【尼僧酒馬】ここにいるだけでそれでいい。馬を通して「役割」を考える
2020年1月よりプロジェクトが始まった「尼僧酒場」。これまで他力本願.netでも2回取材をさせていただきました。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、尼僧酒場もオンラインでの実施に。そして今回は、なんと兵庫県淡路島のとある厩舎からのライブ配信となりました。「尼僧酒場」ならぬ「尼僧酒馬」!?そのライブ配信の様子をレポートしました。
尼僧酒場の詳細についてはこちらもご覧ください!
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今回、ライブ配信が行われたのは兵庫県の淡路島にある、「シェアホースアイランド」。2頭の馬が暮らすこの場所では、かつては暮らしにおけるパートナーであった馬を、現代に合った形で取り入れる方法を模索されています。(シェアホースアイランドの詳細は、公式webサイトもご覧ください。)
馬がすごく好きだという唐溪 悦子さん。シェアホースアイランドの応援企画として、同所で活躍されている山下 勉(やました つとむ)さんと、家族会議から国際会議まで、あらゆる会議のファシリテーターを担う青木 将幸(あおき まさゆき)さんの3人でトークセッションを行いました。
トークセッションの様子。左から順番に、山下 勉さん、唐溪 悦子さん、青木 将幸さん。背後では元競走馬の「アネロワ」が食事中。
「役割」って必要なの?
シェアホースアイランドで暮らすアネロワ。実はかつて競走馬でした。しかし、成績は思わしくなく、レースでは一勝もできなかったそう。競走馬としての役目を終え、ここへやってきたといいます。こうして余生を過ごせる競走馬はほんの一部で、ほとんどは殺処分をされてしまう運命にあります。競走馬における決まりと言えばそれまでですが、「勝てないものは要らない」という悲しい現実がそこにあります。
これに対し、「人間社会でも同じことが言えるのではないか」と唐溪さん。その背景には寺院の一人娘として育ち、寺院を継承していく者としての意義探しに縛られていた過去がありました。
役割について、青木将幸さんは役割から自由になるのは難しいのかと投げかけた上で、「例えば桃太郎の演劇をするときに、桃太郎の役を振られて喜ぶ人もいれば、それが腑に落ちない人もいる。世の中には役割を担うことで輝ける人も居れば、重荷になっている人もいるのでは」とお話しされました。
寺院の継承に重みこそ感じていなかったものの、役割を持てないことに辛い思いをされたという唐溪さん。「役割を見つけられないならそこに居てはいけないというのは暴力的ではないか」と問いかけました。
農耕馬の風月(ふうげつ)
一方で、競走馬としての役割を失ったアネロワ。2年前にここシェアホースアイランドにやってきましたが、山下さん曰くここ2年間は「ただ食べてるだけ」だったそう。というのも、シェアホースアイランドにはもう一頭、風月(ふうげつ)という名の農耕馬がいます。サラブレッドのアネロワは繊細な性格の持ち主で、乗馬や触れ合いは難しい部分も。となると、結果的に安定感のある風月の方に出番が偏ってしまったといいます。
それでも問題ないと話す山下さん。シェアホースアイランドでは、「いまここにある」を大切にする場作りを目指しており、「生きているだけでも十分なんですよ」と伝えられる機会をもっと広めていきたいとのことです。
新型コロナウイルスで問い直される「役割」
その後、トークセッションは新型コロナウイルスの話題に。新型コロナウイルスの影響でシェアホースアイランドも観光客が激減したといいます。そこで、オンラインで日々の様子を配信したら好評であったとお話される山下さん。自粛によって窮屈な思いをする方々に、自然や動物の癒やしを提供できたのではと振り返られました。配信内容も工夫することで、アネロワも少しずつ出番が増えてきたそう。
新型コロナウイルスについて、「今回の災禍で、役割が分からなくなった人もいるんだろうなと思う」と話す青木さん。人間社会においても突然にして役割を見失うことは誰しもがあり得ることではないかと投げかけられました。
