伝統芸能同好会〜菅原伝授手習鑑〜(後編)
こんにちは!相愛大学伝統芸能同好会の平田かつきです。今回鑑賞したのは【第134回 開場三十周年記念 文楽公演 平成26年4月 国立文楽劇場「通し狂言 菅原伝授手習鑑」第一部】です。その様子を2回に分けて紹介します。
菅丞相(菅原道真)は平安時代の人物です。「菅原伝授手習鑑」は平安時代のお話を江戸時代に浄瑠璃で上演しているのです。このこと自体、私はすごくおもしろいと感じました。
文楽といえば、「曽根崎心中」などのように、リアルタイムで起こった身近な事件を上演するところに大きな特徴があります。だからこそ庶民に大きな人気を博したのです。でも、この「菅原伝授手習鑑」のような演目は、また別のジャンルとなります。昔の出来事で、しかも庶民がよく知っているような事件やスキャンダルをモチーフにしたりもするんですね。
平安時代に生きていた人物たち、平安時代に起こった事件のお話なはずなのに……平安時代の人々が江戸時代の格好をしていたり、平安時代になかった寺子屋で子どもたちが勉強していたり。時代がちぐはぐなのです。時空を超えた娯楽劇になっているのです。
現代の時代劇なら“各時代の背景や服装”は忠実に再現されます。同じことを現代でしたら「服装がおかしい!」「この時代に○○なんてないでしょ!」などの批判が必ずあります。でも文楽はもっと自由でおおらかに楽しませてくれます。
それだけではありません。「菅原伝授手習鑑」では、各地域に語り継がれている伝説を作者が組み合わせ、ややこしい恋愛関係、笑いの要素、人情話などを詰め込み約6時間にも及ぶ大作に仕上げているのです。文楽の創造力は広大です!そして文楽はサービス精神にあふれています!
今回は「庶民の娯楽としての文楽」の本領を観た気がしました。
それにしても、文楽はまるで現代のテレビのようです。江戸時代に生きる人々は文楽をみてどう感じていたのでしょうか。タイムスリップをしてインタビューしに行きたいくらいです。
以上、「菅原伝授手習鑑」を鑑賞して感じたことでした!
【顧問からひと言】
今回は「菅原伝授手習鑑」の“通し”。平田さんも書いていますが、“寺子屋”は時々かけられるものの、“通し”となるとめったにありません。全部観ると、朝10時半から夜9時までかかります。
しかもこれが人間国宝・竹本住大夫の現役引退公演。
平田かつき部長も堪能したようです。
釈徹宗(相愛大学・伝統芸能同好会顧問)
平田かつき
相愛大学、2回生。伝統芸能同好会部長。能楽、歌舞伎、文楽、謡曲、落語などの伝統芸能鑑賞を愛する女子大学生。中学生の頃、テレビで偶然、能楽の吉野天人を観たとき「何!?この美しい衣装!このお面きれい!なになになに!?」と思ったのが、伝統芸能との出会い。そこから関連する本や解説本を読み漁るなかで、他の芸能にも興味が湧き、鑑賞を繰り返す。鑑賞に止まらず、自分でも伝統芸能を体験する活発さをもつ。ラーメンが大好き。