【講座レポート】お寺で学ぶ認知症の方との接し方
7月12日、京都市下京区の一念寺において、「お寺で学ぶ認知症の方との接し方」講座が開かれました。医療・介護の専門職や僧侶が協働するプロジェクト「おれんじテラス」のスタートアップ企画です。
認知症患者の数は今後増え続け、2025 年には 65 歳以上の 3人に 1 人が認知症とその予備軍になると言われています。そのような社会て、医療・介護の専門職やご家族だけでなく、地域の人々で支えていくことが大切です。
古くからお寺は医療・介護・福祉と関わりが深く、「生老病死」の苦悩に寄り添ってきた伝統があります。そこでお寺において、地域の方々へ向けた認知症介護の体験講座が開かれることになりました。
経験豊富な精神科医と介護福祉士の先生を招き、医学に基づいたわかりやすい講義と介護の実践体験(ロールプレイ等を通じて認知症の方の気持ちを理解する)が提供されました。
介護福祉士の増本先生は、認知症対応で大切な姿勢は「相手の視点に立って物ごとを観る」ことだと話されました。私たちは自分に都合の良いものの見方をしがちです。その自己中心性を省みて、相手の視点に立とうとすることは、人と共に生きていく上で欠かせない姿勢だと感じました。
また、医師の東先生の「認知症は珍しい病気ではない。また、現在の医療では治療できない」という言葉は印象的でした。
誰しも認知症になる可能性があり、簡単に治療できるものではないとすれば、認知症を根絶しようとするのではなく、周囲の支えの中で受容していくことが必要ではないでしょうか。残念ながら社会では認知症にだけはなりたくない、という見方が少なくありません。その疾病観が少しでも前向きなものに変わっていけば、認知症の方が孤立せず生活しやすい環境が整っていくのではないでしょうか。
その先には認知症であろうとなかろうと、その人生が受容・肯定され、誰もが安心してその人らしく生き切ることができる社会があるはずです。認知症の方にとって生きやすい社会は、誰にとっても生きやすい社会だと思います。