その上で、かつて馬が担っていた役割を振り返ります。「自動車が普及する以前は人やモノを運ぶという馬の役割がはっきりしていて、その役割が自動車の台頭によって失われ、競馬や娯楽としての乗馬へと変わっていった。その意味で、経済とは別の視点から時代に応じて新しい関わり方をデザインしていくのはとても面白いと思います。」と、シェアホースアイランドの取り組みを評価されました。
役割を問い直す上で、これまでの役割は薄れつつある馬についても、乗馬や触れ合いの他に、子どもへの自然教育といった役割を見いだすことができます。繊細な性格を持つアネロワも、「慣れるとデレデレになってくるギャップに惹かれる人もいる」(山下さん談)と、向き合うことで意外な一面に出会えるといいます。
唐溪さんは、馬の役割について「自然と人を繋ぐ役割ではないか」とした上で「自然と人は離れすぎていて、その間に馬という動物が上手に入っている。森だけを接することでは見えてこないものが馬を通して見えてくるのではないか」とお話しされました。
人間の「役割」ってなんだろう
そして、トークセッションは我々人間の役割について考える場へ。「虫や枯れ葉でも生態系の中で役割を果たしていて、人間の方がよっぽど迷惑をかけている」と話される青木さん。地球における人類の役割は何なんだろうと問われました。
これに対して、「人間が嫌いな時期があった」と打ち明けられる唐溪さん。生きているだけで環境を破壊して行く人間のあり方が、自分自身も含めて許せなかったそう。「決してそれが良いことでは無いけれども」と前置きをした上で、「人間のらしさは欲深さにあって、欲深さがあるからこそ何かをなし得るのではないか?」とお話しされました。
改めて自身と向き合う中で得られた気づきであったといいます。人間の役割について「あるとするならば、自分の気持ちや状態を理解することが人間の役割ではないか」と考えを示されました。
唐溪悦子さんとアネロワ
資本主義的な価値観で見れば役に立たないものも、別の角度から見れば新たな役割や気づきを見出すことができます。究極的には、ただそこにいるだけでも一つの役割となるのです。今回の尼僧酒馬(場)では、そんな気づきを得られました。
今後、尼僧酒場は主にオンラインでの開催に切り替えていくとのこと。尼僧酒場の情報はこちら(Facebookページ)もご覧ください。
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<シェアホースアイランドについて>
「シェアホース」とは、かつてのくらしのパートナーであった馬を、
今の時代にあった形で生活に身近なところに
「楽しく」取り入れていくライフスタイルのことを言います。
くらしに馬を
人と馬とのハートフルな関係性をくらしに身近なところに取り戻す。
そのことはきっと私たちに様々な豊かさや気づきをもたらしてくれるはずです。
私たちは、かつて馬産地であった淡路島から1000年単位のスケール感で、
馬と共生する時代、馬を軸にしたコミュニティ、これからの馬事文化を創造していきます。
<組織概要>
名称: SHARE HORSE ISLAND (シェアホースアイランド)
代表: 山下 勉
所在地: 兵庫県淡路島洲本市五色町都志
主な事業内容: 馬とのふれあい体験業(第一種動物取扱業/展示)・馬事文化に関する企画運営業・プロデュース業・グッズ販売業・飲食業・キャンプ場などの運営業 など
あわじシェアホースクラブとの関係
あわじシェアホースクラブは、代表の山下が洲本市の地域おこし協力隊時代に、淡路島の名物獣医である「往診は馬にのって」の山崎博道先生と共同で起ち上げたクラブです。(一般的な乗馬クラブとは異なります。)
SHARE HORSE ISLANDは、その活動の中から生じた事業活動を推進していく組織です。
これからもあわじシェアホースクラブの一員として互いに連携しながら「くらしに馬を」のビジョンの実現を目指します。(公式webサイトより)
公式webサイト▼
http://share-horse.com/
公式Facebookページ▼
https://www.facebook.com/sharehorseisland
新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、尼僧酒場もオンラインでの実施に。そして今回は、なんと兵庫県淡路島のとある厩舎からのライブ配信となりました。「尼僧酒場」ならぬ「尼僧酒馬」!?そのライブ配信の様子をレポートしました。
尼僧酒場の詳細についてはこちらもご覧ください!
