ジョード・シンシュー・アイスブレイク③「他力のセトルドハート」
ジョード・シンシュー・アイスブレイク③「他力のセトルドハート」
本願寺派総合研究所 委託研究員(現、北米開教区タコマ仏教会開教使) タカシ・ミヤジ
皆さんはどんなことにストレスを感じますか? アメリカにはチップの習慣がありますが、時々いらいらすることがあります。食事の後のチップ、バーでカクテルを注文した時のチップなど、いつも悩んでしまいます。チップの額によっては、店員さんに「ケチだ」と思われたり、「サービスが悪かったのか?」と聞かれたりします。勘定の時、いちいちチップを含めて計算するのは面倒で、とてもストレスを感じます!
ところで、アメリカでは「What is your zen?」という表現がよく使われます。「日々の忙しい生活の中でのストレス発散に、あなたは何をするのですか?」という意味です。これは恐らく「Zen」という言葉が、「リラックスさせるもの」と受けとめられていることから生まれた表現でしょう。ここには10年ほど前からのアメリカのポップカルチャーにおける禅の影響の大きさを見ることができます。ちなみにアメリカでは、ストレス解消のための「zen」のグッズとして、石鹸やエステの券などがよく宣伝されています。
では、浄土真宗では、ストレス発散のためにどんな方法をとっているのでしょうか?「What is your zen?」「 My zen is Jodo Shinshu」もちろんこんなことは言いません。 浄土真宗は、ストレス発散といった一時的なリラックスを目指す教えではありません。真宗が目指すものは、四苦八苦といった人生そのものの悩みを根本的に解決するような深い「リラックス」です。それを「安心(あんじん)」と言います。それは「安堵心(あんどしん)」とも言われ、英語では「settled heart(セトルドハート)」または「assurance(保証・自信)」と訳されます。「settled heart」は、「心の落ち着き」です。特に「settled」という言葉は、「何があっても問題とならない」「悩みがありながらも穏やかである」という真宗の「安心」の意味を表現する訳としてもっともふさわしいものです。
安心=settled heart
例えば、「After talking our differences remained but our problem was settled」「相手と話し合った上、一応の解決がつきました」という文章が作ることができます。細かく言えば、ここでの問題というのは自分と相手の意見がぶつかって悩むということです。そして、それが「settled」、つまり解決に達するというのは、自分と相手の意見の違いそのものが消えるのではなく、それを踏まえた上で落ち着く場所をみつけることができるということです。このように、心の悩みの解決というのは、悩みそのものはなくらないかも知れませんが、それが問題にならなくなり、心が「settled」するのです。
アメリカのご門徒によく知られている歌があります。「根をしめて風にまかせる柳かな」(「Grounded by the root, leaving all up to the winds, stands the willow tree」)。柳は強い風が吹くと右から左へと振り回されます。しかし、根がしっかりしているため、どんなに風が吹いても倒れないのです。私たちが、不安定なこの世の中にどんなに振り回されていても、真実のよりどころである念仏のみ教えが私を落ち着かせ、安堵させる。これが浄土真宗における「安心」であり、「私をリラックスさせる」ということです。
※「アイスブレイク」とは、初対面の人たちの集まりなどで、緊張をほぐし、話し合うきっかけをつくるための自己紹介やゲームのことです。
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その他の『季刊せいてん』の記事が気になる方はこちらまで!最新号はこちら!
●季刊 年4回発行(3月・6月・9月・12月の各1日) B5判 「季刊せいてん」は、はじめて「浄土真宗聖典」を手にする方にも、わかりやすく学習・聞法していただくことができる味わい深い聖典学習誌です。 創刊号より次のような編集方針で発刊をつづけています。
■現代人の「ことば」で語る
■聖典が、とにかく身近になる
■続けて読んで、そして深まる
■グループ学習に最適のテキスト
■随所に読みやすさを工夫
編集/浄土真宗本願寺派 総合研究所 発行/浄土真宗本願寺派 本願寺出版社
季刊せいてん no.114 2016春の号より転載
著者:浄土真宗本願寺派 総合研究所
判型:B5判 定価:¥700(本体¥649+税)
※売り切れの号もございます。
本願寺派総合研究所 委託研究員(現、北米開教区タコマ仏教会開教使) タカシ・ミヤジ
皆さんはどんなことにストレスを感じますか? アメリカにはチップの習慣がありますが、時々いらいらすることがあります。食事の後のチップ、バーでカクテルを注文した時のチップなど、いつも悩んでしまいます。チップの額によっては、店員さんに「ケチだ」と思われたり、「サービスが悪かったのか?」と聞かれたりします。勘定の時、いちいちチップを含めて計算するのは面倒で、とてもストレスを感じます!
