スーパーマーケットに隠れていたアイディア。認知症と共に|平井万紀子さんインタビュー①

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巷のニュースを見てみると「〜してはいけない」「〜したらおわりだ」、
仕事では「効率的に物事を進めなさい!」「失敗はしないように!」
そんな「許されない」雰囲気が社会全体を包んでいるように思いませんか?
 
そんな社会に「まぁいいか」と思える時間、感覚を思い起こさせてくれるのが、認知症の方とともに活動する、「まぁいいかcafe(注文をまちがえるリストランテ)」。このイベントでの特別な時間を通して、社会全体に「まぁいいか」っと思えるあたたかな時間が少しずつ増えたら⋯⋯と。
 
一人の母として、介護者として、どのようなきっかけで活動に至ったのでしょうか?
京都・まぁいいかcafe(注文をまちがえるリストランテ)を企画されている、平井万紀子(ひらい・まきこ)さんのインタビューを3回にわたってお届けします!
 

 
イベントレポ
「京都・まぁいいかcafe(注文をまちがえるリストランテ)。認知症の方とほっとする時間」
 
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――「まぁいいかcafe」はどんな活動ですか?
 
平井万紀子さん(以下、平井):認知症の人がはたらくよころびを感じていただくことによって、社会とつながる・人とつながる場になればいいなぁと思っての活動です。
具体的に言いますと、京都を中心にカフェやホテルを会場として、認知症の方が接客するカフェをしています。
 

お母様との同居から見えてきたことがきっかけ

         
 
――認知症の方との企画、ネーミングもいいですよね!平井さんご自身が認知症の方と企画をされるきっかけは何ですか?
 
平井:実は、私の母が9年ほど前に認知症になり、母だけでの1人暮らしは厳しい状況になったので、6年前から母と暮らすことになりました。
 
実を言うと、私は母の住んでいた地域に住みたかったんです。
というのも、母はその地域に50年間くらい住んでいました。引っ越すとなると、母は住み慣れた土地を離れることになります。
それは、母のコミュニティを全部取ってしまうことになると思っていたんです。
 
その地域だと近所の人といろんな話ができます。50年くらい通ったお店なら、たとえ認知症であっても十分行けるんですね。
 
ただ、私には当時、小学生と中学生の子どもがいました。自分と子どもだけ引っ越そうかとも考えたんですけど、子どものことを考えると転校は厳しい、と。
もし子どもが転校を嫌がったら、毎朝車で送迎をしようかな?とかね、いろいろ考えました。
その結果、やっぱりそれは厳しいなぁと思って母に来てもらうことになりました。
 
――娘としての平井さんと母親としての平井さんですね。確かに、それはとても大事な視点ですね。
 
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平井:母と生活し始めると、母はいろいろと役に立とうとしてくれました。
けど、今まで同居していないので、何かとやり方が違うんですよね。すごく細かいことですけど、洗濯物の干し方や食器の洗い方……ちょっとしたことが違ってきます。
 
正直今まで他人からそういった話を聞いても、「そんなん許してあげたらいいやん!」、「なんでそんなに細かいことをチェックして、ぐちぐち言ってるんやろう」って思っていました(笑)。でも自分の親なので、言っちゃうんですよ。「やめて」とか「もうやらんといて」とか。
 
――在宅介護で被介護者と暮らすからこそわかってくることですね。
 
 

同じ部屋、同じ空間で母と過ごす。「働きたい」気持ちに気づく

 
平井:そうやって母の身の周りのことをしていると、本当は本人の力でできることまで奪ってしまっている気がしてきました。もちろん、スピードは遅いかもしれませんが、できないわけではないのに。
 
そんな母がいつも口癖のように言っていたのが、「働きたいわぁ~」だったんですよ。
 
テレビやニュースで見る認知症の方の話って、行方不明になるとかそういう話が多くて。当時は「認知症」に対してそういうイメージが強かったんです。けどそれは思い違いで、実際母が認知症と診断され、うちに来てからは認知症に対する見方も変わりました。認知症といっても、母は元気で、「働きたい」とずっと言っている。母にも何か、できることがあるはずだと思うようになりました。
 
――平井さんご自身がお母様と一緒に過ごされたことが大きなきっかけだったんですね。
 
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まぁいいかcafeの様子

 
平井:けど、なかなか具体的な行動に移せませんでした。アイディアもなかったし……。けど、「何かできる」という確証は日常の中に隠れていた気がしていました。例えば母と家の近くのスーパーマーケットに行った時、野菜売り場に若い店員さんがほうれん草を並べたり、みかんの大きさを見て並べたりしているのを見かけました。
 
それを見て、もしかしたらこの仕事なら母でもできるかもって思ったんですね。母は50年くらい主婦をしてきたので、食材の大きさや艶、見た目から、どういったものがおいしいかわかるんです。
 
それに、この仕事を母ができたら、この店員さんはここの売り場じゃなく他に営業に行って、もっと野菜を売れるようになるんじゃないか。もっと違う仕事ができるんじゃないか。
そしたらもっと日本が潤っていくんじゃないかと思ったんですよ。
 
――壮大ですね!
 

「注文をまちがえる料理店」と出会ったきっかけとは?

   

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掲載日: 2020.01.15

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