（70代、女性）

玄関先で、野菜の土を落としていた女性。

ご近所でもらってきたものを、これから調理保存するのだという。

芋の部分と根っこの部分とを切り分けながら、女性は、当たり障りのない雑談を続けていらしたのだが、突然、「生きるのって難しいね」と、ため息をつくようにおっしゃった。

これから歳をとると、一人でできていたこともできなくなるのが不安なのだそうだ。

「せっかく津波で助かった命なんだけどね。複雑だね」

そういって笑うと、女性はふたたび作業に戻られた。

作業を続けられる女性の背中を見ながら、この女性が、ご自分の命をどのように感じてらっしゃるのかが気にかかった。

（安部智海）

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