あえて他人と「死」について語り合うワケ│「デスカフェ~死をめぐる対話~」インタビュー
新型コロナウイルスが猛威を振るい、出口の見えない自粛生活を強いられる昨今。
自分と向き合う時間が増えた分、孤独感を深めて自死に至るケースすらあります。
いのちを守るための自粛が、かえっていのちを脅かすこともあるのです。
独りで考え込むのではなく、人とのつながりや対話によって見えてくるものもあるのではないでしょうか。
横浜の海を一望できる一室やカフェで開催されている「デスカフェ~死をめぐる対話~」。
ナッツをつまみながら、「死」について明るく語り合う場です。
なぜあえて、死にフォーカスした対話の場を設けているのでしょうか?
今回は、代表の田中 肇(たなか はじめ)さんにお話を伺いました。
ーー「デスカフェ~死をめぐる対話~」を始めたきっかけを教えてください。
田中 肇さん(以下:田中):私は普段、図書館司書をしており、読書会や対話による交流の場を設けています。好きな本を紹介することでもう一度感動することができますし、何より人が出会う場、何かを創る場にしたいからです。そこから派生して、一昨年の秋から「デスカフェ・死をめぐる対話」を開催しています。女優の樹木希林さんが全身ガンを公表し、亡くなられたことがとても印象に残り、死をテーマとしたカフェを開きたいと思ったんです。
ーー「対話」とはどういうものですか?
田中:「対話」とは、自分の考えをきちんと言って、相手の考えをきちんと聞き、それらをすりあわせて自分の中で気づきを得ていくことです。相手の意見を否定するのではなく、かといってまるごと受け入れるのでもなく、なぜそう思うのかを大切にし、自分が絶対ではないということに気付いていくのです。「会話」と異なるのは、テーマがあることと、進行役がいることです。対話のテーマを「死」とする場合はデスカフェになります。死は誰も経験していないことなので答えのない問題です。想像をしながら、違う意見の他者との対話を通じて、自分の意見を捨てたり拾ったりの繰り返しです。結論は出ませんし、司会がまとめるようなこともしません。
ーー「デスカフェ・死をめぐる対話」の流れを教えてください。
田中:普段は9時半から12時に開催しています。まずは自己紹介と、アイスブレイクを行います。アイスブレイクでは、たとえば「葬儀でどんな花を供えたいですか?」といったことをお互いに聞き合っています。
続けて、参加者おのおのが持参した死をイメージした本を紹介し、今日の議題としたいテーマを紙に書いて前に張り出し、各々がプレゼンをします。その後、最も挙手が多かったテーマが議題となります。先日は「死はいつまで続くのか?」というテーマが選ばれました。
<カフェでのデスカフェ>
ーー運営上、気を付けていることや大事にしていることはありますか?
田中:大前提として、安心・安全な場を保証しないと、これを話すとまずいのではと心配されてしまうので、話の内容は公表しないことをお約束いただいています。そして、人の話は最後まで聞くこと、自分の考えを押し付けないことをお願いしています。
ときおり意見が対立し、お互いが譲らずヒートアップするときもありますから……。そんなときは司会の私が、このままでは平行線ですよね、とそっと引き取ります。そして、ひとつの方向に流れるのではなく、こういう視点もあるのでは、と促しています。
対話は日常のあたりまえを疑うことです。みんながあたりまえだと思っているものは何かが抜け落ちている場合があるので、考えることで気づきを得てほしいと思います。
また気づきを促進する方法として、「池に小石を投げ込み、さざ波を起こす」、そんなことを意識して進行しています。
そして対話だけで場を閉じることなく、アフターランチで交流をさらに深めています。
あとはユニバーサルな会場でどなたでも参加しやすい場創りですね。
<デスカフェ後のアフターランチ>
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