「四方八方、十方丸く」 JIPPO_第2回 「人を植える!?」

「四方八方、十方丸く」JIPPO_第2回「人を植える!?」

 

【第2回】

平和、貧困、環境、災害など様々な社会課題について、国内外を問わず事業展開しているNPO法人JIPPO。「すべての存在と営みは互いに関係しあい支えあっている」という仏教の縁起の教えにのっとり、浄土真宗本願寺派の社会事業活動のひとつとしてスタートしました。

同法人の専務理事の中村尚司(なかむらひさし)さんは、日本有数のアジア研究者でもあり、社会問題にも取り組む活動家でもあります。アジアの社会問題やJIPPOの活動について教えを請います。

前回に引き続き、適正価格での輸入、商品提供をするフェアトレード事業を実施しているスリランカを巡る話をお聞きします。今回は全5回中、2回目として「プランテーション」についてお話しをいただきました。

「人を植える!?」

ji 僧シャル_JIPPO中村氏インタビュー第二回

「楽しそうにお話をしてくださる中村さん」

 

インタビュー(以下、「イ」): JIPPOでは、設立当初からスリランカの紅茶農園とフェアトレードを行ない、現地へのスタディーツアーも開催していますね。スリランカのフェアトレードについて教えていただけたらと思っています。

 

中村尚司さん(以下、「中」):はい。フェアトレードについて語るにあたって、まずプランテーションというものを知っていただく必要があるでしょうね。

スリランカなど途上国の安価な労働力を使って単一作物を大量に栽培する大規模農園「プランテーション」という問題があります。これを改善するため「フェアトレード」という途上国の製品などを適正な価格で購入し、主に労働者の生活向上を目指す運動を始めました。私はプランテーションとは、「植物と人を植える」ということだと思うんですね。

 

イ:えっ?!人を植えるってどういうことですか?

 

中:あはは。少し極端な言い方をしたけど、単純には人を移住させて、隔離して、働かせること。植えると表現したのは、そのプランテーションを行う地域に、他の地域や他国から人を連れてきて、強制的に人の縁を切らせ、孤立させ、住みつかせるからです。

 

イ:そんなこと可能なんですか?

 

中:スリランカは、16世紀にポルトガル、17世紀はオランダ、18世紀にはイギリスに植民地支配されています。プランテーションは、イギリスの植民地時代に盛んに行われました。

 

イ:スリランカは各国に植民地化されていたんですね。

 

中:イギリスの植民地政策は、プランテーションのなかに病院や学校を作り、プランテーションの内部で人生が完結する環境を整えました。プランテーションの人たちは、プランテーションの学校にいって、プランテーションのなかで結婚して、プランテーションの病院に入院して、プランテーションのなかで死んで行く。だから、プランテーションの人たちは、プランテーション以外の世界を知らないんです。

 

イ:なるほど、外部と断絶させ、隔離させるイメージですね。それこそ、先ほど先生が「人を植える」と説明くださったことですね。そんなことをしてどのような意味があるんですか?

 

中:その地元の人だと無理はさせられないからね。

 

イ:無理をさせられないって、どういうことですか?

 

中:先ず、地元には家族や親戚、昔からの人間関係があるわけですよね。今と違って、当時は生まれた土地で一生を過ごすことが当たり前だったから。そうすると、無理な労働はさせられないし、賃金だって無理に安くはできない。周囲の目があるからね。

 

イ:イギリス政府は、いくら植民地だといっても、地域の人たちが不平不満をもって暴徒化しかねないと考えたんですね。

 

中:そうだね。それに、親戚関係の付き合いがあると、法事や結婚式などの冠婚葬祭には休みを与えなければならない。農村地帯の住民の多くは親戚関係でつながっているから、その日は仕事にならないんだよ。しかも、一日や二日じゃないからね。

 

イ:なるほど。他の地域から人を連れてきて、孤立させ、ひたすら仕事をさせる。人間関係を断絶させ、効率化させるわけですね。まさに、奴隷ですね。

 

中:そう。しかも、地元の人にもメリットがある。作らせたプランテーションの品を運ぶ仕事は、地元のインフラや地元の人を使うことよって雇用が生まれるんだ。

 

イ:一番しんどいことはプランテーションの労働者たちにやらせて、それから派生する、おいしい仕事を担っていくんですね。

 

中:地域やインフラを使うことによって、その地域にお金をおとすことになる。そうすることで、イギリス政府は地域還元を行なうことになり、地域から不満が出ることもない。

 

イ:よくできてますね。

 

中:それに、プランテーションの労働者に輸送の仕事を与えてしまうと、外部の人と接触してしまう。人間関係を断絶させる意味でも、地域の人が輸送の仕事をする方がよかったんだ。

 

イ:徹底してますね。

 

中:外部との人間関係を断絶し、外部からの情報を完全にシャットアウトさせることで、プランテーション内の理不尽や横暴を日常化させる。ある意味、マインドコントロールなところはあるかもしれないね。

 

 

次回は(2015.9/9更新予定)は「インド・タミル人について」です。

 

中村尚司(なかむらひさし)

1938年生まれ、京都市出身。京都大学卒。龍谷大経済学部教授を経て、現在は同大学名誉教授、同大学研究フェロー、NPO法人JIPPO専務理事。

 

NPO法人JIPPOのウェブサイト

http://jippo.or.jp

 

2015.9/1更新

   

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掲載日: 2015.09.01

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