お互いさまの関係性が生みだすものー龍谷大学実践真宗学研究科の木本さんにインタビュー

 

37135

 

 

「愚痴」はもともと仏教語で、煩悩の一つと示されます。一般的には悪口や弱音というようにネガティブに捉えられがちな愚痴ですが、愚痴を本音と向き合うポジティブなものと捉え、気軽に愚痴を言える社会を作っていきたいと考えているグチコレメンバーたち。

 

グチコレ5代目の代表をつとめた木本晃英(きもとこうえい)さんに、仏教における愚痴の考え方、グチコレの活動、木本さんが何故グチコレに携わるようになったのか、相談の傾向について教えてもらいました。

最終回は、グチコレの今後のこと、社会に及ぼす効果について伺いました。 ※全4回の第4回です。

 

愚痴は自分と向き合う面があるー龍谷大学実践真宗学研究科の木本さんにインタビュー

お坊さんとして大切なことを教えてくれるー龍谷大学大学院生の木本さんにインタビュー

気軽に愚痴を言える社会をつくっていきたいー龍谷大学大学院生の木本さんにインタビュー

 

 

 

――お坊さんとして聞くことって大事やと思いますか?

 

 

お坊さんとしてという前に、人としてというところですかね。結果として、お坊さんだったということですね。お坊さんやから聞こうじゃなくてね。人として。普段より、よく話聞いてんなぁと思いますね。とはいえ、僧侶としてのスキルアップのためにグチコレしていきたいとは思います。

 

 

 

――具体的にはどういうことですか?

 

 

社会の声によって、自分たち僧侶の特徴に気づかされることがありますよね。僧侶自身が、自分たちの価値や魅力に気づいていないことが多いです。

 

たとえば、社会一般では皆、背伸びして生きているが、真宗の僧侶の世界は愚かさを見つめ続けることに価値がある。地で生きていいんだ、素でいいんだ、というのが社会から見ればすごく貴重なことだと思います。グチコレの活動を見ていてそう感じます。

 

図4

 

またお互いさまの活動だなとも思っています。普通グチを話す方は相手に悪いと思っちゃいますが、グチコレの場合は若手僧侶の聴く訓練のお手伝いをしていると思えば、気兼ねなく話せますしね。お互いに持ちつ持たれつな関係がよいですね。

 

お世話になっている先生が以前にグチコレについて「お互いさまに愚痴なる存在であるから、アドバイスをするのではなく、対等に聴くことができるんだね」と言ってくれました。まさに、持ちつ持たれつの活動だと思っています。

 

 

――「お互いさまに愚痴なる存在」ってお互いに謙虚さが出てていいですね。それは少し社会の物の見方とちがうなぁと聞いていて思いました。

会社だと、上司、部下の関係、依頼する、される側の関係となるとどうしてもどちらかが上で、どちらかがしたの印象を持ってしまいます。

なんか、深いですね!お坊さんが考えた、活動って感じですね!笑

実際は、お坊さんの格好でしているんですか?

 

 

実はまだまだ考え中のこともあって、布袍(ふほう:お坊さんの格好の一つ)を着ていたら相談しやすいのか、しづらいのか?ということとか。

 

今は私服ですることが多いんですが、布袍に変えたら、どうなんだろう?とか。

きっと第一印象は変わるだろうなぁと。まだまだ、模索中なところですね。

 

――路上で活動されていると、何やってんの?って言われませんか?

 

 

まぁ、あやしいですよね。「大学院で学んでいる、学生が愚痴をきく活動をしています」と基本的にはお伝えしてますね〜。

 

 

基本的に私服で活動をしているのですが、来談者の方に聞かれたときに「実はお坊さんなんです」と答えると妙に納得されます。最初は路上に出ることに少し不安もあったのですが、社会の僧侶への期待は、捨てたもんじゃないなと励みに感じています。

 

DSCF5348

 

――長くグチコレ活動をされていますが、課題ってあるんですか?

 

 

題ですか……そうですね。人が集まらないときですね。

この間も1時間2人とか。そうすると、モチベーションが下がってしまいますね。待ってる側とか。

 

この間、金曜に大阪の御堂筋沿いにある津村別院というところでやってみて0人でしたね。

 

それでも、0人でもやることが大切。と考えてくれている子がいるので活動は小さくてもやり続けています。反対に1時間、2時間という間、愚痴を聞くこともたまにあります。

 

 

 

――今後の展開として考えていることはありますか?

 

 

病院や看護師さんの話を聞いてみたい。病院などには、なかなかお坊さんが入っていけないみたいなので、大学院の活動としてお坊さんが自然に入っていくということもしてみたいなぁと。

 

DSCF5360

 

――次の代表も決まったということですが、最後に一言お願いします!

 

 

まず、愚痴を言うことは「たいして問題ない」「それほど悪いことではない」と考えていいのではないでしょうか。愚痴を言うことで、ストレスの発散になっているという面もあるはずです。

 

例えば、「愚痴は言う側にも聞く側にも悪影響を及ぼす」とよく言われますが、「どうしても愚痴りたいぜ!」ってときに、「悪影響だから」って制御しても、逆に心に悪影響なんじゃないかなー。

 

人間は愚痴をこぼすことでその愚かさと病性を少し減らすことができる。凡人は愚痴を我慢するとストレスがたまる。愚痴をこぼすことも大事だし、愚痴をこぼす相手がいることも大切だと思いますね。

それから、本でも映画でもいいので、涙を流して感情を発散させるとスッキリします。人に話しを聞いてもらうのも効果的だそうです。仲のいい友達同士の“愚痴トーク”も、感情を発するには良いことなんですね!

反対に溜め込みすぎるとストレスで体調を崩してしまうこともあります。適度にガス抜きをするという意味で悩みを打ち明けたり、愚痴を言うのも悪くはないでしょうね。

 

 

ぜひ、皆さんも愚痴をいいにきてください!    


 

 

木本さん、インタビューありがとうございました!

愚痴というものを、今まではネガティブなイメージを持っていましたら、人というものを考えていく、自分というものを見ていく、大事な面があるなぁとインタビューを通して思いました。

自分も、相手も完璧な存在!って思うことが前提ではなく、愚痴を抱えた一人の人なんだ、と思うと、なんとなーく心の負担がかるくなった気がします。

 

 

<グチコレについて>

グチコレとは「グチコレクション」の略称である。有志の活動者(グチコレクター)が、路上や飲食店、大学や行政施設など様々な場所で人々のグチ(愚痴)を無料で聴き、集め、それらを社会に共有していく活動である。現在、京都・大阪・東京での活動の他、各種イベントでグチコレしています。 「活動実績」

 

メールアドレス:r.guchicollection@gmail.com

Facebookページ https://www.facebook.com/guchicollection?ref=ts&fref=ts

 

 

<関連記事>

愚痴は自分と向き合う面があるー龍谷大学実践真宗学研究科の木本さんにインタビュー

お坊さんとして大切なことを教えてくれるー龍谷大学大学院生の木本さんにインタビュー

気軽に愚痴を言える社会をつくっていきたいー龍谷大学大学院生の木本さんにインタビュー

●グチコレ「グチを聴くコツ〜できることとできないこと〜」

 

 

 

 

   

Author

 

他力本願ネット

人生100年時代の仏教ウェブメディア

「他力本願ネット」は浄土真宗本願寺派(西本願寺)が運営するウェブメティアです。 私たちの生活の悩みや関心と仏教の知恵の接点となり、豊かな生き方のヒントが見つかる場所を目指しています。

≫もっと詳しく

≫トップページへ

≫公式Facebook

掲載日: 2019.01.15

アーカイブ