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今回、ライブ配信が行われたのは兵庫県の淡路島にある、「シェアホースアイランド」。2頭の馬が暮らすこの場所では、かつては暮らしにおけるパートナーであった馬を、現代に合った形で取り入れる方法を模索されています。(シェアホースアイランドの詳細は、公式webサイトもご覧ください。)
馬がすごく好きだという唐溪 悦子さん。シェアホースアイランドの応援企画として、同所で活躍されている山下 勉(やました つとむ)さんと、家族会議から国際会議まで、あらゆる会議のファシリテーターを担う青木 将幸(あおき まさゆき)さんの3人でトークセッションを行いました。
トークセッションの様子。左から順番に、山下 勉さん、唐溪 悦子さん、青木 将幸さん。背後では元競走馬の「アネロワ」が食事中。
「役割」って必要なの?
シェアホースアイランドで暮らすアネロワ。実はかつて競走馬でした。しかし、成績は思わしくなく、レースでは一勝もできなかったそう。競走馬としての役目を終え、ここへやってきたといいます。こうして余生を過ごせる競走馬はほんの一部で、ほとんどは殺処分をされてしまう運命にあります。競走馬における決まりと言えばそれまでですが、「勝てないものは要らない」という悲しい現実がそこにあります。
これに対し、「人間社会でも同じことが言えるのではないか」と唐溪さん。その背景には寺院の一人娘として育ち、寺院を継承していく者としての意義探しに縛られていた過去がありました。
役割について、青木将幸さんは役割から自由になるのは難しいのかと投げかけた上で、「例えば桃太郎の演劇をするときに、桃太郎の役を振られて喜ぶ人もいれば、それが腑に落ちない人もいる。世の中には役割を担うことで輝ける人も居れば、重荷になっている人もいるのでは」とお話しされました。
寺院の継承に重みこそ感じていなかったものの、役割を持てないことに辛い思いをされたという唐溪さん。「役割を見つけられないならそこに居てはいけないというのは暴力的ではないか」と問いかけました。
農耕馬の風月(ふうげつ)
一方で、競走馬としての役割を失ったアネロワ。2年前にここシェアホースアイランドにやってきましたが、山下さん曰くここ2年間は「ただ食べてるだけ」だったそう。というのも、シェアホースアイランドにはもう一頭、風月(ふうげつ)という名の農耕馬がいます。サラブレッドのアネロワは繊細な性格の持ち主で、乗馬や触れ合いは難しい部分も。となると、結果的に安定感のある風月の方に出番が偏ってしまったといいます。
それでも問題ないと話す山下さん。シェアホースアイランドでは、「いまここにある」を大切にする場作りを目指しており、「生きているだけでも十分なんですよ」と伝えられる機会をもっと広めていきたいとのことです。
新型コロナウイルスで問い直される「役割」
その後、トークセッションは新型コロナウイルスの話題に。新型コロナウイルスの影響でシェアホースアイランドも観光客が激減したといいます。そこで、オンラインで日々の様子を配信したら好評であったとお話される山下さん。自粛によって窮屈な思いをする方々に、自然や動物の癒やしを提供できたのではと振り返られました。配信内容も工夫することで、アネロワも少しずつ出番が増えてきたそう。
新型コロナウイルスについて、「今回の災禍で、役割が分からなくなった人もいるんだろうなと思う」と話す青木さん。人間社会においても突然にして役割を見失うことは誰しもがあり得ることではないかと投げかけられました。
その上で、かつて馬が担っていた役割を振り返ります。「自動車が普及する以前は人やモノを運ぶという馬の役割がはっきりしていて、その役割が自動車の台頭によって失われ、競馬や娯楽としての乗馬へと変わっていった。その意味で、経済とは別の視点から時代に応じて新しい関わり方をデザインしていくのはとても面白いと思います。」と、シェアホースアイランドの取り組みを評価されました。
