。綺麗な仏花をお供えし、お香も炊くことで多くの人に、「聖なる空間」であると認識してもらえます。一般的なホールではなく、お寺で行うからこそ、そのかなめであるお荘厳には特に気をつける必要があります。
 
気をつけたいこと
 
・ハプニングに備えて
音楽会で使用する楽器は、特に電子機器だと故障や不具合が起こる恐れがあります。それが演奏中だと大変です。そうした万が一の時のために、一念寺さんでは可能な範囲で予備の機器を用意しているそう。マイクやピアノの他、オーディオコードの変換プラグといったものも揃えてあります。また、事前の打ち合わせの時に予備があることを伝えておくと、演奏者も安心して音楽会を進めることができます。
もちろんこれはかつて音楽をされていた谷治住職だからこそ成し得たことかもしれません。しかし、継続して音楽会を続けるということであれば、お寺側で予備を用意しておくと心強いですね。
 
・騒音は大丈夫?
音楽会を行う上で、やはり気になるのは騒音ではないでしょうか。都市部や住宅地にあるお寺では特に気を遣うところでしょう。これについて谷治住職は「大丈夫ですね。夜の9時ぐらいまでは」とあっさり。楽器を使った演奏の途中に外に出ても、気になるほどではなかったとのことでした。
ただし、これは一念寺さんの場合で、どれほどの音が漏れるのかについては、やはり事前に確認しておく必要があります。そして、大丈夫である場合は主催者や演奏者にきちんと「大丈夫です」と打ち合わせの段階で伝えることも大切です。事前に伝えることが、相手に大きな安心感を与えるのではないでしょうか。
 
 
一念寺 谷治暁雲住職の声
 
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お寺での音楽会は、ご本尊(仏さま)がいらっしゃるというところが一般的なホールと違う点です。音楽会に来られた方も、きちんとしたお荘厳やここちよいお香の香りから、ホールでは味わえないお寺の「ぬくもり」を感じておられます。
お寺という「聖なる空間」で行うというところが、お寺の強みであると言いますか、ホールが真似をできないところではないかと思います。
 
 
これまで3回にわたって、京都の一念寺さんの取り組みを紹介しました。音楽会からペットの譲渡会と、多彩なジャンルのイベントを行なっておりますが、共通することは寺院の関係者が「陰ながらサポートをする」ということです。
イベントの主な企画や進行は主催者に任せつつ、主催者が必要としているものは何かを考え、場合によっては提案も行う。主催者と住職や寺院の関係者がきちんとコミュニケーションを取ることで、円滑なイベント運営が実現するのではないでしょうか。