傷つけないデスカフェのつくりかた│「Café Mortel」インタビュー<後編>
――今回のDeathCafeWeekに参加されていかがでしたか?
小口:さまざまなデスカフェにも参加できて有意義でした。Café Mortelはこれまでグリーフを中心に運営してきましたが、私自身はひたすら悲しみに浸る時期は過ぎて、死についていろいろと考える興味も出てきました。たとえば安楽死など、死について語り合うデスカフェもおもしろいだろうなと思いました。
これからはグリーフの要素を残しつつ、他のチャレンジもしてみたいと思うようになりました。そのため、今回のDeathCafeWeekでコラボさせていただいた田中さんと、読書会と死について語る会を毎月交互に開催したりしています。
また、私がCafé Mortelで扱っているグリーフは、大切な方を亡くすという二人称の死ですが、自分自身の一人称の死をこれまで考えてきていませんでした。DeathCafeWeekに参加して他のデスカフェに触れたことで、自分の死のイメージや理想の死を考えていなかったことに気づかされました。これからはもっと自分の死について考えたいと思います。
――オンライン開催の手応えはいかがでしたか?
小口:やはり、オンラインの一番のメリットは、どこに住んでいても参加できる点ですね。デメリットは家だと家族がいるから話しにくいという点です。実際に、「この時間だと家族が家にいるので無理です」と言われるケースもありました。あとは年配の方など、ITツールを活用できない人は難しいですね。
それと、リアルであれば終わった後に仲の良い人と残って話すといった余韻もあるのですが、オンラインですと会が終了したときに急に現実に引き戻されてしまいます。
それぞれの良さを生かし、オンラインとリアルを同時開催するハイブリッドな形態も模索しているところです。いずれにしてもファシリテーターとして気をつけているのはゆっくり話すことと、想い余って何を話したいかわからなくなる参加者もいるので、まとめる力が必要だと感じています。
――最後に、今後の展望を聞かせてください。
小口:現状デスカフェは参加無料でボランティアと認識されているので活動資金を賄えません。活動の継続や発展のためには、メンタルヘルス・ケア向上という大きな母体の中にデスカフェを位置付けることができればと思います。私自身、看護師の業務として、死後の処置はしていますが、死とどう向きあうか、ということは考える機会が少ないと痛感しています。死について考えることは、医療現場で求められていると思いますし、実際にデスカフェ参加者は医療従事者が多いです。医療者のグリーフケアの養成講座のひとつにデスカフェがあるなど、そういう形が理想のひとつかと思います。
<編集後記>
参加者に気持ちよくしゃべっていただく、話の内容に優劣はつけない、などのグリーフケアや傾聴全般に通ずる配慮が随所で見られました。オンラインでの開催や、医療現場へのアプローチ等、今後の発展も期待されます。開催場所として、寺院や葬儀場の協力もありうるでしょう。
また、Café Mortelと共に歩む小口千英さんご自身の変化も印象的でした。いまや百花繚乱のデスカフェ。それぞれのカフェの魅力の大部分はオーナーの個性なのかもしれません。