子どもたちの暗い食事情に差し込む一筋の“光”|ヒカリ子ども食堂―大阪府光明寺

 
2020年より猛威を振るった新型コロナウイルス感染症による混乱。それは、子どもたちの生活にも容赦なく暗い影を落としました。そんな子どもたちの生活を少しでも支えようと、日々奮闘するお寺があります。
 
この度インタビューさせていただいた大阪府八尾市の光明寺さんでは「ヒカリ子ども食堂」と題した催しを展開されています。これは一体どんな催しなのでしょうか?
光明寺衆徒の釈優希さんこと、中村有希(なかむら・ゆき)さんにお伺いしました。
 

抜群の交通アクセス。大阪府の東にある街。

 

光明寺 中村有希さん(画像提供:中村さん)

 
――簡単に、自己紹介をお願いします。
 
中村有希さん(以下:中村):中村有希と申します。大阪府八尾市、大阪教区川北組の光明寺に所属している僧侶です。SNS等では釈優希(しゃく・ゆうき)という名前で発信しています。母親が光明寺9代目の住職を務めており、私も日々法務等に従事しています。
大学1年生の時にお得度を受け、僧侶にならせていただきました。
 
出身大学は公立で、仏教とは関係の薄い理系の分野を専攻していました。大学卒業後は就職するつもりでいましたが、母親ががんを患い、在学中に法務をするようになったことがきっかけで、卒業後に入寺し、現在に至ります。
 
――光明寺のある、大阪府八尾市はどんな街でしょうか?
 
中村:大阪府八尾市は、大阪市の東隣にある衛星都市です。市の北部を近鉄、南部をJRが走っており、お寺の最寄りはJR久宝寺駅です。最寄り駅から大阪駅や天王寺駅、奈良駅まで乗り換えをせずにアクセスでき、最近は新しい路線が開業したことで新大阪駅とも直結しました。
この通り、交通の便が非常に良く、駅周辺は若い世代に人気の地域で、学校の周辺には新築マンションも立ち並んでいます。
一方、高齢化も進行しており、空き家も散見されます。なので、若い世代と高齢者世代の間の層が少なく、またお寺と馴染みが薄いのが課題ですね。
 

「ヒカリ子ども食堂」とは?

 

(画像提供:中村さん)

 
――「ヒカリ子ども食堂」とは、どういったご活動でしょうか?
 
中村:お寺の本堂を活用して開催している子ども食堂です。毎月、第4月曜日の17時から19時まで、本堂で食事の提供を通した居場所とコミュニティ作りをしています。「子ども食堂」という名称ですが、対象は子どもだけでなく、誰でも来ていただくことができます。食事は、中学生までの子どもが無料で、大人はお一人300円いただいています。2021年6月より実施しています。
メニューは様々で、カレーやハンバーグといったものから、夏にはぶっかけうどん、クリスマスシーズンには唐揚げやケーキも用意しました。
 
――どういったきっかけがあり、ご活動を始められたのでしょうか?
 
中村:地域のコミュニティが全然なかったのと、新型コロナウイルス感染症がきっかけです。新型コロナウィルスの流行で、子どもたちが集える場や、憩いの場がものすごく減ってしまいましたよね。また、経済的にも厳しくなって両親が共働きを余儀なくされ、一人でご飯を食べる子どももいるそうです。また、当時八尾市には子ども食堂が1箇所しかなく、しかもそこはお弁当を持って帰ってもらう方法を取っていました。
 
やっぱり、一人でご飯を食べるのは寂しいですよね。なので、そういう人たちに一人でも来てもらい、みんなで楽しくご飯を食べてほしいと思い、活動を始めたんです。
 
活動開始が2021年ということで、まだまだ新型コロナウイルスが猛威を振るっていました。
正直なところ不安もありましたが、今しかないと思い実施に踏み切りました。
 
――勇気のあるご決断ですね。
 
中村:そうですね。子どもたちが過ごす1年はすごく貴重で、当然ですが二度と戻ってきません。そんな大切な時期に、1人で寂しくご飯を食べるのは悲しいですよね。子どもたちに「今」を大切に生きてほしいと強く思い、開催を決断しました。
 
――準備から初回を迎えるまで、どういった様子でしたか?
 
中村:まずは八尾市の市役所に補助金の申請を行い、その後は広報を行いました。急に子ども食堂を始めても、なかなか信頼をしていただけないと思ったので、実施の2か月前から近隣のスーパーでチラシをお配りしたり、市内の掲示板にチラシを掲載したりしました。また、以前から行っているInstagram等のSNSでメニューの告知も行いましたね。
 
最初は母と2人で行い、カレーを振る舞いました。初回は3人しか来ませんでしたが、そこから徐々に口コミで広がり、1年後には約30人、最近では約50人の子どもたちに来ていただけるようになりました。
 
――どういった方が参加されていますか?
 
中村:小学校3年生までの子どもたちが、友だちと一緒に来ることが多いですね。他には、幼稚園の年長の子どもたちが親御さんと一緒に来ることもあります。
 

誰一人として支援の手から漏れることの無いように。

   

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掲載日: 2023.02.21

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