お寺の空間は可能性の宝庫?|イベントスペース活用事例ー京都府一念寺

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image2一念寺さんの様子
 
「お寺でできる100のことーお寺の活用事例集ー」では、様々なお寺で行われている取り組みを紹介します。
気になっているお寺を訪ねてみたり、今後の活動の参考にしたい!など、あなたの人生を豊かにするお寺の新たな活動を見つけてみてください。
前回は、3回にわたって京都市の明覺寺さんの取り組みをご紹介いたしました。
今回も、同じ京都市にある一念寺(いちねんじ=京都府京都市下京区柳町324)さんの取り組みを3回にわたってご紹介します。
 
一念寺さんでは、積極的にイベントスペースとしてお寺の本堂や施設を活用してもらっているそうです。ご住職はどのような思いを持ってイベントスペース活用の取り組みをされているのでしょうか?そのノウハウや注意点を伺いました。
 
image3本堂での講演会の様子お寺で、平和を学ぶ —ダイアログ・イン・テンプル
 
イベントスペース活用を始めた経緯は?
 
「社会のために役に立つ事が大事かなと思っていて、元々からそういったことはしたかったんですよ」と話される谷治暁雲(たにじ ぎょううん)住職。お寺を貸し出すという取り組みは、10年ぐらい前から始められたそうです。その背景には、地域活動の拠点、特に福祉的な活動の拠点になるのではないかという住職の思いがありました。具体的に活動が始まったきっかけは、2008年、リーマンショックが起こり、ホームレスになってしまった方がたくさんおられた時に行なった炊き出しでした。炊き出し自体は京都駅周辺で行われましたが、活動の拠点として一念寺が活用されました。この活動がきっかけで、多くのイベントを引き受けるようになったそうです。
 
大切にするべきことは?
 
イベントスペースとしてお寺を活用する際に、大切にされていることや工夫されていることをお尋ねしました。
 
・庫裏(居住スペース)とイベントスペースを分ける
当初は同じ階層(1階)に居住空間(庫裏)とイベントを行うスペース(本堂と庫裏の一部)があったそうですが、現在は居住空間を2階に移転させ、1階は庫裏も含めて全て貸し出せるようにしているそうです。間取りに関しては、各寺院で大きくことなるでしょう。しかし、居住空間とイベントスペースをきちんと分けることで、防犯対策にもなる上、イベント企画者や参加者にとってわかりやすくなるメリットがあります。
 
・住職やお寺のスタッフがでしゃばりすぎない
谷治住職は、イベント運営に関しては「無理をしない」という方針を貫かれています。そこにはイベント企画者の主体性を確保するという側面もありますし、住職が動きすぎて、万が一体の調子が悪くなってしまった時に企画そのものが止まらないようにするためでもあります。ただ、全てをイベントの運営者に委ねるのではなく、準備段階も含めて数回は住職が立会い、お寺の設備を説明したり、住職が行える範囲の打ち合わせをしているそうです。
 
・イベンターの希望をなるべく聞く
そして、場所を貸し出す際はイベント企画者の希望をできるだけ聞くということを大切にされています。例えば展示のイベントを行う際に、ライトの配置をなるべく自由にしてもらうようにしているそう。柔軟に対応をすればするほど、寺院の設備が損壊するリスクが高くなりますが、そこは「寛大に対応してゆく覚悟が必要」と話す住職。寺院の設備をあまり傷つけたくないのであれば、その方法を企画者と考えることも必要でしょう。企画者としっかりコミュニケーションを取り、折り合いをつけることがイベント時のトラブル回避にもつながります。
 
image4本堂での講演会の様子お寺で学ぶ認知症の方との接し方
 
気をつけることは?
 
また、イベントスペースを行う上で気をつけるべき点を伺いました。
 
・何でもかんでもスペースを貸さない
こうした活動を続けていると、「こんなイベントをやりたいがどうか?」と貸し出しの打診が多くあるそうです。しかし、「何でもかんでも貸しているわけでは無い」と話す住職。政治的に偏ったイベントや、お寺にそぐわないイベントはお断りしているそう。一方で、地域の問題や福祉の問題について取り扱うイベントであれば、主催者が政党であっても任意団体であっても良いとしています。ポイントは「誰でも参加できるイベントかどうか」だそうです。各寺院で、イベント企画を承認する判断基準があるとスムーズです。
 
・火事と盗難には特に気をつけて
一番のリスクは何かをお尋ねすると、「やっぱり火事と盗難と破損ですよね。怖いですそれは……」と正直な思いを話される住職。やはり不特定多数の人を招き入れる以上、そうしたリスクを避けて通ることはできません。
ただ、いくら対策を施しても最後は使用者(主催者)を「信じるしかない」といいます。ただ、日頃から住職が大切に取り扱っている物は、自然とイベント参加者も丁寧に取り扱ってくれるそうです。これはお寺の大切な物だという事を、住職自身が行動で示すことが大切なのかもしれません。
 
・光熱費と利用料金は?
最後に費用面についてもお尋ねしました。「やっぱり電気代などの光熱費はかかる」と谷治住職。ただ、イベントスペースで利益を得ようとは考えていないそうです。
学生によるイベントの活動を後押ししたいという思いがあり、料金は1日5000円程度とあまり高い値段には設定していないとのことです。例えば、龍谷大学の大学院生が主催のイベントも開催しています。学生が集う京都ならではの視点ではないでしょうか?光熱費は地域や寺院の規模に応じて変化しますし、利用料金も寺院のある地域の性格によって相場が変わってくることでしょう。費用面も慎重に検討する必要がありそうです。
 
一念寺 谷治暁雲住職の声
 
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私は「自他共に心豊かに生きる」(浄土真宗本願寺派の目的のひとつ)という言葉がすごく好きで、その言葉を大切にしつつ、みんなで幸せになれたらいいなと思っています。そういう社会のために役に立つ仕事が大事かなと思って、イベントスペースの貸し出しをはじめました。
イベントスペースを通して、地域とのご縁も広がりました。ただ、普段から自分の中に地域と協力して社会貢献をしてゆくという方向性を持つ事がとても大事ではないかと思っています。お寺という性格上、突然企画の相談を持ち込まれることもあります。一方で、お寺でイベントを行うことに反対される方もいらっしゃいます。
そうしたときに、しっかりとした方針を持っていれば慌てずに対応することができるのではないでしょうか。
 
一念寺さんの取り組み、第1回はイベントスペース貸し出しの取り組みを紹介いたしました。「お寺の空間は可能性の宝庫」と表現する谷治住職。本堂や庫裏の広いスペースでは、様々なイベントを開催できるでしょう。
しかし、人が多く集えば集うほど抱えるリスク(損害、盗難、費用等)は大きくなります。各寺院で持ち込みイベントを行う際は、その効果とリスクをしっかりと見極めることが大切なのではないでしょうか。
次回は、一念寺さんで行われている「ペットの譲渡会」について取りあげます。(近日公開予定です)
 
   

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掲載日: 2020.01.21

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