「弱い姿を見せたくない」【みんなの人生僧談】
「僧侶の部屋」では、様々な経歴を持つ僧侶たちが、世の中のよくある悩みを勝手にテーマにして座談会形式で自由に話し合います。
今回のテーマは「弱い姿」。弱っている姿を見られることを、みなさんはどう思うでしょうか?いつも張っている虚勢も張れず、弱い姿を見られてしまうのは、恥ずかしいことなのかもしれません。ですが、満ちた月はいずれかけていくもの。どんなものでも必ず弱っていくものです。そんな事実を、僧侶ならどう考えるのでしょう。
今日のテーマ:弱い姿を見せたくない
歳を取って、足腰だけではなく、心も弱くなってしまった気がする。子どもや孫にこの弱い姿を見せたくない。できるならば、いつまでも強い自分でいたい。
歳を取って、足腰だけではなく、心も弱くなってしまった気がする。子どもや孫にこの弱い姿を見せたくない。できるならば、いつまでも強い自分でいたい。
田:身体的な強さは一つのアイデンティティーだから、弱くなるっていうことは相当にショックなことだよね。このあいだも私の父が、自分が開けられなかったビンのフタを弟が開けたことに傷ついていたよ。力自慢の人だったから。
引:父親って、高いところのものをとるとか、硬いフタを開けるとか、家庭の中での身体的な負担を担当することが多いですし、頭では分かっていても、ショックは大きかったんでしょうね。
サ:「足腰だけではなく、心も弱くなってしまった気がする」っていうのは、ちょっと自信を失いつつある感じだよね。ご自身のアイデンティティーを保つために気勢を張るのも良いと思うけれど、同時に弱くなりつつあるご自身を見せられる誰かがいるといいんだけれど。
田:気を張って強さを保っていた身からすると、怖さもあるんだと思うよ。一度弱さを見せてしまうとずるずると弱くなってしまうんじゃないかっていう。
サ:それは怖いね。でもいずれ身体は弱ってしまうものだから、それをどこかで認めて、向き合っていく必要はあると思うんだ。
田:それはそうだね。
引:どなたか安心して弱さを見せられる方から徐々に見せていくのがいいかもしれませんね。同じ境遇にあるだろう同年代のご友人とか、配偶者の方とか…。
田:段階的に徐々に見せていくというのはいいかもしれないね。その方がご自身が受けるショックも少ないだろうし。でもやっぱりいずれはそういった姿をお子さんやお孫さん、つまり自分のことを強いと信じてくれている人に見せてほしい。
引:何故ですか?
田:お子さんやお孫さんからしたらショックなことかもしれないけれど、人がいずれ弱くなっていく、ということの実例を示すことは、お子さんやお孫さんが同じように弱る時が来たとき、助けになるからだよ。そういう意味ではちゃんと弱っていく姿を、見せてあげてほしい。
引:なるほど。それは大きな意味ですね。
サ:今は葛藤中だろうけれど、だからこそ周囲の支えや信じるもののありがたさが身に染みる時期かもしれないね。人は失敗したり、自信を無くしたりした時にこそ、もう一度本当の自分に出会うことができる。結論を急がず、じっくりと取り組むべき悩みだと思うよ。
僧侶たちの議論はまだまだ続きますが、ひとまずここまで。
以上、僧侶の部屋での座談会でした。何かのヒントになれば幸いです。
ーーー
・田舎好き僧侶
大自然とスローライフをこよなく愛する僧侶。将来は畑をいじって暮らしたいと夢見る。
・サイバー僧侶
お寺生まれIT育ち。趣味が高じてIT業界に進むも、自らの使命に気づき僧侶の道に。最新機器への物欲が目下の悩み。
・引きこもり僧侶
学校と図書館と部屋の往復だけで生きてきた引きこもり系。友達は少ないが平気で生きている。
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他力本願ネット
人生100年時代の仏教ウェブメディア
「他力本願ネット」は浄土真宗本願寺派(西本願寺)が運営するウェブメティアです。 私たちの生活の悩みや関心と仏教の知恵の接点となり、豊かな生き方のヒントが見つかる場所を目指しています。
掲載日: 2020.08.14
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