仏縁をつなぎ、忘れてしまった心を取り戻す|平岡 学さん(株式会社ナーム代表取締役社長)インタビュー<後編>
時代が求めるのは、動きながら考えるお寺
勉強会の様子 提供:株式会社ナーム
ーー僧侶はどのように研鑽していけばよいでしょうか?
平岡:最近はいろんなお寺さんから相談を受けています。いまいらっしゃる檀家は先代までの住職がつくった檀家です。これから檀家をいかにつくっていくかに皆さん悩まれています。お寺で待っていても何も良い考えは浮かびませんので、動きながら考えてください、とアドバイスしています。
近隣の寺院に知られたくない、何かを言われたら嫌だから、というような心配をされているお寺さんも多いですが、ご本尊や檀家さんを守るには、切り拓いていく覚悟が必要だと思います。本堂を解放して、いろんな人が集まる場所を目指すのも良いと思います。ネット系の紹介サイトと契約してみるのも、新たな接点作りになる可能性がありますし結構なことだと思います。いずれにせよ、やる前から悩むのではなく、まずは動いてから何が良いかを見極めていったらよいと思います。
また、最近は宗教者にはケアの資質が求められています。実際に、丁寧に対応することでリピーター率が高くなります。大事なことは、檀家さん、門徒さんのことをしっかり把握することです。家族関係や、ご病気などの現状を理解し、何かあったら相談してもらえるだけの信頼関係を築くことが大事です。ここがしっかりしていないから足元をすくわれて、他のお寺と檀家を取った、取られたと揉めることになるのです。
いずれにせよ、継続が一番大事なので、寺院にとって無理のないことをするべきだと思います。たとえば、お寺の手作りの梅干しを瓶づめで全檀家さんに配っているご住職もいらっしゃいました。お金をかけたイベントは疲れますし長続きしません。地道に喜ばれることを続けて関係の維持に努めていくことが大事です。
ーー今後の展望を教えてください。
平岡:かつて、お寺は地域社会の中心にあり、お釈迦さまの教えは毎日の生活の中に、優しく温かく息づいていました。今はライフスタイルの変化、少子高齢化・核家族化の進展、道徳教育の衰退などによって、一人ひとりがばらばらの価値観、規範の中で生きているように感じます。
私たちは、一人きりでは生きられません。ご先祖、祖父母、父母がいて自分がいる。自分がいて子が、孫がいる。そこには伝えるべき家風や、智恵そして文化があるはずです。我々の事業を通じて仏縁を繋ぐことにより、精神的な価値を重視する「調和がとれ、平和で幸福な社会」につながっていくと信じています。
そのためには、自分さえよければよいということではなく、業種や派閥を超えて協力し合うことが必要だと思います。
ーー本日はありがとうございました。