自然災害における悲しみをつつみこむ時間。LIFE SONGS企画「悲しみと希望の芸術祭」
テレビをつけるたびに、何度となく自然災害のニュースが流れていました。
直接的な被害が自分の地域になくても、そのニュースが流れるたびに、どことなく不安な感情があり、コンビニでは水が売り切れ、非常食のコーナーも品薄が続いていました。
しかし、時間が経つとそんな感情も忘れ、学校へ行ったり、スポーツしたり、仕事したり、飲みに行く……。
日本のどこかでは、断水、停電、施設での生活で大変な人たちがいると心のどこかでわかっていても、自分の地域に被害がない時は、ゆったりとした時間が流れていました。
それでも、心の隅の方に「何か、違和感」を抱えていた人もいたかもしれません。
このイベントを企画した京都の学生たちも同じように、「何か」を抱えて学業に励んでいたように思います。
2018年10月26日、龍谷大学深草キャンパス・顕真館において、
自然災害をみつめ、悲しみをともに感じ、希望へとつながる機会となれば、と「悲しみと希望の芸術祭」というイベントが学生主催で開催されました。
スペシャル音楽イベントとして七尾旅人さんをゲストにむかえ、被災地でのボランティアの様子を伝えるパネル展示、ボランティア活動報告、中東のリアルを映す写真展「あなたと私と考える写真展」も同時に開催され、多くの方で大学は賑わっていました。その様子をレポートさせていただきます。
<開催趣旨>
「悲しみと希望の芸術祭」
過去から未来へー昨日から明日へー悲しみから希望へー
今年は日本において相次いで、自然災害が起こりました。また自然災害だけでなく、世界各地では紛争の問題も深刻化している状況にあります。遠い地域のことは関係ない、と思うこともあるかもしれません。
しかし、災害も争い事も決して他人事ではありません。もしかしたら、あなたの身近な方も「悲しみ」を抱えているのかもしれません。
LIFE SONGSでは、音楽を通して「いのち・人生」を考える時間を共に過ごし、一人ひとりが自分の人生を考えられたらと思い、お寺で音楽イベントを開催しています。この度の「悲しみと希望の芸術祭」では、スペシャルゲストをお迎えし、いのちをみつめる音楽ライブを開催いたします。
また、龍谷大学宗教部第43回懸賞企画入選の中東のリアルを写した「あなたと私と考える写真展」を開催し、龍谷大学ボランティア・NPO活動センターの方々からボランティア活動の現状を伝えていただきます。
日本や世界の現状を知っていただき、悲しみと共に、希望という小さな一歩を踏み出せる、そんな時間を過ごせたらと思っています。
LIFE SONGSプロジェクトチーム
–静けさと荘厳な雰囲気が参加者を包み込む。
司会の龍谷大学大学院実践真宗学研究科3年生の原田真哉さんは
「僕自身、広島県の出身で、この夏の水害で、隣の町が大きな被害を受けており心を痛めていました。泥かきに何度も行ったりしました。
今日は音楽を通して、自然災害をみなさんとともに考える一日になってほしいです。」
通常の音楽イベントではあまりきくことのない、僧侶によるお経が読経され、
会場は静寂さと僧侶の読経の声であふれ、力強くも穏やかな時間が流れていました。
来場者はそれぞれに、いのちをみつめる時間をすごされていました。
始まりの挨拶をしてくださった、龍谷大学の文学部教授、鍋島直樹先生は、
「悲しみをどのように受けとめていくか。そしてその悲しみをどのように、希望に変えていくか、そんなことを想いながら今日の時間を過ごしてほしいです。
実は、この企画を主催しているLIFE SONGSさんは、南三陸町でも演奏をしてくださっています。歌を通して多くの方の心と語らうことをしてくださっています。
この度、私は歌いませんが、今日はみなさんに私からはこの言葉をお贈りさせていただきたいと思います
『涙は愛情の証 あなたの流した涙を未来の種に注ぐことができれば、いつかきっと幸せの花を咲かせることができるにちがいない』」
–大変だとわかっていても、何もできなかった自分
続いて、龍谷大学大学院実践真宗学研究科大学院生の2年生宗本さんは、西日本豪雨における被災地での継続されたボランティア活動報告をしてくださいました。
山口県下松市出身の宗本さんは、ある日、お母さんより
「下松が大変なことになっちょーー!」
という言葉と、一枚の写真が携帯に送られてきたそうです。
線路が豪雨の影響で崩れ落ちていて、土砂が流れ込んできた衝撃的な写真でした。
2018年の災害を振り返ってみると……
・大阪北部地震(6月)
・西日本豪雨(7月)—広島岡山が中心に被害
・台風21号(9月)—関西国際空港の封鎖
・北海道胆振東部地震(9月)
ニュースでも多くの報道がなされていたように、大きな自然災害がつづき、日本の各地が大変な状況となっていました。
宗本さんは、
「そんな大変な状況になっていて自分自身焦っていたり、不安になったりする気持ちも多くあったが、実際に何ができたかというと、何もできてないという自分がいた。それがなんとなく、いやで、違和感をずっと感じていました」としずかに語ってくださいました。
そこから、大学院の先輩や先生に相談に行き、いろんな方からアドバイスをもらってボランティア活動を始めた、とのことでした。
実際の活動は?
