老展 06
「老」といわれるとどんなことを思い浮かべられるでしょうか。2015年7月、2日間にわたって京都の一念寺を会場に「老」をテーマとした老展が開催されました。お寺を会場とした老展、今回はその中の作品をご紹介させていただきたいと思います。
タイトル わたしとあなた
龍谷大学大学院文学研究科 清水正奈美
キャンバス、色鉛筆|455㎜×333㎜
【作者の作品紹介】
この絵は、お釈迦さまの涅槃(ねはん)の場面をイメージしています。涅槃とは、お釈迦さまが亡くなる場面を描いたもので、今回のテーマとは離れているように見えると思います。しかし、「老」というテーマを聞いた時、一番に浮かんだのがこの仏さまのお姿でした。まるで誰か、何かの隣で添い寝をしているように見えたのです。
この姿が、老いていく中で、死に寄り添って生きていくとき、私たちの側にはこうやって添い寝してくださる仏さまがいらっしゃるのではないか、と思い描くことにしました。涅槃に入るとき、お釈迦さまも歳を重ねられた老人でした。そして優しく眠るように涅槃に入ったと、私は思っています。沢山残された涅槃図のお釈迦さまが、全て優しく微笑んでいるのもその所以かもしれません。最後のその時に笑顔で居られるように歳を重ねること、それが「老」ではないかと思います。
【作者の「老」のイメージ、考え方】
人にはそれぞれ、タイムリミットがあると思っています。それに近づいていくのが「老」。老いていけば、一番に直面する恐怖は「死」になるのかもしれませんが、老いていくことで死ぬこととは寄り添っていけるようになるのかな、と思うのです。
昔はわからなかったことが、大きくなったら分かるのと同じで、歳を重ねたら、今見ている景色とは違うものが見えるようになるのかと思うとわくわくします。
2015.10/5更新