役割を問い直す上で、これまでの役割は薄れつつある馬についても、乗馬や触れ合いの他に、子どもへの自然教育といった役割を見いだすことができます。繊細な性格を持つアネロワも、「慣れるとデレデレになってくるギャップに惹かれる人もいる」(山下さん談)と、向き合うことで意外な一面に出会えるといいます。
唐溪さんは、馬の役割について「自然と人を繋ぐ役割ではないか」とした上で「自然と人は離れすぎていて、その間に馬という動物が上手に入っている。森だけを接することでは見えてこないものが馬を通して見えてくるのではないか」とお話しされました。
人間の「役割」ってなんだろう
そして、トークセッションは我々人間の役割について考える場へ。「虫や枯れ葉でも生態系の中で役割を果たしていて、人間の方がよっぽど迷惑をかけている」と話される青木さん。地球における人類の役割は何なんだろうと問われました。
これに対して、「人間が嫌いな時期があった」と打ち明けられる唐溪さん。生きているだけで環境を破壊して行く人間のあり方が、自分自身も含めて許せなかったそう。「決してそれが良いことでは無いけれども」と前置きをした上で、「人間のらしさは欲深さにあって、欲深さがあるからこそ何かをなし得るのではないか?」とお話しされました。
改めて自身と向き合う中で得られた気づきであったといいます。人間の役割について「あるとするならば、自分の気持ちや状態を理解することが人間の役割ではないか」と考えを示されました。
唐溪悦子さんとアネロワ
資本主義的な価値観で見れば役に立たないものも、別の角度から見れば新たな役割や気づきを見出すことができます。究極的には、ただそこにいるだけでも一つの役割となるのです。今回の尼僧酒馬(場)では、そんな気づきを得られました。
今後、尼僧酒場は主にオンラインでの開催に切り替えていくとのこと。尼僧酒場の情報はこちら(Facebookページ)もご覧ください。
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<シェアホースアイランドについて>
「シェアホース」とは、かつてのくらしのパートナーであった馬を、
今の時代にあった形で生活に身近なところに
「楽しく」取り入れていくライフスタイルのことを言います。
くらしに馬を
人と馬とのハートフルな関係性をくらしに身近なところに取り戻す。
そのことはきっと私たちに様々な豊かさや気づきをもたらしてくれるはずです。
私たちは、かつて馬産地であった淡路島から1000年単位のスケール感で、
馬と共生する時代、馬を軸にしたコミュニティ、これからの馬事文化を創造していきます。
<組織概要>
名称: SHARE HORSE ISLAND (シェアホースアイランド)
代表: 山下 勉
所在地: 兵庫県淡路島洲本市五色町都志
主な事業内容: 馬とのふれあい体験業(第一種動物取扱業/展示)・馬事文化に関する企画運営業・プロデュース業・グッズ販売業・飲食業・キャンプ場などの運営業 など
あわじシェアホースクラブとの関係
あわじシェアホースクラブは、代表の山下が洲本市の地域おこし協力隊時代に、淡路島の名物獣医である「往診は馬にのって」の山崎博道先生と共同で起ち上げたクラブです。(一般的な乗馬クラブとは異なります。)
SHARE HORSE ISLANDは、その活動の中から生じた事業活動を推進していく組織です。
これからもあわじシェアホースクラブの一員として互いに連携しながら「くらしに馬を」のビジョンの実現を目指します。(公式webサイトより)
公式webサイト▼
http://share-horse.com/
公式Facebookページ▼
https://www.facebook.com/sharehorseisland
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他力本願ネット
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掲載日: 2020.09.10