・募金箱の設置
・岡山県真備町でのボランティア活動
・広島県坂町・呉市天王町—幼稚園の遊具の片付けや木の伐採作業
広島県での災害の時には、遠く熊本県からもボランティアに来られていたようです。熊本の方達は「自分たちも大変だった時に助けてもらったから、自分たちも何かしたい!」そう思い、ボランティアにきてくださったようでした。
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人と人との直接的な繋がりが境を越えて、さらに、つながりを生む。
やさしさがつながり、れんさを生んでいくような気がしました。
–やさしさに包まれる時間
学生ライブとして、経済学部3年生・山瀬菜々子さん、経営学部3年生・保木真優さんのお二人が美しい歌声を披露してくれました!
「台風の時に、福井県にいて電気も止まって水も止まってしまって、そういう経験が初めてだったので驚いたのと、大変だった。
それがずっと続いている現地の方の思いを想像した。
今までは、テレビで見て大変そうだなぁと思うだけだったのですが、そのことを経て、より現実的に自然災害の大変さを感じられるようになりました。
今日の機会が、みなさんにとってのひとつのきっかけになればと思います」
『月のワルツ』諫山実生
『Drifter』キリンジ
「この歌には、『あなた』がたくさん登場してきます。みなさんもきっと大切な人がいると思います。
生きている中で思い通りにならないことが多くあるとはおもうんですけど、大切な『あなた』がいたら、それだけでも乗り越えられるんじゃないかというメッセージが込められていると思います」
顕真館の広い空間に美しい歌声と、ギターの音が響きわたり、あたたかな時間となりました。このお二人は、後半スペシャルゲスト七尾旅人さんとの特別コラボレーションもはたされました! その様子も、次回レポートで。
–劣化しない、活動のいま。
2011年から現在まで、続くボランティア活動
龍谷大学ボランティア・NPOセンターの方々によるボランティア活動の報告
東北でのボランティア活動は、2011年から今年まで継続して行われています。
龍谷大学4年生の西山さんによるボランティア活動紹介も行われました。
石巻市で2011年から2018年まで長きにわたり、活動をされているとのことです。
現地の方が当時の津波のことや地震のことを辛いながらもしっかりと話してくださり、津波の実態のことやその人のかかえる悲しみのことを伝えてくれていることが、学生ボランティアの皆さんはありがたい、と話してくれました。
「ここで亡くなった人たちの死を無駄にしたくない、という思いから語ってくれる。私たちもこれからも継続して、その思いを伝えていきたい」と登壇されていました。
龍谷大学ボランティア・NPOセンターの方々によるボランティア活動の報告は顕真館の外でもパネル展示がされ、多くの方が実際の現状を知る機会となっていました。
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背伸びをした、支援ではなく、学生さんの等身大での自然災害やボランティアにのぞむ想いを報告や歌をとおして伝わってきました。
次回は、中東のリアルを映す写真展「あなたと私と考える写真展」、お念珠作り、スペシャルゲストの七尾旅人さんについてなど、レポートさせていただきます。
お楽しみに!