コーヒー薫るお寺の空間は、未来に繋がる地域のハブに|「法城寺コーヒーセミナー」―北海道法城寺
(画像提供:舛田さん)
北海道むかわ町。海と山、温泉と自然豊かなこの町に、コーヒーの淹れ方を学ぶことができるお寺があります。北海道の浄土真宗本願寺派のお寺 法城寺(ほうじょうじ)では、お寺の空間を活用して「法城寺コーヒーセミナー」という催しが開かれています。これは、いったいどんな催しなのでしょうか?
法城寺住職の舛田那由他(ますだ・なゆた)さんにお話を伺いました。
コーヒーを通して、地域の未来を考える場
(画像提供:舛田さん)
――「法城寺コーヒーセミナー」とはどういった催しなのでしょうか?
舛田:法城寺コーヒーセミナーとは、お寺でコーヒーソムリエの方からコーヒーの淹れ方を学ぶことができる催しです。催しを通して、美味しいコーヒーの淹れ方を学ぶだけでなく、地域やご門徒の方々との交流のきっかけにもなっています。
最大で20人の参加枠を設けていますが、ありがたいことに毎回満席になる、人気の催しです。
――どういったきっかけで始められたのでしょうか?
舛田:数年前、私がコーヒーの美味しさに気付いたというのがそもそものきっかけです。実は私、コーヒーが苦手だったんです。でも、きっかけがあって、一昨年ぐらいにコーヒーを自分で淹れて飲んでみたら美味しかったんですよ。
それで、もっとコーヒーのことを知りたいと思っていたら、コーヒーソムリエという資格を持った人とツイッターで知り合ったんです。その方はいろんな場所でコーヒー教室を開催したいとおっしゃっていたので、それなら法城寺でやってみませんかと持ちかけ、この催しが実現しました。
――催しの様子を教えて下さい。
舛田:催しは法城寺の大広間で、主に平日の日中に1時間半程度開催しています。
最初に私から挨拶をして、御本尊に全員で合掌礼拝を行います。その後、場合によっては私から5分ほど法話をさせていただくこともありますね。
続けて、コーヒーソムリエの方にコーヒーの淹れ方を教えていただきつつ、参加者の皆さんとコーヒーの試飲会を行います。4種類ほど豆を持ってきてくださるので、飲み比べも出来ます。
その後は、参加者の皆さんと交流会を行います。私やコーヒーソムリエの方が司会をさせていただき、来ていただいた参加者に、普段はどんな仕事や活動をされているのか、これからどういった思いで活動したいのか、といったことをそれぞれお話しいただきます。
最終的には、交流会を通して他人同士だった参加者が顔見知りの関係となり、地域の未来についてコーヒーを飲みながら語り合う場が出来上がる、という流れです。
――催しを通して、他人同士が知り合っていく光景が良いですね。
舛田:それこそがこの催しの良さであり、目的なんです。コーヒーはあくまでもツールの一つであって、この催しの目的は地域の活性化なんです。催しを通して、ご門徒の方と地域の方、あるいは移住してこられた方が繋がり、一緒に胆振の未来について語れる場ができればと思い、この催しを企画しました。実はコーヒーソムリエの方も同じ思いを持っており、たまたまインターネットで知り合うことができました。現代ならではの繋がり方といいますか、ありがたいご縁だなと感じています。
――地域の活性化を目指されているのはどうしてでしょうか?
舛田:人口の減少に対する危機感です。法城寺のある北海道南部のむかわ町という地域は、約7,500人の方々がいらっしゃいますが、近年は急激に衰退しています。人口はこの17年間で約2,500人も減少しました。
お寺を維持するためには、街全体を維持しなければいけません。やはり、町の活性化には人の繋がりが必要だと感じ、こうした催しを企画しています。また、法城寺ではコーヒーセミナー以外にも色んな催しを行っていますし、私自身もお寺を飛び出して地域の色んな活動に参加しています。
当然といえば当然ですが、同じ地域に住んでいても世代が違ったり、職業も違ったりしていると互いに知り合う機会は殆どないんですよね。
催しに対して、参加者の方から「地元に思いを持って活動している若い人がいるのは知らなかった」という感想をいただいたときは嬉しかったですね。