「四方八方、十方丸く」 JIPPO_第5回 「フェアトレード??」
「四方八方、十方丸く」JIPPO_第5回「フェアトレード??」
【第5回】
「平和構築」、「貧困問題」と「環境問題」の解決、「災害支援・復興」の目的完遂、これらに向けて各種事業活動を展開しているNPO法人JIPPOは、「すべての存在と営みは互いに関係しあい支えあっている」という仏教の縁起の教えにのっとり、親鸞聖人の「世のなか安穏なれ」という願いのもと、浄土真宗本願寺派の社会事業活動の一環として、2008年に設立されました。
同法人の専務理事の中村尚司さんは、日本有数のアジア研究者でもあり、社会問題にも取り組む活動家でもあります。アジアの社会問題やJIPPOの活動について教えを請います。
適正価格での輸入、商品提供をするフェアトレード事業を実施しているスリランカを巡る話です。今回は「フェアトレード??」というテーマでお話をいただきました。
「フェアトレード??」
インタビュアー(以下、「イ」):JIPPOでは、スリランカの紅茶プランテーション農園とフェアトレードをなされていますが、そもそもフェアトレードって何ですか?
中村尚司さん(以下、「中」):フェアトレードとは、直訳すれば「公平な貿易」です。
イ:うーん、よく分かりません…。(笑)何を持って、「公平」何ですか?
中:結局のところ、売り手と買い手がフェアだと思えば、それで成り立つんです。
イ:一定の基準がないということですか?
中:そう、そう。JIPPOでは、スリランカの紅茶、東ティモールのコーヒーとフェアトレードをしていますが、それぞれ方法は全く違うんです。だから、フェアトレードと一概に言っても、一つの方法で全て行われているあるわけではないんです。
イ:それぞれの国々で「フェア」だという方法で、やり取りが行われているんですね。それでは、スリランカの紅茶のフェアトレードは、どのような方法で行っているんですか?
中:JIPPOは、国際機関が定める、ソーシャルプレミアムを支払っています。
イ:ソーシャルプレミアムって、何ですか?
中:一般的に販売される紅茶の価格に上乗せして、支払われる金額のことをソーシャルプレミアムと言います。
イ:要するに、販売価格に少し上乗せして、それを農園に寄付しているということですか?
中:そういうこと。
イ:農園に寄付したお金は何に使われるんですか?労働者の給料が上がるんですか?
中:労働者が住んでいるコミュニティのために使われます。例えば、プランテーションの中に公衆トイレが作られたり、公民館のようなものが建設されたりします。
イ:誰がそのお金の使い方を決めるんですか?
中:民主的な協同組合を組織し、その組合がソーシャルプレミアムをどのように使うかを決定します。
イ:ソーシャルプレミアムを支払うことで、JIPPOは地域貢献をしているんですね。
中:そうです。逆に、労働者の給料が上がったり、個人的な病院治療費などには使用できません。あくまでも、コミュニティのために使用されます。
イ:なるほど。ソーシャルプレミアムを足した金額で紅茶を買うことで、労働環境を整えているわけですね。
中:そういうことです。それとJIPPOは、有機無農薬栽培の紅茶園とフェアトレードしています。
イ:それは、何かこだわりがあるんですか?
中:JIPPOの方針が「環境と人に優しい」ことをめざしているんで、有機無農薬栽培の製法にこだわって、フェアトレードを続けています。
イ:JIPPOらしい気がします。
中:ただ、スリランカでは有機無農薬栽培だからといって、紅茶の評価が高いとは限らないんです。農薬を使わないことによって、虫がついたり、形が一様じゃないなど、問題も多いです。色んなことに気をつけないといけないので、価格も高くなってしまう。
イ:確かに、日本でもオーガニックは高いイメージがあります。メリットもあるんですか?
中:ヨーロッパやアメリカでは、オーガニックに対する関心は高く、ニーズも多いんです。ただ、メリットを考えてやっているというよりも、「環境と人に優しい」ということに、こだわっている方が強いかな。
イ:商業的に得するよりも、環境と人のために活動しているんですね。一般で市販されている紅茶は農薬が入っているわけですよね。やっぱり身体に悪いんですか?
中:農薬は紅茶を飲む私たちよりも、労働者への影響の方が大きいと言われます。
イ:なるほど、労働者に優しい活動なわけですね。ソーシャルプレミアムをつけて、有機無農薬栽培の紅茶にこだわりをもっているのは、JIPPOならではのフェアトレードの方法なんですか?
中:リプトンなどの大手会社も、ソーシャルプレミアムをつけて、同じような方法でフェアトレードをしています。しかし、有機無農薬栽培かどうかは、それぞれの会社や団体によって、様々だと思います。
イ:大手会社もフェアトレードをしているのは意外です。やっぱり大手が強いんですね。
中:JIPPOの取引規模はとても小さく、大手とは比べ物になりません。しかも、JIPPOは仕入れた紅茶を売りさばくことができず、赤字になっています…。
イ:赤字、それは何とかしなくては。
中:将来的には、フェアトレードした紅茶の売り上げをJIPPOでプールして、スリランカのプランテーション農園の子どもたちを日本に招いて、日本の子どもたちと交流を深めることもめざしています。まだまだ夢のような話しだけどね。
イ:素晴らしいビジョンですね。少しでも協力できるように、私も宣伝していきたいです。
中村尚司(なかむらひさし)
1938年生まれ、京都市出身。京都大学卒。龍谷大経済学部教授を経て、現在は同大学名誉教授、同大学研究フェロー、NPO法人JIPPO専務理事。
NPO法人JIPPOのウェブサイト
2015.9/25更新