「型破り僧侶と教育NPOで考えるイライラしない子育て」No.1
シリーズ”○○と考える子育てがラクになる講座”
第1回「型破り僧侶と教育NPOで考えるイライラしない子育て」No.1
2017年4月9日(土)に京都市wings京都において、子どもの支援をされているNPO法人D.Live(ドライブ)と僧侶が協力し、子育てについての対談イベントが開催されました。
この日は、NPO法人D.Liveの代表と浄土真宗本願寺派の僧侶が「型破り僧侶と教育NPOで考えるイライラしない子育て」をテーマとして、各々の思いや考えを述べ、参加者が、それぞれの子育てのあり方を考えるような時間となりました。
そこには、子育てという視点から、人生を豊かに生きるヒントが散りばめられていました。
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主催者であるNPO法人D.Liveさんの想い・・・
最近、子育て真っ盛りのあるママさんから「子育てや子どもの教育に関していろんな情報がありすぎてしんどい」と言われることが多いです。本屋へ行くと、多くの子育てや教育本が並び、テレビでも教育に関する番組も多くなってきています。
一体、何が本当に大切なのか?結局、どうやって子育てをしていけば良いのか。
こんな風に悩まれるお母さんもおられます。
しかし本来、子育てはもっと自由で豊かなものではないでしょうか。
こんな自分でもOKという気持ちで、
自分が大事にしたいことを軸に子どもと日々を過ごすことができればよいと思います。
そんな想いで、シリーズ ”○○と考える子育てが楽になる講座”がこの4月からスタートしました!
毎回、”子育て/子どもの将来”に関する多様なゲストをお招きし、
そのゲストの考え方を学び、今の自分に活かせることを見つける講座です。
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第1回 「型破り僧侶と教育NPOで考えるイライラしない子育て」ということで、今回の話題提供者は、浄土真宗本願寺派僧侶・元プロサッカー選手・元経営コンサルタントである、高橋一仁さんとNPO法人D.Live(http://www.dlive.jp/)代表理事 田中洋輔さんの対談でした。その対談の様子を数回にわたり、お伝えしていきたいと思います。
<目次>
①お坊さんと子育てを考える。「自分らしく」とは?
②「生き抜くチカラ」子どもに本当に伝えたいこと。
③「自身の正体」子どもに本当に伝えたいこと
④「教育、共育、響育」子どもと親とのあり方。
⑤「子どもの理由。ガンバるとは。」
最初に、参加者同士がグループになって「名前・お子さんがいる方はその子の年齢、子育てで大事にしていること・大事にしたいこと」を話していただきました。
会場に来られた時はかたい雰囲気でしたが、参加者同士の立場や状況が分かると少しずつ笑顔になり、会場が賑やかな雰囲気に変わっていきました。
そして、僧侶である高橋さんとNPO法人D.Liveの代表である田中さんの対談へと入っていきました……。
——司会者
本日は参加者の皆さんはお客さまとしてではなく、自分なりに子育ての考えを育んでもらえればと思います。
「イライラしない子育て」を大テーマとしてこれからお二人に登壇していただきます。
僕自身、3児の父親として、妻をイライラさせてしまうことがあります。
自分自身では子育てに参加しているつもりですが、それでも、知らないうちに妻へ子育てのストレスをかけてしまっているのでは、と思うことがあります。
今日の会を経て、僕自身も子育てでこういう考え方もあるんだと少しでも、考えられたらなぁと思っています。
それでは、本日のゲストをご紹介します。
子育ての常識を日々問い直す活動をされている、NPO D.Liveの田中さんです。
大阪生まれの田中さんは、かつて野球に挫折し、不登校の時期があったそうです。そこで現在はNPO法人D.Liveという団体を設立され、ご自身の経験に基づき子どもの自尊心を育む活動をされています。
現在、浄土真宗の僧侶である高橋さんは、京都生まれで、学校の先生一家に育たれました。高橋さんは実は多才で、ルーマニアのプロリーグでサッカー選手をやっていたり、東京でコンサルタントをされていました。現在は僧侶として西本願寺の総合研究所でお勤めをされている、とのことです。
——田中さん
D.Liveでは小学5年生〜高校3年生までの子ども向けの教室をしています。
なぜ、そういった活動を始めたかと言いますと、実は私自身も高校大学でしんどい思いをして、多くのことに悩んでいたからです。就職活動の時は世界の子どもを救いたいと思っていました。
現在、日本では不登校が約12万人で、自殺者も約3万人いると聞いています。それくらい、不登校が当たり前の社会になってきているんです。
——高橋さん
