お浄土では、不協和音もハーモニー?|奥田×及川「時のかけら」を語る③

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LIFE SONGSオリジナルソング「時のかけら」、完成記念対談企画。第3回となる今回は、
「時のかけら」のタイトルや歌詞に込められた想いについてお尋ねしました。ところが、「歌詞についてはあまり語りたくない」と奥田さん。その背景には音楽アーティストは、相手に伝わるように歌詞を書くべきで、アーティスト自身が想いをあえて語るようなことはあまりしないという事情があるそうです。ですが、今回は「ナイショの話」として特別に少しだけ教えていただきました。

 
Profile
 

奥田章吾(おくだしょうご 以下:奥田)北海道出身。2019年まで龍谷大学実践真宗学研究科に在籍しながら「LIFE SONGS」の活動を実施。現在は西本願寺の勤式(ごんしき)指導所で、勤式作法を学ぶ。サッカーと音楽が好き。あだ名は「おくちゃん」。

 

及川良生(おいかわよしき 以下:及川)北海道出身大阪育ち。2016年龍谷大学卒。現在は音楽活動も若干しつつ会社員として日々を送る。奥田とは学部時代(大学時代)に在籍していたアコースティックギターサークルで知り合い、同じ北海道出身ということもあり、良き音楽仲間となる。札幌龍谷高校出身で、恩徳讃も歌える。あだ名は「おいちょ」。

 

インタビュアー(以下:イ)兵庫県出身。2019年まで龍谷大学実践真宗学研究科に在籍。写真・動画撮影や編集を得意とし、「時のかけら」のCDやオリジナルMVの制作に協力した。楽器を演奏した経験は無い。
 
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イ:歌詞の中で、一番大切にしているフレーズというのはあるのでしょうか?
 
奥田:LIFE SONGSを始めた背景には、「いかに仏教、浄土真宗のみ教えを、お寺や浄土真宗とご縁のなかった人に伝えられるか」という問いがありました。色々と考えて、お寺で音楽ライブをすれば、いろんな人が来てくれるんじゃないか?と思いついたのです。
 
音楽ライブでは、堅苦しい話ではなくて、音楽を通して普段の日常ではあまり考えない命や死、仏教といったテーマにちょっとでも触れるきっかけを作って、そこからまた違うご縁に繋がっていくと良いのではと思って始めたんですね。
 
イ:LIFE SONGSのコンセプトですね
 
奥田:オリジナルソングを作る時も色々な意見を頂きました。例えば仏教讃歌を作って欲しいとかいう意見ももちろんあったし、浄土真宗では有名なシンガーソングライターの三浦明利さんや二階堂和美さんのように、自ら作曲して音楽活動をする方法や、テクノ法要のような正信偈にメロディをつけてアレンジするという意見もありましたね。
 
どれも貴重な意見でしたが、LIFE SONGSはあくまでも「一般の方にもわかりやすく伝わるようにする」というのがコンセプトなので、あまり仏教用語を使わない仏教讃歌を作ろうと考えていました。なので、仏教色を出さないけど、命や出会いをテーマにした歌詞にしたいと思っていて、及川さんはそこをうまく汲み取ってくれて歌詞にしてくれましたね。
 
イ:となると、歌詞ではなく「時のかけら」のコンセプト自体に仏教的な要素があったと?
 
奥田:そうですね。唯一、わかりやすい形で仏教色が出ている箇所があるとすれば、歌詞に「清風」っていう言葉を入れていることですね。この「清風」という言葉が仏教と音楽を考える上ですごく重要なことだと思っています。
 
宗教と音楽はかなり密接な関係を持っていて、仏教音楽も密接な関係を持っていたってことが明らかになっています。浄土真宗が依りどころとしている『仏説無量寿経』というお経に「清風」(しょうふう)という言葉が書かれています。「清風」というのはお浄土に吹く清らかな風のことです。その風が吹くと、木になっている実が揺れて音が鳴ります。その音を聞いた人はすごく清らかな思いになり、仏法を聞いて喜ぶようになると伝えられている、すごく尊い風なんですね。
 
そして、僕がすごく感動したのは、この清らかな風(清風)が吹くときは「宮と商が自然にあい和す」ということなんです。
日本や中国では宮(きゅう)、商(しょう)、 角(かく)、 徴(ち)、 羽(う)という、5つの音階があり、これを「五音」と呼びます。
お浄土では、この五音が自然に混ざってすごく美しい音になると言われています。「違う音だけれども、響きあうことのできる世界がある」と仏様が私たちに教えてくださっているのです。
 
そう考えたときに、仏教の音楽ってすごくいいなと思いました。僕たちは不完全な身だから、「五音が響きあう」のはなかなか難しいけども、少しでもそういう生き方を目指せるようになれたらいいなと思うし、そういう瞬間がLIFE SONGSの中でも沢山ありました。それぞれは全然違う考え方だけど、一緒に嬉しくなったり、悲しくなったり……。
 
LIFE SONGSの公演でも岩崎紗依さんが「悲しみがない人生は幸せになれない」と言っていて、実際、自分の生活の中で共感できる瞬間があった。だからそういう想いをどうにか入れられたらなと思い、ライナーノーツを書きました。
 
ライナーノーツ…音楽CDのジャケットに付属している冊子等に書かれる解説文のこと。
 
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イ:「時のかけら」というタイトルは思い浮かんだものとおっしゃってましたが、具体的にはなにか想いが込められているのでしょうか?
 
及川:「時のかけら」というのは本当にふっと出てきたというか、思いついたに尽きるんですよね。
普通は歌詞を書いたあとにタイトルを考えることが多いんですけど、今回は「時のかけら」っていう言葉がぽんと出てきたんですよね。だから思いついたとしか言いようがないんです(笑)
 
ただ、強いて理由をつけるなら、LIFE SONGSに今まで演奏者やお客さんとして参加してきて、最後に出てきた自分なりの答えです。
それと、「時のかけら」って曖昧じゃないですか。例えばコーヒーという言葉だったら、香りや色とかイメージできますよね。でも「時のかけら」ってきくと「ん?」となる。歌詞も含めて、僕自身は答えを知ってるわけじゃないけど、皆さんが曲を聴いて歌詞を自分なりにイメージしてもらうということなのかなと。
明確な答えを出さなくていいんで、自分なりの「時のかけらとはなんだろう」というのを皆さんに想像していただきたいなという想いもあってこう名付けました。
 
イ:ありがとうございました
 
ーーー
 
「時のかけら」
 
及川さんがふと思い浮かべたこのタイトルには、これまでLIFE SONGSが積み上げてきた活動での、演奏者や観客のかけがえのない想いが詰まっています。そして、それぞれの想いがともに響き合うようにという、仏さまの願いが込められた歌でもありました。
そんな深い想いが詰まった「時のかけら」。楽曲と歌詞が出来上がり、いよいよレコーディング、そしてCD・MVの制作へと続きます。次回は、レコーディングの制作秘話について色々とお尋ねします!(近日公開予定です)
掲載日: 2020.02.21