お寺がソーラー発電!?その裏側を覗いてみた|エネルギー事業ー北海道常光寺<前編>
昨今、世界中で大きな関心が寄せられている地球温暖化問題。その対策として、クリーンエネルギーへの転換が模索されています。その代表的なものとして、太陽光発電は有名ですよね。
そんな太陽光発電を事業として行っているお寺があるのをご存知でしょうか。
今回、取材させていただいた北海道美唄市の常光寺では、合計10基のソーラーパネルによって、発電が行われています。他にもあまり例を見ないお寺での発電事業。その経緯や裏側を、住職の杉田英智(すぎた・ひでとも)さんにお伺いしました。
産業構造の変化で、厳しい状況下にあるお寺
(画像提供:杉田さん)
ーー本日はよろしくお願いします。まずは、自己紹介をお願いします。
常光寺住職 杉田英智さん(引用:常光寺公式ホームページ)
杉田 英智さん(以下:杉田):北海道常光寺 第3代住職の杉田英智(すぎた・ひでとも)と申します。1974年、北海道美唄(びばい)市生まれ。お寺の跡継ぎに対する反発や、F1への憧れもあり、高校卒業後は東京にあるレースの養成校に入学するも挫折。その後は京都の中央仏教学院を経て、九州の龍谷短期大学を卒業。1998年から寺院の運営を手伝い、2007年に住職に就任しました。
ーー常光寺さんはどんなお寺でしょうか?
杉田:常光寺は、先々代の開基住職が福井県から北海道に渡り開教した寺院で、1919年に炭鉱業が盛んだった美唄市の我路(がろ)地区に説教所を開設したのが始まりです。
その後、先代住職である私の父親が引き継いだときに炭鉱が廃止され、伴って町も衰退しました。同時期に、我路地区から美唄市の市街地へ寺院を移転し、現在に至っています。
ーーお寺のある、美唄市とはどういった街でしょうか?
杉田:美唄市は、札幌と旭川のちょうど中間に位置する街です。炭鉱業が盛んだった時は10万人くらいいましたが、現在は人口が19000人と激減。依然として人口は減り続けており、予測では40年後に5000人を切るとされています。
美唄市には本願寺派だけで4か寺、仏教寺院全体では合計26か寺あるので、40年後には単純に計算しても5000人を26等分するような形になります。なので、お寺としてもなかなか厳しい状況にあります。
ーーそんな常光寺さんではソーラーパネルによるエネルギー事業が行われていますよね。その概要を教えていただけませんか?
杉田:お寺の敷地を活用して太陽光発電によるエネルギー事業を行っています。常光寺と別法人で運営しているソーラーパネルは道内道外に合計10基設置しており、年間でおよそ80万kWhの電気を発電することが可能です。これは4人家族の年間消費電力量が5,000kWhと仮定すると、年間で約160件分の電力を賄える計算になります。発電した電気は電力会社に売却しており、その収入は年間で約2,000万円です。そこから設置費用等を差し引いた売却益を寺院の運営に充当しています。