ところで、アメリカでは「What is your zen?」という表現がよく使われます。「日々の忙しい生活の中でのストレス発散に、あなたは何をするのですか?」という意味です。これは恐らく「Zen」という言葉が、「リラックスさせるもの」と受けとめられていることから生まれた表現でしょう。ここには10年ほど前からのアメリカのポップカルチャーにおける禅の影響の大きさを見ることができます。ちなみにアメリカでは、ストレス解消のための「zen」のグッズとして、石鹸やエステの券などがよく宣伝されています。
では、浄土真宗では、ストレス発散のためにどんな方法をとっているのでしょうか?「What is your zen?」「 My zen is Jodo Shinshu」もちろんこんなことは言いません。 浄土真宗は、ストレス発散といった一時的なリラックスを目指す教えではありません。真宗が目指すものは、四苦八苦といった人生そのものの悩みを根本的に解決するような深い「リラックス」です。それを「安心(あんじん)」と言います。それは「安堵心(あんどしん)」とも言われ、英語では「settled heart(セトルドハート)」または「assurance(保証・自信)」と訳されます。「settled heart」は、「心の落ち着き」です。特に「settled」という言葉は、「何があっても問題とならない」「悩みがありながらも穏やかである」という真宗の「安心」の意味を表現する訳としてもっともふさわしいものです。
安心=settled heart
例えば、「After talking our differences remained but our problem was settled」「相手と話し合った上、一応の解決がつきました」という文章が作ることができます。細かく言えば、ここでの問題というのは自分と相手の意見がぶつかって悩むということです。そして、それが「settled」、つまり解決に達するというのは、自分と相手の意見の違いそのものが消えるのではなく、それを踏まえた上で落ち着く場所をみつけることができるということです。このように、心の悩みの解決というのは、悩みそのものはなくらないかも知れませんが、それが問題にならなくなり、心が「settled」するのです。
アメリカのご門徒によく知られている歌があります。「根をしめて風にまかせる柳かな」(「Grounded by the root, leaving all up to the winds, stands the willow tree」)。柳は強い風が吹くと右から左へと振り回されます。しかし、根がしっかりしているため、どんなに風が吹いても倒れないのです。私たちが、不安定なこの世の中にどんなに振り回されていても、真実のよりどころである念仏のみ教えが私を落ち着かせ、安堵させる。これが浄土真宗における「安心」であり、「私をリラックスさせる」ということです。
※「アイスブレイク」とは、初対面の人たちの集まりなどで、緊張をほぐし、話し合うきっかけをつくるための自己紹介やゲームのことです。
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●季刊 年4回発行(3月・6月・9月・12月の各1日) B5判 「季刊せいてん」は、はじめて「浄土真宗聖典」を手にする方にも、わかりやすく学習・聞法していただくことができる味わい深い聖典学習誌です。 創刊号より次のような編集方針で発刊をつづけています。
■現代人の「ことば」で語る
■聖典が、とにかく身近になる
■続けて読んで、そして深まる
■グループ学習に最適のテキスト
■随所に読みやすさを工夫
編集/浄土真宗本願寺派 総合研究所 発行/浄土真宗本願寺派 本願寺出版社
季刊せいてん no.114 2016春の号より転載
著者:浄土真宗本願寺派 総合研究所
判型:B5判 定価:¥700(本体¥649+税)
※売り切れの号もございます。
Author
他力本願ネット
人生100年時代の仏教ウェブメディア
「他力本願ネット」は浄土真宗本願寺派(西本願寺)が運営するウェブメティアです。 私たちの生活の悩みや関心と仏教の知恵の接点となり、豊かな生き方のヒントが見つかる場所を目指しています。
掲載日: 2019.12.28