四方八方、十方丸くー遠い国の人々を支援するということ No.4ー
四方八方、十方丸くー遠い国の人々を支援するということNo.4ー
チボリ国際里親の会 元会長 南昌宏さん
【第 4 回】
NPO 法人 JIPPOと関わりあいの深い、チボリ国際里親の会の元会長である、南昌宏さんに「遠い国の人々を支援するということ」をテーマにお話をお伺いしてきました。全4回にわたってのインタビューの最後は「遠い国の人々を支援する理由」として、フィリピンのチボリ族に対する具体的な活動を通じ、国際理解、教育を今度、どのように考えていくかについて話していただきました。
「遠い国の人々を支援する理由」
インタビュアー(以下「イ」):30年以上の活動を振り返って、南さんにとって良い社会貢献活動とは何でしょうか?
南さん(以下「南」):そうですね。まず「社会貢献」という言葉にも少し慎重になりたいですね。ともすると、上から目線で施したり、自己満足にひたってしまい、相手を傷つけてしまうことにもなりかねませんから。私は「社会貢献」よりも「お互い様」の方がしっくりきますね。
イ:何気ない言葉の中にも姿勢が現れるということでしょうか?
南:はい。たとえば「支援」と「援助」という言葉も、私は別のものだと考えています。支援の対象となる現地の方が、自分たちが何かをしようとする意志を応援するのが「支援」。意志がないのに与えてしまう「援助」は依存を生んでしまいます。もちろん、震災など緊急事態においては最初に援助が必要な場合もあります。
イ:先に伺ったチボリ族の支援のケースも、長期的に支援を続けるうちに依存が起きているように感じました。
南:そうです。依頼心を持ち始めてしまうんですね。自分で考えなくなってしまう。そうなると何らかの事情で支援がストップしてしまった場合は悲惨です。
イ:良かれと思ってやっていることが、かえって不幸な結果につながってしまうんですね。どうすれば良い支援にしていけるのでしょう?
南:支援者側が現地で前面に立って采配を振るうのは良くないですね。自分たちが望む状態に持って行こうとしてしまいますから。そうではなく現地の人が望み歩む道があるはずなので、その歩む道を一緒に探していくことが大事です。
イ:具体的にはどんな方法がありますか?
南:まず現地をよく知ること。それから現地を知る現地の方による支援団体をつくる。その団体との連携を図ることが、問題を生まない支援体制につながると思います。
イ:やはり簡単ではないですね。素朴な疑問として、わざわざ手間をかけて遠い他国の支援をしなくても、国内などもっと身近で困っているところの支援をしたらいいじゃない、という気もするのですが。たとえば里親制度にしても、国内にも親のいない子ども達がいます。
南:私はあえて距離や文化の違うところ同士で支援関係を持つことにも、大きな意味を感じています。まず、現地の方に上から施すのではなく、お互い様の姿勢で関わることで、自分にないものに気づかされたり、相手の良いところが見つかります。現地の人たちが自分では気がついていない良いところに気がついて、自信になっていく。現地の人が誇り高く豊かになっていく。そういう現象が起きることがあります。距離や文化のギャップが大きいほど、お互いの違いや良さが鮮明になり、こうした育ち合いの関係が実現することが多いと感じています。
イ:なるほど、確かに家族など距離が近すぎると摩擦が起きたり気がつかないこともありますよね。遠く離れた文化も違う相手だからこそ築ける関係性もあるのかもしれません。
南:立場が違うからこそ、どちらかの色に染めようとするのではなく、認め合うんです。金子みすゞの詩に「みんな違ってみんないい」という一説があるでしょう?具体的な支援の体験を通じて、平等意識も育っていくと思います。
イ:言葉ではなく体験のなかに大きな学びがあるんですね。長年活動をされてきたからこその、説得力を感じます。正直なところ私自身、社会貢献活動には偽善の臭いを感じることもありましたが、支援者自身にとっても学びの多い活動だと知って納得できました。最後にこれから活動を始めたいと考える人たちに向けて、メッセージをいただけますか?
南:これだけのことをしたのだからと、見返りを求めないことですね。ぜひ長期的な視野にたって活動を行っていただき、お互い様の関係の喜びを体感してほしいと思います。この記事を読んで納得して終わりではなく、どれだけ行動に結びつけるかどうかが大事です。少しでも新しい活動者が出てきてくれるとうれしいですね。
2015.8/21更新