ジョード・シンシュー・アイスブレイク(終)ありのままに Just As You Are

tachiyomi
本願寺派総合研究所 委託研究員(現、北米開教区タコマ仏教会開教使) タカシ・ミヤジ
 
 
昨年、伝灯奉告法要(でんとうほうこくほうよう)に際して刊行されたご門主(もんしゅ)の著書『ありのままに、ひたむきに』(PHP研究所)。このたび、本書を英訳する大切なご縁をいただきました。英訳本の題名は、『Moving Forward Just As You Are』といいます。
 
「ありのままに」というと昨今は、ディズニーの映画「Frozen(アナと雪の女王)」の劇中曲、「Let It Go」の日本語版「Let It Go〜ありのままで〜」をつい思い出しますね。実は私は、この曲を最初に聞いたとき、「Let it go, Let it go」を「ありのままの」と訳しているのは誤訳ではないかと思いました。「Let it go」は「放す、無理にしない」などの意味が通常です。なので、「ありのままの」という日本語とはニュアンスが違うと感じたのです。ところがよく聞いてみると、「姿見せるのよ」「自分になるの」という言葉が続いていました。これなら納得です。日本語詞を製作された方によると、字数制限や、キャラクターの口が「go」のところで「お」の形になるのに合わせる必要があって、「ありのままの」となったそうです。なるほどと思いました。
 
さて、日本語では同じ「ありのまま」という言葉ですが、『ありのままに、ひたむきに』の題名としては「Let It Go」ではなく、「Just As You Are」のほうがより意味が近いのではないかと考えました。この表現には、「仏さまみたいにパーフェクトで理想的な人になれなくても、善いところ悪いところがあっても、それでいいんだよ」という意味が含まれています。
 
ひたむきに=Moving Forward(ムービング フォワード)
 
一方、「ひたむきに」の訳は実に難しくて、なかなかピンとくる表現が思い浮かびませんでした。辞書で調べますと、「single-minded, intently」などが出てきますが、特に「single-minded」は仏教的専門用語として「専念(せんねん)・専修(せんじゅ)・専心(せんしん)」などの訳にすでに使われています。ご門主が、できるだけ専門的な言葉を使わず、多くの人たちが読めるように書かれた本ですので、この言葉は使用しませんでした。ようやく出てきたのが、「Moving Forward」という表現でした。「人がまっすぐに歩いて」、「歩く道に注意を払っている」というイメージです。
 
ということで英訳本の題名は、「ありのままに、ひたむきに」を、「私には不十分なところもあるかも知れませんが、その自分の本当の姿をそのまま受け入れ、そして友人、家族、社会などの周囲の人たちと共に生き、進んでいきましょう」というお心として頂戴し、反映させていただきました。ちなみに本書は、本文も易しい英文になっていますので、「アイスブレイク」の次のステップとしてもおすすめです。
 
<お問い合わせ先>国際センター TEL:075-371-5547
 
※「アイスブレイク」とは、初対面の人たちの集まりなどで、緊張をほぐし、話し合うきっかけをつくるための自己紹介やゲームのことです。 
 
 
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編集/浄土真宗本願寺派 総合研究所

発行/浄土真宗本願寺派 本願寺出版社
 
 

 
季刊せいてん no.119 2017夏の号より転載

著者:浄土真宗本願寺派 総合研究所

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掲載日: 2020.01.22

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