お寺がソーラー発電!?その裏側を覗いてみた|エネルギー事業ー北海道常光寺<前編>

 

厳しい将来、その中で見出した太陽光発電事業。

 

(画像提供:杉田さん)

 
ーーどういったきっかけがあり、発電事業を始められたのでしょうか?
 
杉田:私が前住職から運営を引き継いだとき、お寺の会計帳簿を見ていると年々お布施による収入が減っている事実が判明したのが始まりです。
美唄市の人口動態を基に、門信徒の減少数を計算したときに、およそ50年後にはお寺の収入だけで生活できない状態になることが分かりました。それから別の収入の道を探り始め、エネルギー事業の道を見つけたという経緯があります。
 
最初は幼稚園経営や農業、都市部での不動産といった事業を検討していましたが、いずれも人口が減り続ける中では現実的ではないと思い、断念しました。ちょうどそのころ、太陽光発電の固定価格買取制度が始まることをニュースで知り、広大な敷地もあるのでこれなら事業化できるのではないかと思い着手しました。固定価格買取制度を活用することで、ソーラーパネルで発電した電力を定額で買い取ってもらえるようになるんです。
 

太陽光発電事業と並行し、常光寺で行われている配食事業(画像提供:杉田さん)

 
ーー事業を始められるにあたり、門信徒や住民の反対はあったのでしょうか?
 
杉田:事業を始める際、門徒総代と法人役員に相談をしましたが、猛反対されることはなかったですね。2006年に庫裏(くり)を新築した際、ソーラーパネルも設置し、発電量などのデータも取っていました。それも理解していただく要素になっていると思います。
一方、お金儲けをするのは不適切といった批判や「ビジネスマン坊主」といった揶揄はされました。とはいえ、人口の減り続ける美唄市に残り、お寺を維持したいのであれば、現状ではエネルギー事業が最善だと感じ、事業化に踏み切ったんです。
 
ーー事業はどのようにして立ち上げられたのでしょうか?
 
杉田:最初はお金がなかったので、資金調達の方法を含め事業関係の知識を本から学ぶ所から始めました。資金調達には寄付や銀行からの借り入れなど、いくつかの方法がありますが、まずはその検討からですね。
最終的には門信徒の皆さまから年利2%でお金をお借りする形に落ち着き、太陽光発電所を建設しました。
その後は銀行の融資を受け、少しずつ発電所を増やして現在は10基のソーラーパネルを設置するに至っています。
 
ーー合計でどれくらいの費用がかかったのでしょうか?
 
杉田:金額は建設費用が1基あたり平均すると1,500万円くらいでした。それが10基あるので、合計で1億5,000万円ぐらいですね。今建設費用はもっと安くなっています。
 
ーー事業を始められて、どういった成果がありましたか?
 
杉田:おかげさまで、電力は当初の計画通りに買い取っていただいています。門信徒の方々からお借りした資金もすべて返済することができました。現在は売却益を寺院運営に充当していこうと思っています。
また、事業を立ち上げる過程で資金調達の方法や関係法令、運営のノウハウを学ぶことが出来たのが大きな学びだと感じています。お寺の世界ではお金や経営のことを学ぶ機会がほとんどないと思うので、その意味では貴重な機会だったと思いますね。
 
ーーありがとうございました。
 
インタビューは後編に続きます。後編では、太陽光発電の今後のことや、お寺が地球環境に対してできることについてお尋ねしました。
 

   

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掲載日: 2022.10.03

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