中学2年生と中学1年生の2児の父親です。僧侶になる前には、ビジネスやサッカーをしていたので、それについては話せますが・・・教育という分野には携わった経験がないので、何を話せるのか不安なところはありますが、子育てにはとても興味があります。
——司会者
お2人ともありがとうございます。
本日の会は曼荼羅トークというやり方で、対談を進めさせていただきます。曼荼羅トークというのは、webマガジンのgreensの元編集長である兼松さんが考案された、対談方式です。
曼荼羅トークとは、ウェブマガジンgreenz(http://greenz.jp)の元編集長の兼松佳宏さんが、編み出された「沢山の言葉とであいのお土産」があるという魅力的な手法です。、最初に登壇者の方々にキーワードを数個出していただき、参加者の方々に聞きたいキーワードをその中からまず1つ選んでいただきます。また、選んでいただいた参加者の方々には、なぜそのテーマを選ばれたのか少しお話を伺い、それから、登壇者の方々にキーワードを中心にお話を伺っていく。という様な流れで進んで参ります。では気になるものがある方から挙手いただいて、その理由を聞かせていただきます。
今回は「子育てで大事にしたいこと、大事にしていること」というテーマで、6つのキーワードを登壇者からいただいております。
これについて聞きたいことや気になるテーマをみなさんから挙手していただき、ご質問いただきます。その際、選んだテーマとその理由も少しお話しください。
今回の会は、田中さんと高橋さんの2人だけの対談ではなく、参加者の皆様も対談者のお一人ですので、どんどん聞いてみてください。
——参加者女性
「自分らしく」というキーワードが聞きたいです。
自分らしくやっていくことが、私も大切だと思っているからです。
——田中さん
結局、なにがしんどいかって言うと比較なんですよね。
ある調査では、自分の収入が平均よりも低くても、周りが自分よりも低いと満足感が高いのです。
僕は、教育に関わるNPO法人を運営していますが、教員免許を持ってないんですよ。けど、一緒に働いている仲間は教員免許を持っているんです。すると、授業とかがうまくいかないとき、「教員免許持っていないし、自分はダメだ」なんて比較して落ち込むのです。
けど、ある時にそう思うのをやめました。比較するのをやめたのです。
とにかく、自分にできることをしよう、と思いました。
——高橋さん
確かに、‘自分らしさ’は大事ですね。「自分ならでは」とか、「自分にしかできないこと」など、サッカーやビジネスをやっている時によく言われました。
だけど、あまりに‘自分らしさ’に拘りすぎると、しんどくなることはないですか?
仏教では「諸行無常」ということを言います。全てのものは変化、消滅し、固定的なものは無いと説きます。つまり、固定的な自分というものはない、ということですね。
また、人間(にんげん)と書いて、人のあいだ、人間(じんかん)と読むことができると、ある思想家が言っていました。
少し飛躍させて考えてみると、人間は人と人の間に自分をみたり、もっと言うと人を越えてあらゆるものとの関係そのものを、生きる生き物だということかもしれません。
合わせて考えると、私たちは常に変化し続ける関係を生きていくということになる。だから、あまり最初から固定的な自分に拘って生きていくというよりも、様々な関係の中で変化、成長していく自分を楽しんでいく、という感じでいいんではないでしょうか。
サッカー選手時代にも、自分らしさに拘りすぎて、良いプレーができないことが度々ありました。その時は自分が考える‘自分らしさ’というものを一度置いておいて、先ずはその場に適応したプレーを心がけ、結果として`自分らしさが出てくることを待っていました。
——田中さん
「自分らしく」って、勝手ににじみ出るものだと思うんですよね。龍馬伝の音楽を手がけている佐藤直紀さんのお話なんですけど。作曲を始めた頃は「佐藤さんらしい音楽を作ってくれ」と、ずっと言われていたらしいのです。でも、「じゃあ」と言って、テクニックをどんどん入れて作ると「キミの発表会じゃないぞ」と言われる。悩みながら、試行錯誤をずっと続けていったら、「この音楽は、佐藤さんにしか作れないものですね」と、言われるようになったそうなんです。
気がつけば、自分らしくなってきていた。意識していなかったのに。
——高橋さん
そうですね。
あと、僕にはまだ「親らしく」っていうのもよくわからない。何が親らしいということなのか。ただ一人の人間として子どもと共に生きていく、という感じです。
——司会者
お二人の話を聞いていると、「自分にできることをしよう」、という田中さんのアプローチと高橋さんのおっしゃる、「諸行無常」とかが一見、別のことに聞こえていたんですけど、実は繋がってる気がしました。
次回は「生き抜くチカラ」「自信の正体」子どもに本当に伝えたいことです。
2017.6/19 更新